最愛の番になる話

屑籠

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7 啓生

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 出会って、番になった日。
 その日に持っていた物を見て、ただの家出でもないのかなって思った。
 咲也が持っていたのは現金とどこかのカギと着替えだけ。
 その他には何もなくて、どこの誰と証明する身分証のようなものも全部無かった。
 咲也が咲也と名乗ったから、彼の名前だけわかったのはそれだけ。

「ねぇ、そーじろー」
「はい。お調べいたしますね」
「うん、ありがとう。たぶんね、この鍵、咲ちゃんと出会った駅のコインロッカーのカギだと思うんだ」
「なるほど。そちらに何か手がかりがあるかもしれませんね」

 宗治郎が僕の意図を読み取って、咲也の身元を調べてくれる。
 孤児とかなら面倒が無くていいけど、身ぎれいだけど世間知らずの感じは、一般家庭の子じゃなさそうだし。
 千手の下位だと勘違いしてすり寄ってくる家とかもあるから、慎重にしないと。
 とりあえずの間は、本邸から出さないようにして、ゆっくり調べていくとしますかね。
 本邸に咲也を運んだあと、外で使っている家に、宗治郎がロッカーの中身を携えてきた。
 
「高校生なんだね、咲ちゃん。坂牧 咲也、ね」
「千手の坂牧家の三男ですね」
「千手……それに坂牧とか、面倒なお家だよね」
「えぇ、それに咲也様はもともとベータという事で、坂牧の家の中で肩身の狭い思いをしていらしたみたいです」

 この短時間で、宗治郎は坂牧の家について調べて来たらしい。
 と言うか、あの辺りに住んでいるのは坂牧の使用人とその家族。そして、坂牧の血筋の者たち。
 その中での咲也の扱いはとても有名だったらしい。
 
「そっかー、じゃあ連絡するのはやめよう。それに、僕は咲也って名前しか知らないしね」
「えぇ、そう致しましょう」
「じゃあ、雪藤のどこかに空いてるのあったかな?」
「えぇ、うちの養子と致しましょう。それに、番であれば承認なしで婚姻することも可能ですので、やりようは幾らでもございますよ」

 そう微笑む宗治郎はやっぱり四方に仕える雪藤で、頼りになる反面、敵に回すと面倒だなぁと思った。敵になる状況は、まず僕が仕事をサボったりしない限りはありえないけれど。
 暫く、坂牧がどう動くのか様子を探ってみたんだけど、本当に咲也を蔑ろにしていたみたいで、探す行動すら起こしていなかった。
 けれど、もう少し経ってから宗治郎が少し難しい顔をして帰って来たんだ。

「啓生さま、ご報告が1つございます」
「なぁに? 仕事のこと? それとも」
「えぇ、咲也様の事にございます。坂牧の長兄が長い出張から帰ってきて咲也様が行方不明であることに気がつかれました。そして、咲也様を探すために動き出しています」
「なるほどね……長兄、坂牧 尚志。そう言えば、夏に同じ別荘で寝泊まりしていたんだっけ?」

 咲也についてまとめられていた資料に書いてあったのを思い出した。

「彼にとって、咲ちゃんの存在がどう言うものなのか、気になるなぁ。ただ、兄弟としての義務だけなら合わせたくないけど」
「坂牧尚志にとっては、咲也様も大事な弟君だと彼の秘書に告げたことがあるそうです」
「……咲ちゃんは彼に会いたいのかな」
「咲也様に慣れていただき、パーティーで会わせてはいかがでしょう? 坂牧尚志の出席する予定のパーティーならば、容易に調べることも可能です」
「そう、だね。あぁでも僕の希望としては合わせたくないんだけど、咲ちゃんが会いたいって言ったら叶えてあげたいしなぁ」

 アルファの本能で、番の願いは叶えてあげたいし、番が何を望むのかを先回りして考えてしまう。
 
「そーじろー」
「はい。わかっております。咲也様が出席できるようなパーティーを見繕いますね」
「咲ちゃんが拒絶したら、坂牧の家は要らないよね?」
「今更、千手の家を1つ潰したところで、また新たな家が名乗りをあげるだけですからね」
「そうだね。昔からそうだもの。だから、千手の家は百様に入るために、十全や命知らずにも五家に擦り寄ってくるんだもん。勘違いも甚だしいけど」
「千手の家はただの数合わせのようなものですからね。昔であれば、アナログでしたので政の人手と言うものは腐るほど必要でしたが、今はただ名ばかりの集団と言ったところですから」
「それを考えれば、僕らの家の役割は大きく変わっていないのに、千手はとても気楽な立場になったものだよね」

 五家、十全の役割は全く変わっておらず、多少百様のあり方が変わってきた位だろう。
 千手は今、役割のある家の方が少ないだろう。大多数は、ただその血筋を千手だからと誇っているだけに過ぎない。
 そんな雑談をしながら、咲也にパーティーの提案をすると、僕も行っていいのか、と斜め上に驚いていた。
 それだけで、咲也が坂牧の家で受けてきた扱いをうかがい知れるという物だ。
 ベータだから、それだけでアルファの家で阻害される、そんなことがあってはならない。
 まったく、どうしてくれようか、と内心で啓生はにやりと笑っていた。
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