妹は病弱アピールで全てを奪い去っていく

希猫 ゆうみ

文字の大きさ
8 / 10

しおりを挟む
「私の目から見てマチルダには何ら問題はない。礼儀正しく清楚で美しい令嬢だ。あの幼稚な娼婦のような伯爵令嬢と実の姉妹とは驚いた」
「ビ、ビッ、ビヨネッタが……!?」
「ああ。私の目の前で侯爵令息にしな垂れかかり、振り向きざまに舌を出して笑っていた」
「……本当に私の可愛いビヨネッタでしたか!?」

母は諦めなかった。
そこへ、私に求婚しかけた侯爵令息レオポルドと腕を組んで満面の笑みを浮かべながら当のビヨネッタが歩いてくる。

「お父様、お母様!私、レオポルド様と結婚します!!」
「素晴らしい女性です!私に人生をかけてビヨネッタを幸せにする栄誉をどうかお与えください!」

すっかり満開のお花畑という二人だけの世界を作り出し、その中から意気揚々と手を振っている。私が見えていないのか、それとも、私を徹底的に無視しながら私に見せつけるのが楽しいのか。
だけどもう、私は涙すら沸いてこない。

寒気がするほど愚かな人たちにただ呆れてしまう。

「ということで、私は彼女とは踊らない」
「え?あ、はい……」

クラウディオ殿下の端的な拒絶に、両親が唖然としながらも答えた。

驚いたことに、婚約をしたばかりの二人は浮かれすぎてクラウディオ殿下が誰であるか咄嗟に判断できなかったようだった。
まず私を、それからクラウディオ殿下を続いて品定めするように眺め、自分たちの方が優れていると感じたらしく鼻で笑う。

これには両親も大慌て。
でもビヨネッタの方が先手を打った。

私から奪い取ってくれた軽薄な侯爵令息の腕に絡みつきつつ、甘ったるく高い歓声をあげる。

「まあ!お姉様ったら!その方どなた!?」
「すぐさま男を捕まえるとは、恐ろしい女だ。騙されるところだったよ。妹のビヨネッタはこんなに純真で可愛い──」

今となっては私に声をかけてくれたレオポルドという名の侯爵令息だって妹と同類なのだとわかった。
私を蔑むような目でぶつぶつ言っている。その声に被せるようにしてクラウディオ殿下がはっきりと名乗った。

「私はこの国の第二王子クラウディオだが、何か?」
「はっ!?」
「────え?」

驚いた二人はまず私の両親へと視線を送り、それが事実であると確認を取る。
それからまたクラウディオ殿下に視線を戻し、妹は見事に卒倒の名演技を決め、レオポルドは単純に興奮が冷めたようだった。

「はぁ……っ」

しどけなく崩れ落ちる妹をレオポルドが咄嗟に抱きとめたけれど、妹はその腕から巧みに身を捩って転げ落ち、ふわりと床に倒れ込んだ。

「え……?」

レオポルドが現実に直面している。
クラウディオ殿下が腕組みをして頷いた。

「あれだけ手あたり次第に男を口説いていれば疲れも溜まるだろう。体が丈夫なのは結構だが、この城は娼館でもなければベッドでもない。全く見苦しい。起きろ」
「……」

妹は頑なに気絶したふりをしている。

「……ビヨネッタ!ビヨネッタ!?」

母が駆け寄り傍に跪いて体を揺すった。妹は微動だにしない。

「王医を呼んでもいいが、下らない仮病に手を煩わせるのは本意ではない。こんな嘘に付き合って善良な姉娘のマチルダを冷遇するとは。呆れるな」

クラウディオ殿下は辛辣だった。
両親もレオポルドも冷や汗をかき始めている。妹だけは倒れ込んだまま微動だにしない。

クラウディオ殿下が改めて私に向き直り、打って変わって思いやりの篭った声音で言った。

「マチルダ、辛い思いをしてきただろう。付き合う人間は選ぶべきだ。君が疎まれて当然だ。残念だが君の家族はまともじゃない」
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

虐げられていた姉はひと月後には幸せになります~全てを奪ってきた妹やそんな妹を溺愛する両親や元婚約者には負けませんが何か?~

***あかしえ
恋愛
「どうしてお姉様はそんなひどいことを仰るの?!」 妹ベディは今日も、大きなまるい瞳に涙をためて私に喧嘩を売ってきます。 「そうだぞ、リュドミラ!君は、なぜそんな冷たいことをこんなかわいいベディに言えるんだ!」 元婚約者や家族がそうやって妹を甘やかしてきたからです。 両親は反省してくれたようですが、妹の更生には至っていません! あとひと月でこの地をはなれ結婚する私には時間がありません。 他人に迷惑をかける前に、この妹をなんとかしなくては! 「結婚!?どういうことだ!」って・・・元婚約者がうるさいのですがなにが「どういうこと」なのですか? あなたにはもう関係のない話ですが? 妹は公爵令嬢の婚約者にまで手を出している様子!ああもうっ本当に面倒ばかり!! ですが公爵令嬢様、あなたの所業もちょぉっと問題ありそうですね? 私、いろいろ調べさせていただいたんですよ? あと、人の婚約者に色目を使うのやめてもらっていいですか? ・・・××しますよ?

王太子妃が我慢しなさい ~姉妹差別を受けていた姉がもっとひどい兄弟差別を受けていた王太子に嫁ぎました~

玄未マオ
ファンタジー
メディア王家に伝わる古い呪いで第一王子は家族からも畏怖されていた。 その王子の元に姉妹差別を受けていたメルが嫁ぐことになるが、その事情とは? ヒロインは姉妹差別され育っていますが、言いたいことはきっちりいう子です。

愛されヒロインの姉と、眼中外の妹のわたし

香月文香
恋愛
わが国の騎士団の精鋭二人が、治癒士の少女マリアンテを中心とする三角関係を作っているというのは、王宮では当然の常識だった。  治癒士、マリアンテ・リリベルは十八歳。容貌可憐な心優しい少女で、いつもにこやかな笑顔で周囲を癒す人気者。  そんな彼女を巡る男はヨシュア・カレンデュラとハル・シオニア。  二人とも騎士団の「双璧」と呼ばれる優秀な騎士で、ヨシュアは堅物、ハルは軽薄と気質は真逆だったが、女の好みは同じだった。  これは見目麗しい男女の三角関係の物語――ではなく。  そのかたわらで、誰の眼中にも入らない妹のわたしの物語だ。 ※他サイトにも投稿しています

〖完結〗妹は病弱を理由に私のものを全て欲しがります。

藍川みいな
恋愛
侯爵令嬢のアイシャは、第一王子のリアムと婚約をしていた。 妹のローレンは幼い頃から病弱で、両親はそんな妹ばかりを可愛がり、ローレンの欲しがるものはなんでも与えていた。それは、アイシャのものでも例外はなかった。 「アイシャは健康でなんでも出来るのだから、ローレンが欲しがるものはあげなさい。」 そう言われ、ローレンが欲しがるものはなんでも奪われて来た。そして、ローレンはアイシャの婚約者であるリアム王子をも欲しがった。 「お願い、お姉様。リアム王子が好きなの。だから、私にちょうだい。」 ローレンが欲しがる事は分かっていた、そして両親も、 「ローレンは身体が弱いのだから、婚約者を譲りなさい。」 と、いつもどおりの反応。 ローレンは病弱でも何でもありません。演技が上手いだけです。 設定ゆるゆるの架空の世界のお話です。 全6話で完結になります。

(完結)可愛いだけの妹がすべてを奪っていく時、最期の雨が降る(全5話)

青空一夏
恋愛
可愛いだけの妹が、全てを奪っていく時、私はその全てを余すところなく奪わせた。 妹よ・・・貴女は知らない・・・最期の雨が貴女に降ることを・・・ 暗い、シリアスなお話です。ざまぁありですが、ヒロインがするわけではありません。残酷と感じるかどうかは人によるので、わかりませんが、残酷描写シーンはありません。最期はハッピーエンドで、ほのぼのと終わります。 全5話

【完結済み】妹の婚約者に、恋をした

鈴蘭
恋愛
妹を溺愛する母親と、仕事ばかりしている父親。 刺繍やレース編みが好きなマーガレットは、両親にプレゼントしようとするが、何時も妹に横取りされてしまう。 可愛がって貰えず、愛情に飢えていたマーガレットは、気遣ってくれた妹の婚約者に恋をしてしまった。 無事完結しました。

【完結】私の婚約者の、自称健康な幼なじみ。

❄️冬は つとめて
恋愛
「ルミナス、すまない。カノンが…… 」 「大丈夫ですの? カノン様は。」 「本当にすまない。ルミナス。」 ルミナスの婚約者のオスカー伯爵令息は、何時ものようにすまなそうな顔をして彼女に謝った。 「お兄様、ゴホッゴホッ! ルミナス様、ゴホッ! さあ、遊園地に行きましょ、ゴボッ!! 」 カノンは血を吐いた。

【完結】「妹が欲しがるのだから与えるべきだ」と貴方は言うけれど……

小笠原 ゆか
恋愛
私の婚約者、アシュフォード侯爵家のエヴァンジェリンは、後妻の産んだ義妹ダルシニアを虐げている――そんな噂があった。次期王子妃として、ひいては次期王妃となるに相応しい振る舞いをするよう毎日叱責するが、エヴァンジェリンは聞き入れない。最後の手段として『婚約解消』を仄めかしても動じることなく彼女は私の下を去っていった。 この作品は『小説家になろう』でも公開中です。

処理中です...