妹は病弱アピールで全てを奪い去っていく

希猫 ゆうみ

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クラウディオ殿下に付き添われて戻った私に、両親は今まで見せたこともないような晴れやかな笑顔を見せた。

「あら!まあ!まさか!!」
「マチルダ……!」

妹に譲れとか、妹の方が相応しいから身を引けとか手厳しい指摘を受けるとばかり思い込んでいた私は、驚いて呆然と立ち尽くしてしまう。

これが手のひら返しというものなのか。
あれほど虐げてきた私であっても、王子様に選ばれればさすがに歓迎されるようだ。

でも、それは……私個人を認められたわけではない。

浅はかな両親の人間性に幻滅した。
こんな人たちの愛情をどうして欲しがったりしたのかと、自分で自分が不思議に思える。

「話がある」
「えっ!?」

クラウディオ殿下の冷徹な第一声に両親はまた顔色を変える。
そして、私の思った通りのことを矢継ぎ早に言い出した。

「娘が何か無礼を働きましたでしょうか?それは大変申し訳ございませんでした。この娘は本当に不出来な者で、私共もほとほと困り果てておるのです」

「クラウディオ殿下。ですが、妹のビヨネッタでしたらきっとご期待に添えると思いますわ!上の娘のことは心からお詫びします。でも、これはきっといい巡りあわせなのです!ぜひ、ビヨネッタと踊ってください」

父も酷いが、母はもっと酷い。
女の方から、それも伯爵夫人という立場でありながら第二王子に娘と踊れと要求している。

私は軽い眩暈がして頭を抱えた。
なんて下品で失礼な母親なのだろう。私を蔑むだけならまだしも、王城で王子様相手にこんな無礼を働くような人だったなんて。

「あら、マチルダは仮病?妹が幸せになろうというのに、どうしても邪魔したいのね。ご覧くださいクラウディオ殿下。こういう娘なのです。どうしようもありませんわ。気になさらないで頂けるとお互いに気持ちよく過ごせると思います。いつまでそこにいるの?今ビヨネッタの大切な話をしているの。あっちへ行ってらっしゃい!」
「ふっ」

私とクラウディオ殿下を交互に見遣りながら二つの顔を使い分ける母を見て、クラウディオ殿下が小さく笑いを洩らした。

「もう、本当に困ってしまいますわ。連れて来なければよかった。あの娘がどんな無礼を働いたにせよ、私たち夫婦には本当に愛せる可愛い娘はビヨネッタただ一人です。本当に素晴らしい子ですのよ?早く会わせたいのですけれど、ちょっと席を外しておりますの」

完全に意図を曲解した母は、笑顔でクラウディオ殿下に語り掛けている。

「本当に殿下に巡り会う為に生まれてきた子と言っても過言ではありません!」

父まで興奮気味に母と一緒になってクラウディオ殿下へ詰め寄っていく。

ああ……やっぱり、狂っているのは家族の方だった。
良識も常識も、愛情さえも、この人たちは持ち合わせていない。

「ご希望でしたら姉のマチルダを召使としてお付けします。これでも貴族ですから、お城で働く分には充分な教養を身につけさせておりますよ」
「否、結構」

クラウディオ殿下が口元を隠し笑いを押し込めながら言い放つ。
その間も両親はチラチラと私に薄気味の悪いどろりとした視線を向けて、存在そのものを疑い忌避している気持ちを伝えてくる。

ビヨネッタではなく、どうしてお前がいるのか、と。

次の瞬間、クラウディオ殿下が真顔に戻った。

「余りに馬鹿馬鹿しくてつい笑ってしまったが、全く楽しくない」
「え……」
「あ……」

両親も蒼褪める。
クラウディオ殿下は冷たく畳みかけた。

「ビヨネッタならつい先刻、他人の求婚に割り込んで侯爵令息の心を奪い、その侯爵令息に抱えられて暗がりに消えていった」

両親は蒼褪めるなどという表現を遥かに超え、血の気が引き切り、真っ白な顔で目を剥いた。
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