没落令嬢の子育て記。12世紀ドイツに似た異世界で、拾った子犬がイケメン精霊犬になりまして

ねこまんまる

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4 子供たちの手伝い

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私はあわてて引き止めた。

「あ、あぶないから、あとは私がやるよ」

「もう少し細くして……よし、これでいいかな?」

……上手い。村の子どもは五歳でも、もう“働き手”なのよね。
大人と同じ労働ではないけれど、中世では『子供=労働力』という考え方がごく普通。
村の子供たちは、ヤギ・羊・ガチョウの見張りや、畑で落ち穂を拾う作業などを手伝う場合もある。

「ありがとうね」

私は子供が作ってくれた柵用のくいを地面に打ち込むため、凍った地面に鍛造鉄のハンマーを振り下ろした。
まずは氷を割らないと、杭は地面に刺さらない。

——ガンッ。

ハンマーを地面にあてた瞬間、氷の膜をくだく鈍い音がして、衝撃が腕の骨までひびいてくる。

シレジアの冬は偏西風とバルト海からの寒気で地面が深く凍りつく。
土の水分が氷結すれば、地表は石とほぼ変わらない硬さになる。

そのとき、別の子どもの声がした。

「アーデルさん、かせ。かわりにやってやる」

ふりむくと、赤い髪の男の子が立っていた。

この子も、年齢は五歳くらい。
羊毛を紡いで織った粗布のチュニックを着ていて、頭には犬耳、おしりにはしっぽ。
“獣の血”を受け継いだ子どもだ。

私は思わず問いかけた。

「き、きみは?」

「俺は、『アカ』だ」

「アカ?」

赤髪の子に、“アカ”という名前。
やっぱり、この世界の村人たちは名前を色でつけるのが本当に自然なんだ。
そういう私も、赤い毛色の子犬には『アカ』という名前をつけているんだけど。

赤毛の子供は無造作に私からハンマーを取ると、腕と背を使ってふりおろし、氷を割り始めた。

そして、私がポカンとしながら見ているうちに、二人は地面に開いた穴に新しい杭を差し込む。
横木を縄で結び直し、固定する。
 
「……これでよし。柵の修理はおわったぜ。春までは、もう倒れねぇだろ」

赤毛の男の子……アカが、私を見た。
 
「杭打ちなんて、男の仕事だ。アーデルさんは家で針仕事でもしてりゃいいんだよ」
 
妙に、大人っぽいことを言う子供だ。
というか、本当にどこの家からきた子たちなんだろう?

疑問に思いながら、私はアカの頭をなでた。
 
「でも、この村ではそんな区別してたら冬を越せないでしょ? 元貴族でも、女でも、柵のくいがゆるんでたら打たなきゃいけないのよ」

すると、アカが赤面する。
アオが「いいなあ」と見てきたので、彼の頭もなでると、アオはうつむいて顔を赤らめた。
かわいいなあ。
 
ほっこりしながら、私は村の畑を見渡した。
柵の横には秋に積み上げた堆肥があり、白い湯気を立てている。
畑の土は凍って固く、くわなんて今は歯も立たない。
 
畑には冬播きのライ麦の芽が眠っている。
ライ麦は寒さに強く、雪に埋もれても枯れない。
春になれば、またきっと伸びてくれるはずだ。

「芽が生きてれば、春にはまた伸びるわよね」
 
「ああ、そうだな」
 
アカはそう言って、ハンマーを雪の上に突き立てた。

折れた柵も、凍った杭も、とりあえず今はもう直った。
あとは、春が来るのを待つだけだ。
 
そのとき、背後から農夫の声がした。
 
「おや、アーデル嬢。もう柵をなおしてくれたのかい」

振り向くと、灰色の厚地ウールの外套を羽織った60歳くらいの農夫――ヨハンが、肩にかけた木製の手桶ておけをギシギシときしませながら歩いてくるところだった。

外套の襟元には、凍りついたしもが白く張りついている。
急峻な冬を越えるシレジアの農民は、朝から薪割りや家畜小屋の雪下ろしに追われるため、顔のシワには氷の粒が入り込み、鼻の頭まで赤く染まっていた。
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