もう愛は冷めているのですが?

希猫 ゆうみ

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「え……?」

意味がわからなかった。
聞き間違えたのだと思い込もうとした。

でも、ルシアンが笑って右手をあげた。

「じゃあ、そういう事で」
「……」

私は目を瞠って立ち尽くしていた。その間にルシアンは行ってしまった。

いったい今ここで何が起きたというのだろう。
今日は、私たちが一緒に過ごしたこの小さな教会で、近しい人たちだけを招いた細やかな結婚式を挙げる。私はウェディングドレスを着て、ミシェルに付添人をしてもらい、もうすぐ鐘の音が鳴って、私たちは夫婦として認められる。

一緒にウィンダム伯領を守っていこうと、あなたは言ってくれた。
私を支えてくれると、永遠に愛すると、そう言ってくれた。

けれど……

「……」

真実の愛を見つけたと言って、私に、さよならを告げた。

私がその場に座り込むより早くミシェルが控室に戻ってきた。

「お父様は用がないって。ルシアンの悪戯だったわ。あいつ、花婿だからって只じゃおかない」
「……」
「エスター?」

ミシェルが異変に気付く。

「エスター?どうしたの?あいつ何かした?」

私は首を振って否定した。そうしながら、ゆっくりとその場に座り込んだ。

「エスター!」

ミシェルが付き合って跪き私の体を揺さぶった。恐らく、私が倒れてしまうと早とちりして力尽くで防ごうと思ったのだろう。いくら威勢がよくても体格に見合った体力しかないミシェルには、長身の私を助け起こすのは大変な苦労だ。

「あ、ごめん」
「……」

大丈夫よ、と、私は返したつもりだった。
声が出ない。

私の様子がおかしいのでミシェルもぐんと優しくなる。年上の私を小さな貫禄で包み込むように髪を撫でて顔を覗き込んでくる。

「エスター、大丈夫?ドレスが汚れてしまうわ。椅子に座らない?」
「……彼、真実の……」
「え?」
「真実の愛を見つけたって……」

ミシェルが私の背中を撫でた。

「ええ。あなたをね」
「違う」
「違う?」

ミシェルの声に棘が蘇る。

「違うって何?何も違わないわ。私の反対を押し切って貴族にしてまで結婚するほど深く愛したあなたの愛が真実の愛じゃなかったら何なのよ!」
「わからない……!」

ミシェルが怒ってくれたお陰で私の涙がどっと溢れた。それを見てミシェルが小さな拳で床を叩く。
私はミシェルに縋りついて泣いた。

「彼、駆け落ちするの……!」
「裏切り者……!」
「さよならを言いに来たのよ……!」

そこまでだった。
私は恐ろしい程に泣き喚き、やがて騒ぎになって、結婚式は中止。控室云々と言っていられなくなり、父もクリスも、ミシェルの父親までも入ってきてぎゅうぎゅう詰めになった。

「お父様!あいつを見つけて殺して!!」

ミシェルの怒号が響き、正午の鐘と重なった。
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