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03 告白
しおりを挟むヴィルヘルムは貴族だ。
常勝将軍の名をほしいままにしている今、部下や同僚と酒を飲み交わすことはあっても、こんな風に男同士で体を密着させあった事は一度もない。
王国の騎士は戦場でみな、鎧を着込んでいる。
じかに肌をくっつけるなど羞恥の極みであった。
「やめろ――ぅンん……むッ……! ~~ッ♡」
瑞々しい年下の男に唇を吸われる。息苦しさに口をひらくと、青年はさらに舌まで入れてきた。
歯をしゃぶられ、粘膜をなめ回される。
「ヒッ――ぅう!」
しまいには舌をからめ取られ、きつく吸われる。
貴族の女性ともこんな激しい口づけを交わしたことはない。腰にまわされていた手が尻の割れ目に近づき、手ずから揉まれる。
「っ♡ やめ――! さわるな、……っ……この、蛮族め……ッ♡」
必死に抵抗するが、相手も歴戦の勇士。そう簡単にふりほどくことはできなかった。
ようやっと唇が離れた時には、息もたえだえだった。
一瞬、青年の胸に体をよりかかりそうになってしまい、慌てて体勢を整えた。
「ふぅむ。我が妻は身持ちが堅い。まあ、そこがイイんだが」
「誰が妻だ! 男が男を妻にするなど、聞いたことがない!」
「オレの部族では妻に男も女もいないぞ?」
にっこりと笑った顔は太陽のように明るくまばゆい。
まるで抵抗しているこちらが馬鹿みたいに思えてくるから不思議だ。
「若。あちらの国では、男と女しかつがいません」
「そうなのか。もったいない。男を抱く喜びもなかなかだと言うのにな」
しかも他人がいる前で口づけを交わすのも非常識だ。
入り口に佇む老爺からそっと顔をそむけた。
(頬が熱い!)
産まれてこのかた、『アレ』のせいで恋愛とはずっと距離を置いてきた。
三十を過ぎていまだに童貞だ。
部下たちをねぎらうために娼館へ通ったこともあるが、あてがわれた娼婦とは酒を酌み交わすだけでいつも終わった。
『アレ』のせいで人前で裸になることなど絶対にできなかったからだ。
それもとうとう年貢の納め時だ。
彼の妻となれば抱かれる。『アレ』のこともバレてしまう。
「若の年ともなれば新妻にのぼせ上がるのも仕方ありませんな。来週の合議には出られるのでしょう?」
「ああ。出る。侍従には飯と褥の準備だけ頼んでおいてくれ」
「かしこまりました。それでは失礼いたします」
扉が閉められていく。
唯一の逃げ道に手を伸ばすが、もう遅い。
「あぁ……!」
「そう急ぐな。七日間じっくり睦み合おう?」
ベッドに座らせられ、再び青年の顔が近づいてくる。
「待て!」
唇の間に手をかざして、更なるキスを防いだ。
「まだ貴様に言っていないことがある……」
『アレ』を言えばきっとこの青年も自分をおぞましいものでも見る目つきで、遠ざけるだろう。
「この体には……その……普通の男とは異なる……ものが、ついている。だから――ん、ムッ!」
手を取られ、再び口づけられる。
今度は舌をからめることなく、すぐに離してくれた。
それでもキスに慣れない体は鼓動を大きくしていたが。
「――知っている。女の性器がついているのだろう? オレも初めて見たが、なかなかそそるモノだったぞ」
「なっ、なっ、なっ……!」
あいた口がふさがらない。
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