最愛の番になる話

屑籠

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 啓生に付き合ってパーティーに出席することが増えた。
 四方の本邸に居るのも悪くないけど、知らない世界を知れるのは少し楽しかった。
 だから、油断していたんだと思う。

「咲也? 咲也だ!」
 
 それは、少し啓生が席を外していた時の事だった。
 尚志と会ったこの間も、啓生が居ないときだったけれど。

「光也……」
「咲也! どこに行ってたの? 僕も母さんも心配していたんだよ?」

 同じような顔で、それでもオメガらしい光也。
 その顔が花開くように笑顔になった。
 近づいてくる光也に対し、俺は同じだけ距離を取る。
 気が付いた光也は悲しそうに顔をゆがめた。

「咲也、お家に帰ろう? 母さんも待ってる」
「お、俺は……」
「大丈夫、お父様には怒らないように僕から言ってあげるからね」

 父が、俺に怒ることなんて無い。
 俺に、そんな興味が無いから。生きていようが死んでいようが、坂牧の名を汚すようなことをしなければ、どうでもいいんだ、俺なんて父にとっては。

「俺は! 俺は、坂牧咲也じゃない。だから、帰らない」
「何を言っているの?」
「そのままの意味、だ……俺はもう行く」

 あ、咲也! と声をかけられるが、それから逃げるように立ち去ろうとする。
 けれど、それは叶わなかった。

「咲也か」
「っ、……」

 声も、出なかった。
 
「あ、お父様!」

 そう言って駆け寄っていくのは、血縁上の父親。
 咲也か、そう言った声に感情など乗せられていない。
 ただただ、面倒くさそうな態度なだけ。
 どうしてこう、出会いたくない人にばかり会うのだろう。
 
「俺は……くそっ」

 そう言って、父親と光也から距離を取る。
 だが、距離を取ろうとした俺の腕を掴もうと光也が動いてきた。

「ねぇ、何をしているの?」

 そんな光也から守るように俺を捉えた腕。
 それが誰のものかなんて、確認しなくたってわかる。

「啓生さん」
「んふっ、かわいい。もう僕の名前を呼ぶだけでも可愛い」
「やめて」

 啓生はひと目も憚らず抱きしめてきて、その抱擁から逃れようとしても逃げ出せなかった。

「それでこの人たちは?」
「……知らない人」
「そう? じゃあ、いいか。行こうね」

 ハッとした光也が俺の手を掴みかける。
 その手前で、光也の手が啓生によって阻まれた。

「ねぇ、なんのマネ?」

 それはそれは冷たい声。
 自分の内側まで凍えてしまいそうなほど、冷たい。
 そのせいで、光也は震えて声も出せないようだ。

「僕の番に、なんのマネって聞いてるんだけど」
「番? おかしな事を言う。咲也はベータだ。アルファでもオメガでもない」

 さすがアルファと言うべきか、それとも父は俺の事なんてどうでもいいと思っているのか。
 けれど、啓生の嘲笑は終わらない。

「僕の番だよ。君たちには分からないだろうけど」
「さ、咲也はベータだもん! 咲也にフェロモンの匂いがしたっていうなら、きっと僕の、そう! 僕と、間違えてるんじゃ……」

 そうして頬を染める光也に、うわぁと眉間にシワを寄せてしまった。
 ぎゅっと啓生の腕を力を込めて握りしめると、その手を大丈夫だというように撫でられる。
 
「君は、番の匂いも分からない僕の嗅覚が狂ってるって、馬鹿だって言いたいの?」
「ち、ちがっ! だって、僕はオメガで、咲也はベータだから」
「だから? ベータがアルファにもオメガにもなり得る存在だって言うのは知っているでしょ? それが身近で起こったことが信じられない?」

 それとも、と言ったところで、俺の両耳は啓生に塞がれた。
 俺に聞かせたくない言葉なのか。動揺して、必死な様子の光也とそれを止めている父。
 だけれど、あまりその言葉は届いてこない。

『それとも、見下していたベータの弟が僕の番になったことがそんなに受け入れられない?』
『なっ、ち、ちがう!! 僕は、僕はただ咲也のために』
『へぇ? 咲ちゃんのため、ね? 自分のためじゃないの?』
『やめなさい、光也』
『だって!』

 違う違う、と信じられないようなものを見る目で、怯えたような目で啓生を見ている。
 そして、やっぱり俺に手を伸ばしてきた。その手はやはり啓生に叩き落される。

「咲ちゃんに触らないでってば」
「どうして……」
「自分の思い通りにならないとオカシイみたいな頭してるの?」

 どうなってるの? と本気で啓生は不思議そうな顔をしていた。
 ここで、自分が口を挟んでいいものか悩む。
 
「……光也は、オメガだから」
「うん? それ、何か関係あるの? 家の家族の半分はオメガだけど、頭綿あめでも詰まってるんじゃないかって人は居ないけど」

 四方の家にいる人は、雪藤の人を除いて番しか居ない。番ということは、みんなオメガということ。
 確かに、啓生の家族の半分はオメガだと納得する。そして、確かに光也みたいに自分が中心なんて思ってる人は誰も居ない。みんな、仲良く暮らしている。まあ、そもそも余り会わないけれど。

「でも、坂牧の家はそうだったから」
「そっか。でも今は違うもんね?」

 そう、だなと頷く。

「そう、今は違う。だから、」
「……咲也」

 父に名前を呼ばれて、ビクッと震える。
 そんな俺を抱きしめている啓生には当然のごとく、震えが伝わった。

「なん、ですか」
「帰って来なさい。アレが心配している」

 父は、母のことを大切にしていると思っていた。けれど、そう言えば母のことを名前で呼ぶことが極端に少ないように思える。
 どうしてなのか、分からない。そんな父を、母は愛しい人を見る目で見ているから、母からの感情はあるのだろうけれど。
 
「……俺は、帰るつもりはありません。それに、先ほども言いましたが俺は坂牧ではないので」

 眉間に皺を寄せる父だが、小さくため息を吐くと無理強いもするつもりがなかったのか、そもそも俺に興味がないのか、そうかと言って取り乱した光也を連れて行ってしまった。
 その後ろ姿を見て、ほっと息を吐く。
 
「うーん、ビミョー」
「何の話?」
「あ、いやこっちの話。それより、僕らもそろそろ帰ろうか。疲れたでしょ?」

 そう言って、啓生に手を引かれた。
 啓生は、何をしたいのだろうか? 俺に、理解できないだけなのか?
 こうして、パーティーに連れ出してくれるのは気分転換になって楽しいけれど、本当はただ買い物をするだけに出かけるとかそんな形でもいいんだ、ただただ出かけて一緒にいられれば。
 それを、言うことはないだろうけれど。必死に、俺を守ろうとしているんだろうから。

 それから、パーティーには度々呼ばれるが、兄以外の家族を見ることはなかった。
 それだけ考えれば、平和だと言えるが、そうとも言えない。
 四方の檻の中の空気が、目に見えて悪い。
 あまり交流がないけれど、他の奥方に何か会ったのかもしれない。
 そんな風に考えていた。

「どうして、どうして私じゃないの!? 本当なら、私が!」
「こらっ、滅多なことを言うんじゃないよ! 全く、誰がそんなことを言ったのかしら? 奥様にでも聞かれたら、あなたここには居られなくなるわよ」
「でも!」
「いいから仕事をなさい。ここに勤めていたいのであれば」

 そんな言葉が、扉の外から聞こえてくる。どれだけ大声で叫んでいるのやら。
 ここでも、使用人の態度は同じなのか、と少し残念に思う。
 坂牧でも、俺は底辺の存在で、雑に扱って良くて、使用人たちも必要以上に関わることもなかった。
 もちろん、俺と使用人の立場が違うことも理解してるけど、啓生には雪藤がいるのに俺のそばには誰も居なくて、少しさみしい。
 友達と呼べる存在も居ない。誰かと話すこともない。
 少し退屈で、それでいて平和な日々。
 環境に慣れて、贅沢になってしまっているのか分からない。

「俺に、専属?」
「うん。咲ちゃんが普段一人じゃ寂しいでしょ? だから、雪藤の中から厳選したんだ、そーじろーが」
「宗治郎さんが」

 啓生はどれだけ宗治郎を信頼しているのだろうと、少し眉間にシワが寄った。
 はぁ、とため息を吐いた宗治郎は入ってきなさい、と人を呼んだ。
 中に入ってきたのは、宗次郎と同じスーツを着た、赤茶の髪の青年だった。
 どことなく、宗次郎に似ている気がする。

「ご挨拶を」
「はい。はじめまして、咲也様。わたくしは、雪藤 風都(かざと)です。啓生様の奥方にお使えできることを光栄に思います」
「奥方……」

 奥方と呼ばれるのは、少し戸惑う。番としても慣れないことばかりだ。
 けれど、啓生の番となったからには、奥方と呼ばれても致し方ないのかもしれない。

「えっと、咲也様?」
「あ、うん。よろしくね、その……風都さんって呼べばいいの?」

 ちらり、と啓生の顔を見ながら答える。
 啓生は、ニコニコしているけどその分何処か警戒している気もする。
 逆に、宗治郎はホッとしているけど。
 
「あ、風都と呼び捨てにしてくださって構いませんよ」
「え、でも年上だし」
「えぇ、でも私は従者ですので」
「……んと、やっぱり風都さんって呼ぶ」
「そう、ですか?」
 
 呼び捨ては、少し抵抗がある。スーツに身を包んでいる風都は、やはり年上だろう。
 そして、アルファだ。
 そんな相手を、呼び捨てになんてできない。
 それじゃなくても、アルファと深く関わるなんて家族と、啓生、宗治郎以外無い。
 恐怖、なのかもしれない。宗治郎が信用しているのであれば、大丈夫だろうけど。

「んー、咲ちゃんが気に入らないなら、他の人に」
「え、ちがっ」
「そう? でも僕は嫌なんだよなぁ。アルファなのは安心だけど怖いんだよね」
「もう啓生様は咲也様と番なのですから、理解あるアルファのほうが安心です。それに、風都は四方の血も引く番に激甘な人種ですので、ご安心ください」
「え、それ言うの? 咲也様の前で? ねぇ、ちょっと宗治郎?」

 へ? と俺は風都を見て、それから啓生を見た。

「ん? あぁ、雪藤とは何度か婚姻関係があるからね。つながりが有っても不思議じゃないけど、雪藤に四方の特性が出るのは珍しいんだ」
「宗治郎も同じくね」
「これでも、雪藤の中では優秀な方です。如何様にもご利用ください」
「宗治郎の次にね」

 宗治郎の名前を風都が出すたびに、宗治郎は顔をしかめていく。

「宗治郎さんも、四方の血が濃いんですか?」
「私よりも濃いですよ。まぁ、そんな事は言っても宗治郎と私は従兄弟ですけど」
「ただ、特性が濃く出たと言うだけです。それに、本来なら」

 そこで、風都が宗治郎の口を押さえた。
 不満そうにしている宗治郎だが、何かを言うことはなく、ただため息を吐いた。

「まぁ、僕的には気にいらないんだけど……従者も決まったことだし、咲ちゃんは何がしたい?」
「え?」
「あまり、ここから出したくないんだけど、そろそろここのお掃除も始まる頃だしね」
「掃除? 大掃除か何か?」
「うん、そんなところ。代替わりもあるしね」

 そういうものなのか、と1つ頷く。
 そんな俺をよそ目に、宗治郎に耳打ちする風都。

「随分、聞き分けの良い奥様だね」
「咲也様に関する資料は渡しただろう。環境が、そうさせたんだ」
「それは見たけど、予想以上だった」

 これが守るべき奥様か、と風都は少し感動したように咲也を見ていた。
 それを隣で、胡散臭いものを見るような目で宗治郎は見ていた。

「で、咲ちゃんは外でなにかしたいことはないかなって。別に、無理に考える必要はないんだ。用意するお部屋に居てくれるならそれはそれでいいし」
「あ、あの……何でもいいの?」
「いいよ。番の願いを叶えるのは、アルファの特権で甲斐性だからね」
「じゃあ、学校に行きたい」
「学校? 高校ってこと?」

 うん、と頷く。
 一年の途中で辞めてしまったし、新しい学校には行かなかった。
 別に、同じ学校に行きたいとは思っていない。けれど、このまま中卒で終わるのも、それはなんか違う気がして。
 確かに、啓生の番であれば彼に守られているだけでいいのなら、ただのオメガであったなら、疑問にも思わないのだろう。

「そっか、高校か……少し、時間をもらってもいい?」
「あ、無理ならいいよ。少しだけ、通ってみたかっただけだから」
「無理じゃないけど、少し時間がかかるかな」

 うーん、と考えていそうな顔をしているけど、何を考えているのかは全くわからない。

「風都を連れていける学校を探さないと行けないね」
「学校に、護衛は必要ない気がするけど」
「じゃないと、僕が咲ちゃんを外に出せないから」
「……俺が、オメガだから?」
「僕がアルファだから」
「そう、ですか」
 
 少しだけ、不満そうにした俺を、啓生は可愛い!! と言いながらぎゅうぎゅう抱きしめてくる。
 驚いて、体がはねた。

「あ、あの」
「うんうん、頑張って見つけるから待っててね。もー、かわいい! 可愛すぎて僕、どうにかなっちゃいそう!」
「えぇ……」

 困ったように宗治郎を見ると、宗治郎はその視線に気がついて啓生様、と声を強めた。
 
「啓生様、学生の間はお控えください」
「わかってるよー。ベータからオメガになったばかりの咲ちゃんに無理はさせられないもんね」
「わかっているのならよろしいのですが」

 んふふ、と啓生は笑いながら頬ずりしてくる。
 いや、本当に離して欲しいし、やめて欲しい。
 
「いやぁ、理性と本能は別物だって思い知らされるよ」
「我慢してください」
「わかってるってば、そーじろー。心配性なんだからなぁ、もう」
 
 パッと腕を離した啓生は、そのまま俺の頭を撫でた。

「これぐらいは許してね。僕だって、いっぱいいっぱい我慢してるんだから」
「がまん……、俺も我慢した方がいいのかな」
「え、それはやめて。これ以上我慢されたら困る。誰もいないところに連れてってベッタベタに甘やかすしかなくなるから。あ、でもそれも良いかもしれない」

 真剣に考えだした啓生に、焦ったように宗治郎がやめてください! と叫んだ。
 そんな宗治郎を見て、あっはは、と笑う風都と啓生。
 何とも言えない表情をしているのは、俺だけだった。
 
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