アルファだけど愛されたい

屑籠

文字の大きさ
10 / 13

10

しおりを挟む
 行き場のない、抑制されたフェロモンの抑留。それが、アルファの、自分の本来持っているフェロモンだと気が付くのに、そうそう時間はかからなかった。
 本来、アルファであれば、自分の性が決まる時には知るはずのそれを、変にベータであったために今知ることになるなんて。
 子供のころにかからなかった麻疹に、大人になってからかかると酷くなる、というそんな感じだろうか?

「……って、そんな事を考えている場合じゃないか」
「陸さんっ!」

 どうでもいいことを呟いて目が覚めるなんて……。
 そんなことを思いながら、目に入ってきた緑に顔が自然とほころぶ。

「おはよう、りく」
「緑ですよ、陸さん」
「緑?そっか……俺の聞き間違いかぁ。いい名前だね、俺の番さん」

 はい、とにっこり笑い、俺が手を伸ばせば、手を包み笑い、ふわり、と花の香りが広がる。
 どうにもこうにも、官能を刺激する匂いだ。これが、オメガのフェロモン……。

「ねぇ……俺の、番さん?」
「はい?」
「ちょっと、限界かも……」

 えっ?と少し驚いた顔をした彼の腕を引いて、ベッドへと押し倒す。

「ちょちょちょ、待って待って。私たち居るの忘れてない?」
「……紺野?」
「そうそう、私、わたし」

 いるの忘れているというより、いたとしても知らなかったらどうしようもないだろ。
 というか、ほかに医者のような者たちも数名見える。
 ここは……と辺りを見回して、気が付いた。

「ここ、あんたの病院か……なるほどな……?」

 はぁ、と長い溜息を吐いた俺はベッドから降りる。
 見れば、俺の姿は、病院の患者が着るようなあの着物。

「そんで?」

 胡乱な目で紺野たちを見つめると、苦笑されてしまった。

「とりあえず、そのフェロモンの放出をやめてもらってもいいかな?」
「……俺の?」
「そう、君の。多大な攻撃フェロモンは実に興味深いけれど、私以外がすごくおびえてしまっていてね。これ以上近づけない状態だよ」
「放出をやめるって言ってもな……どうするんだか」

 さっぱり制御ができない。少量からあふれ出すフェロモンを幼い時から感じ取り制御するアルファのフェロモンが今、一気に押し寄せているのだ。
 どうすればいいのかなんて、俺にはわからない。
 この状態も、たぶん二、三日たてば、収まると思うが……どうだかな……。
 それよりも、俺の気持ちが大事だというのであれば、それもまた、二、三日経たないことには収まらないだろう。
 そもそも、俺の番がそこにいるのに、理性を持たせるので精一杯なこの状況だ。
 邪魔者としか思えないから本当に落ち着いてから来てほしいな。

「……二、三日後にしてくれ。それから、ここには誰も入れるな」
「陸さん?」
「もう、理性が持ちそうにないんだよ……頼むから、食わせてくれ」

 腹が減ったわけでもなく、飢えている。
 かの、俺の番に。
 そもそも、自分の番に会えば、発情期でもないのに発情するのは当たり前だ。それを教えたのは、紺野のはずなのに。

「わかった。食料だけ、期を見計らって差し入れするよ」

 ハイ撤収、とあきれたような顔をしながら、紺野は去っていった。
 はぁ、と息を吐き、そっと緑を見る。

「あぁ、もう……ムードってもんがないな」
「ふふっ、それでもあなたは求めずにはいられない……」

 そうでしょう?とその濡れ羽色の瞳に見つめられれば、否定もできない。
 俺は、この男が欲しいのだと。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

落ちこぼれβの恋の諦め方

めろめろす
BL
 αやΩへの劣等感により、幼少時からひたすら努力してきたβの男、山口尚幸。  努力の甲斐あって、一流商社に就職し、営業成績トップを走り続けていた。しかし、新入社員であり極上のαである瀬尾時宗に一目惚れしてしまう。  世話役に立候補し、彼をサポートしていたが、徐々に体調の悪さを感じる山口。成績も落ち、瀬尾からは「もうあの人から何も学ぶことはない」と言われる始末。  失恋から仕事も辞めてしまおうとするが引き止められたい結果、新設のデータベース部に異動することに。そこには美しいΩ三目海里がいた。彼は山口を嫌っているようで中々上手くいかなかったが、ある事件をきっかけに随分と懐いてきて…。  しかも、瀬尾も黙っていなくなった山口を探しているようで。見つけられた山口は瀬尾に捕まってしまい。  あれ?俺、βなはずなにのどうしてフェロモン感じるんだ…?  コンプレックスの固まりの男が、αとΩにデロデロに甘やかされて幸せになるお話です。  小説家になろうにも掲載。

孤独なライオンは運命を見つける

朝顔
BL
9/1番外編追加しました。 自分はアルファであると信じて生きてきたのに、発情したことがキッカケで、オメガだったと発覚してしまった。 アルファだと思っていた時も、孤独で苦しかったのに、オメガになったことで俺の人生はより厳しいものになった。 そんな時、俺は運命と呼べる相手と出会うことになる。 ※※※※※ 高校生×高校生で、オメガバースの設定をお借りしています。 設定はよくあるものだと思いますが、おかしなところがあったら、すみません。 オメガバースについて詳しい説明などは省略しています。 シリアスあり、ラブコメもあり、淡くて青い恋愛がメインのお話です。 ※重複投稿 全十話完結済み

起きたらオメガバースの世界になっていました

さくら優
BL
眞野新はテレビのニュースを見て驚愕する。当たり前のように報道される同性同士の芸能人の結婚。飛び交うα、Ωといった言葉。どうして、なんで急にオメガバースの世界になってしまったのか。 しかもその夜、誘われていた合コンに行くと、そこにいたのは女の子ではなくイケメンαのグループで――。

運命の番は僕に振り向かない

ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。 それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。 オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。 ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。 ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。 ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。 ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *不定期連載です。

ビジネス婚は甘い、甘い、甘い!

ユーリ
BL
幼馴染のモデル兼俳優にビジネス婚を申し込まれた湊は承諾するけれど、結婚生活は思ったより甘くて…しかもなぜか同僚にも迫られて!? 「お前はいい加減俺に興味を持て」イケメン芸能人×ただの一般人「だって興味ないもん」ーー自分の旦那に全く興味のない湊に嫁としての自覚は芽生えるか??

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

ちゃんちゃら

三旨加泉
BL
軽い気持ちで普段仲の良い大地と関係を持ってしまった海斗。自分はβだと思っていたが、Ωだと発覚して…? 夫夫としてはゼロからのスタートとなった二人。すれ違いまくる中、二人が出した決断はー。 ビター色の強いオメガバースラブロマンス。

処理中です...