裏切られた令嬢は死を選んだ。そして……

希猫 ゆうみ

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もっと酷い事が待ち受けているとは知らずに、私は数日間、部屋に引きこもって泣いていた。

「レーラ。確認したい事がある。扉を開けなさい」
「……?」

珍しく、強い口調。
私には優しく物静かな顔しか見せてこなかった人だから、少し恐い。焦る気持ちが私を小走りにさせ、扉を開けさせた。

硬い表情の父は、私を押し退けるようにして部屋に入る。
戸惑いながら涙を拭いて、私は呆然と父を眺めていた。父は私の抽斗や枕の下、ベッドの下、戸棚などを調べている。

「お父様……?」

父の手が日記に伸びる。私は咄嗟に駆け戻り、父の背に縋った。

「お父様、それは……!」

父は私を無視し、短い時間とはいえ無断で日記に目を走らせ、それを乱暴にベッドに放る。

「!?」

何が起きているの?
父は人が変わってしまったように、私の部屋の探索を続けている。

「お父様、やめて……!」

婚約者と幼馴染に裏切られた事とは別のショックが私を襲う。

「お父様!」
「……」

父が手を止めた。
戸棚に置いてあった箱から、一通の手紙を取り出す。それは幼い頃から交わしてきた、パトリシアとの手紙をしまっておく特別な箱だった。

あまりにも泣き暮れて、そういう始末までは頭が回らなかった。
全部、焼いてしまおう。あんなものは要らない。私たちの絆は全て嘘なのだから。

「これをどう説明する?」
「え?」

父は一通の手紙を断りもなく開き、私に突き付けた。

「……」

パトリシアの手紙……じゃない。
それは一見すると私の筆跡で、ジェームズという男性への愛を綴ってある、情熱的な手紙。

「?」

混乱して、意味がわからなかった。
只一つ確かな事は、父が静かに憤慨しているという事。

「ジェームズとは誰た」
「……知りません」
「知らないわけがない。ここにお前の字で書いてある。ここにも、ここにも、ここにも、ジェームズ」
「こんなはずありません。私は……!」
「どこの誰だ!どこで出会った!?いつ、何回密会していた!?」
「私じゃありません!」

私は叫んだ。
父はもっと大きな怒声を上げた。

「嘘を吐くな!!」
「!」

そして力任せに手紙の箱と投げ棄てて、さっき放った私の日記を荒い手つきで開き、激しく指を叩きつける。

「お前の字だ!全てパトリシアから聞いた!」
「!?」

パトリシア?

幼馴染の顔が、鮮明に蘇る。
その時私は一瞬で理解した。
今まで考えもしなかった。余裕がなかったから。

どうして二人は私の部屋にいたのか。
わざわざ私の誕生日に、私の部屋で、キスしていたのか。

「……違います、お父様」

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