王太子殿下から婚約破棄されたのは冷たい私のせいですか?

ねーさん

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 カフェを出たホリーは、噴水のある広場のベンチに座る。
 
 グレッグ様、私の縁談…知ったら止めようとしてくれるんじゃないかって少し期待してたんだけどな。

 ホリーは俯いてため息を吐く。
「はあ…ついでだから家に帰って来ようかしら」
 ロビンソン伯爵家は広場から徒歩で三十分だ。近くはないが散歩だと思えばちょうど良い。
 先程グレッグに頼まれたジーンの件を父に話せるし、ついでに縁談相手の事をもう少し詳しく聞いておこう。
 そう思ってベンチを立った時
「ホリー」
 と呼ぶ声が聞こえた。
「グレッグ様?」
 グレッグが駆けて来て、ホリーの前で止まる。
「ホリー、あの、俺…言うだけ言っておきたくて…その、多分迷惑だと思うけど…」
 言いにくそうなグレッグの言葉をホリーが遮る。
「グレッグ様」
「…」
「あのですね。ご存知の通り、私は長女なのでお婿さんを迎えなきゃならないんです」
「…ああ。そうだね」
 言われるだけでも迷惑なのか、と思い、グレッグは俯く。
「ですが」
 ホリーの言葉にグレッグが顔を上げ、ホリーを見る。
「妹がいるんです。私には。まだ11歳ですが」
「…」
「だから、私が嫁ぐのだって…不可能じゃないんですよ?」
 ホリーは上目遣いにグレッグを見る。グレッグは目を瞬かせた。
「ホリー…」
「はい」
「好きです」
「私もです」
 グレッグの目には涙が浮かんでいる。
「…普通、こういう時に泣くの、私の方じゃないですか?」
 ホリーは笑いながらハンカチを差し出した。

-----

「ホリーと姉妹になれるなんて…」
「アリシア、まだロビンソン伯爵はホリーさんの婚姻には反対してるんだろう?」
「そうだけど、ホリーも『家を継ぐ予定の娘が急に嫁ぐ事になるのが淋しいだけだ』って言ってたし」
 アリシアはジーンと繋いだ手を勢いよく振る。
「俺の養子の件はすごく早く承諾の返事いただけたのにな」
 アリシアとジーンは並んで街を歩いていた。
「しかも私の卒業パーティーにジーンが堂々とエスコートできるよう、早く結婚許可を申請しようって言っていただいて。有難いわね」
 ウィルフィス公爵家からロビンソン伯爵家へ、ジーンを養子にし、アリシアとの結婚許可を貰う事と、グレッグとホリーの婚姻を申し入れたのは、今から三ヵ月前だ。
 ジーンの養子の件は快諾の返事がすぐに来たが、グレッグとホリーの婚姻の件の返事はまだない。ホリーによると「お父様は子供みたいにごねている」そうだ。
 ちなみにホリーの母は「恋愛結婚って憧れてたのよね~ホリー頑張ってね」と応援してくれているそうだ。
 今日はジーンとの養子縁組が整ったとの事で、ジーンとアリシアの二人でロビンソン伯爵家へ挨拶へ行くのだ。二人は伯爵家に近い街角で馬車を降りて散歩がてら歩いていた。
「ジーン、今ホリーのお兄さんなのね」
「そうだな。ジーン・ロビンソンだな」
「ホリーのお兄さんがジーンで、ジーンと結婚したら私はホリーのお姉さんになって…でもホリーとお兄様が結婚したら、ホリーは私のお姉さんになって…こういう場合どちらが姉でどちらが妹かしら?」
「そうだな、俺とグレッグもどちらが兄かな?」
「何か不思議な感じね。ねえ、ネイハムは反対しなかったの?このまま結婚して、もうジーン・フロストには戻らないのに」
「まあフロスト家は継がないといけない家業がある訳じゃないしな。父には何より『使用人がお嬢様に手を出すとは何事か!』と、ものすごく怒られた。今はまあお前の思うようにしたら良いって言ってくれたけど」
「手を…」
「現実にはまだ手はだしてないけどな」
 アリシアは繋いでない方の手でジーンの腕を叩く。
「もう!」
 ジーンは、頬がほんのり赤くなっているアリシアの、自分と繋いだ手を引き寄せて甲に口付ける。
「なっ」
「アリシア、お姫様になりたかったのに…ごめんな」
「…何でジーンが謝るの?私がなりたくないって言ったのに」
「そうだな。後からやっぱりお姫様になりたかったと言っても、もう離してやれないから?」
「…私はお姫様になるよりジーンのお嫁さんになれる方が嬉しいんだけど」
 アリシアはジーンの胸元に額を付ける。ジーンは繋いでない方の手をアリシアの背中へ回し、緩く抱き締めた。

 だから離さないでね。

 アリシアは心の中でそっと呟いた。


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