34 / 35
34.再出発
しおりを挟む
オティーリエ様がフェディリア王国の王弟殿下の、第四妃になる決心をなさった。
私はもしかして、犠牲心から申し出られたのではないかと、不安だった。
私はオティーリエ様に真意をお伺いしたかった。オティーリエ様の様子を見たいし、気持ちを知りたいのだ。
本当にフェディリア王国の王弟殿下の第四妃になりたいと思っているのだろうか。
銀星宮のオティーリエ王女の居間に通される。
オティーリエ様の部屋は今は、煌びやかな贈り物で埋まっていた。
「ご機嫌いかがでございますか?オティーリエ様」
「素敵な気分ですわ。本当よ」
オティーリエ様は本当に上機嫌だ。
「見て。この贈り物の山を。贈り物などなくとも、今までと比べ物にならないくらい幸せなのです」
フェディリア王国の王弟殿下は、オティーリエ様に豪華な贈り物を数多く贈っている。
「わたくし、知っているのです」
オティーリエ様が少し悲し気に言う。
「ドレスも花束も、なにもかもあなたが選んで用意したことを。バシュロ様からは何一つ贈られていないことを。ああ、違ったわ」
小さく笑って文机の上を見る。
「この役に立たないペーパーナイフだけは、バシュロ様が作らせたのよね。侍女から聞きました」
オティーリエ様の瞳が暗くなる。
「この国では、"切るもの"を贈ることは『関係を切りたい』って意味なんですってね。それがバシュロ様の本意だったのを気づかなかった、愚かなわたくし」
オティーリエ様は声を出して笑う。
「ばかよね。わたくしは本当にばかな小娘だったわ」
「オティーリエ様…」
オティーリエ様は変わった。
世間知らずの少女の姿から抜け出して、大人の女性の姿から聡明さが見える。
「わたくしは知りたかったのです。あなたが心から、フェディリア王国の王弟殿下の第四妃になることを了承したのかと」
「心から望んでいるわ」
そして慌てるように付け加えた。
「ああ、待って。可哀想だと思わないで」
その笑顔は明るかった。
「わたくしを求めるフェディリア王国の王弟殿下を好ましいと思うのです。あちらにはすでに三人の妃がいるけれど…」
ツンと顎をあげる。
「わたくし、誰よりも時めいて、第一の人になって見せますわ」
そして真顔になる。
「今ではあなたに感謝しています。あなたのおかげでそばかすは消えたし、インジャル語だけではなくフェディリア語も話せるようになりました」
いたずらっぽく笑って言う。
「絶対に寵愛を独り占めしてみせますわ。三人の妃なんて、最愛の側妃がすでにいたことより容易いですもの」
その目にも声にも、悲壮感はない。
「最後にひとつだけお願いがあるの」
「はい、なんでございましょう?」
「わたくしが出立する時…」
「はい」
「ここでいただいたものを全部持って行きたいのです。図々しいお願いとは承知していますが、馬車を連ねて、派手派手しくフェディリア王国に行きたいのです」
私はインジャルにやってきた時の、オティーリエ様の様子を思い出した。
たった三台の馬車、自国の警備はいなかった。
「もちろんでございます。インジャル王国の誇りにかけて、ご用意させていただきます」
「ありがとう」
「どうかお幸せになってください。心より願っております」
オティーリエ様は笑った。
「ありがとう。わたくし、きっと第一の寵妃になってみせますわ」
私は涙ぐんだ。
「寂しくなります」
「ああ、わたくしもです。ベルナデット様と離れることが寂しい」
私達は抱き合って、慰め合った。
「もし何かあったら、帰っていらしてね。あなたはこの国の女伯爵でもあるのですから」
「ありがとう。でもきっと帰るようなことにはならないわ。わたくし、幸せになってみせます」
私はそれに加えて、さらに様々な新しい支度品を調えた。
「インジャル王国の面子がかかっているのです。ここでフェディリア王国に差を見せつけるためにも必要な物です」
私は渋るバシュロ様を説き伏せた。
クンラート王弟殿下は、フェディリア王国に早馬を送り、オティーリエ様が輿入れする旨を伝え、婚儀の準備をするように指示なさった。
「私はあなたをお迎えするために、もう準備をしていたのです。あなたに不自由な思いはさせません」
クンラート王弟殿下はオティーリエ様に約束した。
クンラート王弟殿下は私達に心からの礼をおっしゃった。
「カテーナ王国があった頃は、叶わない夢でしたが、ようやく迎えることができました。なんと感謝を述べて言いかわかりません」
私はクンラート王弟殿下にお願いした。
「どうかオティーリエ様を…」
お願いは言葉にならず、涙が溢れた。
「ご心配にはおよびません。幸せにすることをお約束致します」
私はその言葉を信じた。
たった三台の馬車で、自国の護衛もなく嫁いで来たオティーリエ様は、三十台の馬車を連ね一個中隊総勢三百人に守られてフェディリア王国入りして行った。
私はもしかして、犠牲心から申し出られたのではないかと、不安だった。
私はオティーリエ様に真意をお伺いしたかった。オティーリエ様の様子を見たいし、気持ちを知りたいのだ。
本当にフェディリア王国の王弟殿下の第四妃になりたいと思っているのだろうか。
銀星宮のオティーリエ王女の居間に通される。
オティーリエ様の部屋は今は、煌びやかな贈り物で埋まっていた。
「ご機嫌いかがでございますか?オティーリエ様」
「素敵な気分ですわ。本当よ」
オティーリエ様は本当に上機嫌だ。
「見て。この贈り物の山を。贈り物などなくとも、今までと比べ物にならないくらい幸せなのです」
フェディリア王国の王弟殿下は、オティーリエ様に豪華な贈り物を数多く贈っている。
「わたくし、知っているのです」
オティーリエ様が少し悲し気に言う。
「ドレスも花束も、なにもかもあなたが選んで用意したことを。バシュロ様からは何一つ贈られていないことを。ああ、違ったわ」
小さく笑って文机の上を見る。
「この役に立たないペーパーナイフだけは、バシュロ様が作らせたのよね。侍女から聞きました」
オティーリエ様の瞳が暗くなる。
「この国では、"切るもの"を贈ることは『関係を切りたい』って意味なんですってね。それがバシュロ様の本意だったのを気づかなかった、愚かなわたくし」
オティーリエ様は声を出して笑う。
「ばかよね。わたくしは本当にばかな小娘だったわ」
「オティーリエ様…」
オティーリエ様は変わった。
世間知らずの少女の姿から抜け出して、大人の女性の姿から聡明さが見える。
「わたくしは知りたかったのです。あなたが心から、フェディリア王国の王弟殿下の第四妃になることを了承したのかと」
「心から望んでいるわ」
そして慌てるように付け加えた。
「ああ、待って。可哀想だと思わないで」
その笑顔は明るかった。
「わたくしを求めるフェディリア王国の王弟殿下を好ましいと思うのです。あちらにはすでに三人の妃がいるけれど…」
ツンと顎をあげる。
「わたくし、誰よりも時めいて、第一の人になって見せますわ」
そして真顔になる。
「今ではあなたに感謝しています。あなたのおかげでそばかすは消えたし、インジャル語だけではなくフェディリア語も話せるようになりました」
いたずらっぽく笑って言う。
「絶対に寵愛を独り占めしてみせますわ。三人の妃なんて、最愛の側妃がすでにいたことより容易いですもの」
その目にも声にも、悲壮感はない。
「最後にひとつだけお願いがあるの」
「はい、なんでございましょう?」
「わたくしが出立する時…」
「はい」
「ここでいただいたものを全部持って行きたいのです。図々しいお願いとは承知していますが、馬車を連ねて、派手派手しくフェディリア王国に行きたいのです」
私はインジャルにやってきた時の、オティーリエ様の様子を思い出した。
たった三台の馬車、自国の警備はいなかった。
「もちろんでございます。インジャル王国の誇りにかけて、ご用意させていただきます」
「ありがとう」
「どうかお幸せになってください。心より願っております」
オティーリエ様は笑った。
「ありがとう。わたくし、きっと第一の寵妃になってみせますわ」
私は涙ぐんだ。
「寂しくなります」
「ああ、わたくしもです。ベルナデット様と離れることが寂しい」
私達は抱き合って、慰め合った。
「もし何かあったら、帰っていらしてね。あなたはこの国の女伯爵でもあるのですから」
「ありがとう。でもきっと帰るようなことにはならないわ。わたくし、幸せになってみせます」
私はそれに加えて、さらに様々な新しい支度品を調えた。
「インジャル王国の面子がかかっているのです。ここでフェディリア王国に差を見せつけるためにも必要な物です」
私は渋るバシュロ様を説き伏せた。
クンラート王弟殿下は、フェディリア王国に早馬を送り、オティーリエ様が輿入れする旨を伝え、婚儀の準備をするように指示なさった。
「私はあなたをお迎えするために、もう準備をしていたのです。あなたに不自由な思いはさせません」
クンラート王弟殿下はオティーリエ様に約束した。
クンラート王弟殿下は私達に心からの礼をおっしゃった。
「カテーナ王国があった頃は、叶わない夢でしたが、ようやく迎えることができました。なんと感謝を述べて言いかわかりません」
私はクンラート王弟殿下にお願いした。
「どうかオティーリエ様を…」
お願いは言葉にならず、涙が溢れた。
「ご心配にはおよびません。幸せにすることをお約束致します」
私はその言葉を信じた。
たった三台の馬車で、自国の護衛もなく嫁いで来たオティーリエ様は、三十台の馬車を連ね一個中隊総勢三百人に守られてフェディリア王国入りして行った。
2,673
あなたにおすすめの小説
婚姻無効になったので新しい人生始めます
Na20
恋愛
旧題:婚姻無効になったので新しい人生始めます~前世の記憶を思い出して家を出たら、愛も仕事も手に入れて幸せになりました~
セレーナは嫁いで三年が経ってもいまだに旦那様と使用人達に受け入れられないでいた。
そんな時頭をぶつけたことで前世の記憶を思い出し、家を出ていくことを決意する。
「…そうだ、この結婚はなかったことにしよう」
2025年10月24日(金)
レジーナブックス様より発売決定!
初めから離婚ありきの結婚ですよ
ひとみん
恋愛
シュルファ国の王女でもあった、私ベアトリス・シュルファが、ほぼ脅迫同然でアルンゼン国王に嫁いできたのが、半年前。
嫁いできたは良いが、宰相を筆頭に嫌がらせされるものの、やられっぱなしではないのが、私。
ようやく入手した離縁届を手に、反撃を開始するわよ!
ご都合主義のザル設定ですが、どうぞ寛大なお心でお読み下さいマセ。
王宮地味女官、只者じゃねぇ
宵森みなと
恋愛
地味で目立たず、ただ真面目に働く王宮の女官・エミリア。
しかし彼女の正体は――剣術・魔法・語学すべてに長けた首席卒業の才女にして、実はとんでもない美貌と魔性を秘めた、“自覚なしギャップ系”最強女官だった!?
王女付き女官に任命されたその日から、運命が少しずつ動き出す。
訛りだらけのマーレン語で王女に爆笑を起こし、夜会では仮面を外した瞬間、貴族たちを騒然とさせ――
さらには北方マーレン国から訪れた黒髪の第二王子をも、一瞬で虜にしてしまう。
「おら、案内させてもらいますけんの」
その一言が、国を揺らすとは、誰が想像しただろうか。
王女リリアは言う。「エミリアがいなければ、私は生きていけぬ」
副長カイルは焦る。「このまま、他国に連れて行かれてたまるか」
ジークは葛藤する。「自分だけを見てほしいのに、届かない」
そしてレオンハルト王子は心を決める。「妻に望むなら、彼女以外はいない」
けれど――当の本人は今日も地味眼鏡で事務作業中。
王族たちの心を翻弄するのは、無自覚最強の“訛り女官”。
訛って笑いを取り、仮面で魅了し、剣で守る――
これは、彼女の“本当の顔”が王宮を変えていく、壮麗な恋と成長の物語。
★この物語は、「枯れ専モブ令嬢」の5年前のお話です。クラリスが活躍する前で、少し若いイザークとライナルトがちょっと出ます。
乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!
ユウ
恋愛
平凡な伯爵令嬢のリネットは優しい婚約者と妹と穏やかで幸福な日々を送っていた。
相手は公爵家の嫡男であり第一王子殿下の側近で覚えもめでたく社交界の憧れの漆黒の騎士と呼ばれる貴族令息だった。
結婚式前夜、婚約者の妹に会いに学園に向かったが、そこで事件が起きる。
現在学園で騒動を起こしている第二王子とその友人達に勘違いから暴行を受け階段から落ちてしまう…
その時に前世の記憶を取り戻すのだった…
「悪役令嬢の兄の婚約者って…」
なんとも微妙なポジション。
しかも結婚前夜で傷物になる失態を犯してしまったリネットは婚約解消を望むのだが、悪役令嬢の義妹が王子に婚約破棄を突きつける事件に発展してしまう。
妃殿下、私の婚約者から手を引いてくれませんか?
ハートリオ
恋愛
茶髪茶目のポッチャリ令嬢ロサ。
イケメン達を翻弄するも無自覚。
ロサには人に言えない、言いたくない秘密があってイケメンどころではないのだ。
そんなロサ、長年の婚約者が婚約を解消しようとしているらしいと聞かされ…
剣、馬車、ドレスのヨーロッパ風異世界です。
御脱字、申し訳ございません。
1話が長めだと思われるかもしれませんが会話が多いので読みやすいのではないかと思います。
楽しんでいただけたら嬉しいです。
よろしくお願いいたします。
愛のない結婚をした継母に転生したようなので、天使のような息子を溺愛します
美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
目が覚めると私は昔読んでいた本の中の登場人物、公爵家の後妻となった元王女ビオラに転生していた。
人嫌いの公爵は、王家によって組まれた前妻もビオラのことも毛嫌いしており、何をするのも全て別。二人の結婚には愛情の欠片もなく、ビオラは使用人たちにすら相手にされぬ生活を送っていた。
それでもめげずにこの家にしがみついていたのは、ビオラが公爵のことが本当に好きだったから。しかしその想いは報われることなどなく彼女は消え、私がこの体に入ってしまったらしい。
嫌われ者のビオラに転生し、この先どうしようかと考えあぐねていると、この物語の主人公であるルカが声をかけてきた。物語の中で悲惨な幼少期を過ごし、闇落ち予定のルカは純粋なまなざしで自分を見ている。天使のような可愛らしさと優しさに、気づけば彼を救って本物の家族になりたいと考える様に。
二人一緒ならばもう孤独ではないと、私はルカとの絆を深めていく。
するといつしか私を取り巻く周りの人々の目も、変わり始めるのだったーー
若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!
古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。
そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は?
*カクヨム様で先行掲載しております
【完結】「政略結婚ですのでお構いなく!」
仙桜可律
恋愛
文官の妹が王子に見初められたことで、派閥間の勢力図が変わった。
「で、政略結婚って言われましてもお父様……」
優秀な兄と妹に挟まれて、何事もほどほどにこなしてきたミランダ。代々優秀な文官を輩出してきたシューゼル伯爵家は良縁に恵まれるそうだ。
適齢期になったら適当に釣り合う方と適当にお付き合いをして適当な時期に結婚したいと思っていた。
それなのに代々武官の家柄で有名なリッキー家と結婚だなんて。
のんびりに見えて豪胆な令嬢と
体力系にしか自信がないワンコ令息
24.4.87 本編完結
以降不定期で番外編予定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる