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誰も欲しがらないものに金を払うほどの価値があるとでも?
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「なっ……失礼ではありませんこと!?」
「失礼はどちらかしら? 金でフレン伯爵夫人の座を得たなどと、何をどうしたらそんな考えに至るのかさっぱり分かりませんわ。だいたい、金を支払うほどの価値があると思って? 社交界で悪評が広まっているフレン伯爵の元へ嫁ぎたがる令嬢も、娘を嫁がせたいと思う家もありませんことよ」
顔を真っ赤にして怒り出すミスティ子爵夫人に対して冷静に正論を返すシスティーナ。
その目は完全に馬鹿を見るようなものだった。
「価値がないなんてそんな……伯爵様にも失礼よ!」
「事実ですし、旦那様もそれを十分理解なさっています。二度も奥方に離婚された殿方に嫁ぎたいと思います? それこそわたくしが嫁がなければ旦那様の元に三度目の花嫁が来ることはなかったでしょう。それくらい“フレン伯爵の妻”の座は社交界で忌避されているのですよ。誰もが欲しがらないものに価値があると思って?」
「そんな……酷い、あれは伯爵様に問題があったわけではないのに……」
伯爵に問題があったわけではない?
どうして子爵夫人がそれを知っているのか、と疑問を抱いたが今はあえてそれを指摘しないことにした。それより今はこの意味不明な勘違いを正したい。
「たとえ離婚の原因が外的要因だったとしても、第三者から見れば二度も妻に逃げられた問題のある男としか思われません。社交界なんて足の引っ張り合いが常の世界なのですから、誰かの醜聞など面白おかしく広められてしまいます。わたくしが嫁ぐ前の旦那様の噂を知らないのですか?」
外的要因という部分に一瞬ビクリと身を震わせる。その反応から夫と前妻との離婚の原因に彼女も何らかの形で関わっているのだと思えた。
「伯爵様の噂、ですか……? それって……」
あれだけ広まっているレイモンドの噂を知らないことに驚く。
本当に知らないのか、それとも知らないふりをしているのか。
社交しているならば前者は考えにくいのだが……。
「妻に暴力を振るっていただとか、先代のように愛人を沢山抱えていただとか、隠し子が山のようにいるだとか、そんな事実無根の悪い噂です。言っておきますがこんなの序の口ですよ? もっと屈辱的な噂を面白おかしく話す方もいますからね?」
先程まで顔を赤くして怒っていたのに、今や顔面蒼白となって絶句している。
「う、うそ……。伯爵様がそんな悪く言われているだなんて……」
「大分前からそうですけど、知らなかったのですか?」
「知らなかった……です。だって、離婚ぐらいでそんな……」
「ぐらい、ではありません。社交界は他者を蹴落とすことに命を懸けているような人の集まりです。だから醜聞は致命的なのですよ。それこそ金を払わねば新しい妻を得ることも叶わないほどフレン家の評判は低い。だからわたくしが金で“フレン伯爵の妻”の座を得たなど有り得ません」
きっぱり言うと子爵夫人は唖然としていた。
フレン家の評判が悪いことは社交界で周知の事実なのに、何故そこまで驚くのか。
(もしかして社交をしていないのかしら……)
知らないふりをしているのかと思ったのだが、もしかすると彼女はほとんど社交をしていないのかもしれない。だが、貴族夫人が社交をしていないなんて信じがたいことだ。
「失礼はどちらかしら? 金でフレン伯爵夫人の座を得たなどと、何をどうしたらそんな考えに至るのかさっぱり分かりませんわ。だいたい、金を支払うほどの価値があると思って? 社交界で悪評が広まっているフレン伯爵の元へ嫁ぎたがる令嬢も、娘を嫁がせたいと思う家もありませんことよ」
顔を真っ赤にして怒り出すミスティ子爵夫人に対して冷静に正論を返すシスティーナ。
その目は完全に馬鹿を見るようなものだった。
「価値がないなんてそんな……伯爵様にも失礼よ!」
「事実ですし、旦那様もそれを十分理解なさっています。二度も奥方に離婚された殿方に嫁ぎたいと思います? それこそわたくしが嫁がなければ旦那様の元に三度目の花嫁が来ることはなかったでしょう。それくらい“フレン伯爵の妻”の座は社交界で忌避されているのですよ。誰もが欲しがらないものに価値があると思って?」
「そんな……酷い、あれは伯爵様に問題があったわけではないのに……」
伯爵に問題があったわけではない?
どうして子爵夫人がそれを知っているのか、と疑問を抱いたが今はあえてそれを指摘しないことにした。それより今はこの意味不明な勘違いを正したい。
「たとえ離婚の原因が外的要因だったとしても、第三者から見れば二度も妻に逃げられた問題のある男としか思われません。社交界なんて足の引っ張り合いが常の世界なのですから、誰かの醜聞など面白おかしく広められてしまいます。わたくしが嫁ぐ前の旦那様の噂を知らないのですか?」
外的要因という部分に一瞬ビクリと身を震わせる。その反応から夫と前妻との離婚の原因に彼女も何らかの形で関わっているのだと思えた。
「伯爵様の噂、ですか……? それって……」
あれだけ広まっているレイモンドの噂を知らないことに驚く。
本当に知らないのか、それとも知らないふりをしているのか。
社交しているならば前者は考えにくいのだが……。
「妻に暴力を振るっていただとか、先代のように愛人を沢山抱えていただとか、隠し子が山のようにいるだとか、そんな事実無根の悪い噂です。言っておきますがこんなの序の口ですよ? もっと屈辱的な噂を面白おかしく話す方もいますからね?」
先程まで顔を赤くして怒っていたのに、今や顔面蒼白となって絶句している。
「う、うそ……。伯爵様がそんな悪く言われているだなんて……」
「大分前からそうですけど、知らなかったのですか?」
「知らなかった……です。だって、離婚ぐらいでそんな……」
「ぐらい、ではありません。社交界は他者を蹴落とすことに命を懸けているような人の集まりです。だから醜聞は致命的なのですよ。それこそ金を払わねば新しい妻を得ることも叶わないほどフレン家の評判は低い。だからわたくしが金で“フレン伯爵の妻”の座を得たなど有り得ません」
きっぱり言うと子爵夫人は唖然としていた。
フレン家の評判が悪いことは社交界で周知の事実なのに、何故そこまで驚くのか。
(もしかして社交をしていないのかしら……)
知らないふりをしているのかと思ったのだが、もしかすると彼女はほとんど社交をしていないのかもしれない。だが、貴族夫人が社交をしていないなんて信じがたいことだ。
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