隠れ御曹司は、最強女子を溺愛したい

藤永ゆいか

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第2章

彼女宣言①

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翌日から、私と彗くんの秘密の契約が始まった。彼いわく「ボディーガード兼カノジョ」としての日々だ。

朝、学校近くの指定された場所へ向かう。そこには、昨日乗ったのと同じ、黒塗りの高級車が停まっていた。

「おはよう、羽生さん」

後部座席の扉が開き、宇山くんが姿を現す。

「おはよう、宇山くん」
「今日からよろしく」

宇山くんの言葉に、私は改めて身が引き締まるのを感じた。


宇山くんは毎朝、見上さんに人通りの少ない場所に車を停めてもらい、そこから15分ほど歩いて登校しているらしい。
その間、私は彼のボディーガードとして同行することになった。

お金持ちの家の生徒はみんな、車通学なのに。わざわざ歩いて通学するなんて、三池財閥の御曹司ということを隠すためとはいえ、徹底してるなあ。

宇山くんとたわいもない話をしながら、二人並んでしばらく歩いていたそのとき。

「!」

不意に背後から、耳をつんざくようなエンジンの音が聞こえた。

後ろを振り返ると、バイクがものすごい勢いでこちらへ迫ってきている。

私はとっさに、車道側を歩いていた宇山くんの腰に素早く手をまわし、彼をぐっと引き寄せて自分の体で庇った。

──ブォォン!

間一髪、宇山くんの脇をバイクが風のように走り抜けていく。

「ふぅ……危ない、危ない」

思わず、安堵の息を吐いた。

「おー、すごい。何か、さっそくボディーガードっぽいね?」

からかうような宇山くんの声が聞こえて、ハッとする。

バイクから守るためとはいえ、彼をいきなり抱き寄せるなんて……!

急に恥ずかしくなった私は、宇山くんの腰にまわしていた手を慌てて離した。

「あっ、危ないから。宇山くんはこっち!」

そう言って私は、車道側へと移動した。

「ちょっと、何やってるんだよ」

そっと腰に回された手に、心臓がドキッと音を立てる。

「羽生さんは女の子なんだから。フツーは、俺がこっちだろ?」

宇山くんはさりげなく、私を歩道側に誘導した。

女の子……やばい。初めて男の子に、女の子扱いされたかもしれない。

「でも、これじゃあ私がいる意味なくない?」
「そんなことない。昨日までは一人で通学してたから。羽生さんが隣にいてくれるだけで楽しいし」
「あ、ありがとう。宇山くん……」

ついお礼を言ってしまったけど。こういうときって、どんな反応をすれば良いの?

「ねぇ。その“宇山くん”って呼び方、やめにしない?」
「え?」

「昨日から俺と君は、偽りでも恋人同士なんだから。お互いのことは、名前で呼び合おう」
「宇山くんを、名前で呼ぶ……。なんだか、すごく照れるな」

そう呟くと、宇山くんは楽しそうに笑って、私を促すように言った。

「それじゃあ、練習。呼んでみて?」
「ええっ!? れ、練習って、そんなことする必要あるの!?」

私の動揺を見て、彼はますます愉快そうに口角を上げた。

「いいから。早く」

宇山くんの少し強引な雰囲気に、私は観念して消え入りそうな声で絞り出した。

「す、彗……くん」
「うん。俺はこれから、菜乃花って呼ぶから」

彗くんは満足そうに微笑んだ。その言葉と、呼び捨てにされた私の名前に、私の心臓はドクン、と大きく跳ねた。

うわ~っ! 彗くん、今サラッと私のこと『菜乃花』って呼んだけど!?

今まで男の子の友達すらいなかった私にとって、この衝撃は凄まじかった。

しかも、いきなり呼び捨てなんて……! 男の子に名前を呼び捨てにされたのは、生まれて初めての経験だ。

私の頬は、きっと真っ赤になっているに違いない。

そんなことを思いながら、ボディーガードとして周囲に目を光らせながら歩いていると。

「彗ーっ!」

校門を抜けたところで、誰かが彗くんの名前を呼んだ。
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