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どうしてこんな事になってしまったのだろう。
ロバートを信じた私が悪かったの?
でも求婚してきたのは向こうなのに。
パトリシアを恨んではいけないの?
私が彼を愛していると知っていたはずなのに。
どうして……
どうして……
考えても答えは出ない。
愛する人を二人も失ってしまった。
そんな悲劇が、よりにもよって私の誕生日だなんて。
一生忘れられない日。もう二度とお祝いなんてできない。
「……っ」
顔を覆って泣いた。
あまりにも深く果ての無い孤独が、私を丸ごと飲み込んだ。
でも急に、こう思った。
ロバートを止めなくては。
彼は私との婚約を破棄すると言っていたけれど、そんな事をさせてはいけない。
咄嗟に立ち上がろうとしても、膝に力が入らなくて転んでしまう。でもドアノブを掴んで、なんとか立ち上がって、徐々に足の感覚を取り戻しながら廊下を走る。
「ロバート……ロバート……!」
気の迷いだと言って。
まだ間に合うから。目を覚ましてくれたら、忘れるから。そうすれば私、誰の事も恨まずに人の幸せを祝福できるから。
あとから考えてみれば、この時の私はどうかしていたのだと思う。
こんなの間違っている。だから正しい形に戻るべき。そんな風に妄信していた。もっと悪い。ロバートを助けてあげなくてはとさえ思っていた。
私が着いた時、広間はしんと静まり返り、その空気は冷たく張り詰めていた。
私とロバート双方の父親が睨み合う脇で、パトリシアが母親に抱きしめられている。非難を覚悟で、この場で発表するような事を言っていた。なのに母親の胸に顔を埋めている幼馴染を、私は酷く軽蔑し、そんな自分に少し驚いた。
「相応の責任は取って頂きますぞ」
「無論、承知している。だが親子の話合いに立ち入るのは控えて頂きたい」
ロバートと同じだ。
悪びれもせず、自分の主張を押し通そうとする姿勢。それを正当化する精神。私の父は、私より早くワージントン伯爵家そのものに見切りをつけたようだ。
ああ、私は裏切られて負けたんだ。
それが結末。覆せない、結果。
誰の目にも明らかだった。
私は自分の誕生日に婚約破棄された、惨めな令嬢なのだ。
父たちの声がはっきり聞こえる。
「パーティーどころじゃない。お集まり頂いて恐縮だが、せめて料理を堪能し、ご歓談ください」
「我々は失礼させてもらう」
「さっさと出て行け!」
激情を顕わにした父を、初めて見た。
すると今度は、ロバートがパトリシアに寄り添い、母親ごと抱きしめた。
「大丈夫。僕が守ります」
広間がざわつく。
批判や呆れの声が飛び交う中、パトリシアの家族とロバートの家族がこちらに向かって歩いてくる。
私は硬直していた。
そんな私を、ロバートとその親であるワージントン伯爵夫妻が敵を見るような目で睨んだ。母親に庇われながら顔を伏せて歩くパトリシアも、真っ赤な目に涙を溜めて、一度だけ私を睨みつけた。
そしてまた、私をすり抜け、出て行ったのだ。
一度だけ私は振り返った。それからまた泣き崩れた。
ロバートを信じた私が悪かったの?
でも求婚してきたのは向こうなのに。
パトリシアを恨んではいけないの?
私が彼を愛していると知っていたはずなのに。
どうして……
どうして……
考えても答えは出ない。
愛する人を二人も失ってしまった。
そんな悲劇が、よりにもよって私の誕生日だなんて。
一生忘れられない日。もう二度とお祝いなんてできない。
「……っ」
顔を覆って泣いた。
あまりにも深く果ての無い孤独が、私を丸ごと飲み込んだ。
でも急に、こう思った。
ロバートを止めなくては。
彼は私との婚約を破棄すると言っていたけれど、そんな事をさせてはいけない。
咄嗟に立ち上がろうとしても、膝に力が入らなくて転んでしまう。でもドアノブを掴んで、なんとか立ち上がって、徐々に足の感覚を取り戻しながら廊下を走る。
「ロバート……ロバート……!」
気の迷いだと言って。
まだ間に合うから。目を覚ましてくれたら、忘れるから。そうすれば私、誰の事も恨まずに人の幸せを祝福できるから。
あとから考えてみれば、この時の私はどうかしていたのだと思う。
こんなの間違っている。だから正しい形に戻るべき。そんな風に妄信していた。もっと悪い。ロバートを助けてあげなくてはとさえ思っていた。
私が着いた時、広間はしんと静まり返り、その空気は冷たく張り詰めていた。
私とロバート双方の父親が睨み合う脇で、パトリシアが母親に抱きしめられている。非難を覚悟で、この場で発表するような事を言っていた。なのに母親の胸に顔を埋めている幼馴染を、私は酷く軽蔑し、そんな自分に少し驚いた。
「相応の責任は取って頂きますぞ」
「無論、承知している。だが親子の話合いに立ち入るのは控えて頂きたい」
ロバートと同じだ。
悪びれもせず、自分の主張を押し通そうとする姿勢。それを正当化する精神。私の父は、私より早くワージントン伯爵家そのものに見切りをつけたようだ。
ああ、私は裏切られて負けたんだ。
それが結末。覆せない、結果。
誰の目にも明らかだった。
私は自分の誕生日に婚約破棄された、惨めな令嬢なのだ。
父たちの声がはっきり聞こえる。
「パーティーどころじゃない。お集まり頂いて恐縮だが、せめて料理を堪能し、ご歓談ください」
「我々は失礼させてもらう」
「さっさと出て行け!」
激情を顕わにした父を、初めて見た。
すると今度は、ロバートがパトリシアに寄り添い、母親ごと抱きしめた。
「大丈夫。僕が守ります」
広間がざわつく。
批判や呆れの声が飛び交う中、パトリシアの家族とロバートの家族がこちらに向かって歩いてくる。
私は硬直していた。
そんな私を、ロバートとその親であるワージントン伯爵夫妻が敵を見るような目で睨んだ。母親に庇われながら顔を伏せて歩くパトリシアも、真っ赤な目に涙を溜めて、一度だけ私を睨みつけた。
そしてまた、私をすり抜け、出て行ったのだ。
一度だけ私は振り返った。それからまた泣き崩れた。
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