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それはそれ、これはこれ
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「な、なら……どうして貴女はフレン伯爵家に嫁いだのですか? 誰も嫁ぎたがらないような家に、どうして……」
「わたくしが嫁ぎましたのはフレン家所有の鉱山を利用した共同事業の為です。かなり大掛かりなものとなり、両家の協力が必要不可欠であることからより結びつきを強める為に結婚にて縁戚関係となりました」
本当はフレン家所有の鉱山から採掘される希少な鉱石を独占する為だが、これによりフレン伯爵領の経済の発展も見込めるから嘘は言っていない。そしてその希少な鉱石を狙って他家がおかしな横槍を入れないように目を光らせる為でもある。
「何それ……。そんな打算で夫婦になるなんておかしいでしょう!? 愛がない結婚なんて伯爵様が可哀想よ!」
「可哀想なのは貴女の頭では?」
「な……なんですって!?」
「あのですね、打算的な政略結婚は貴族ならば普通です。貴族が何不自由なく贅沢な暮らしが出来るのは誰のおかげだと思っているのですか?」
「え……? それは……当主のおかげ、かしら……」
「半分正解で半分不正解ですね。確かに当主の尽力あってこそとは思いますが、それだけではございません。税を納める領民の働きがあるからわたくし達は衣食住に事欠かない暮らしが出来るのですよ。ならば当主の一族がすべきことは税を納めてくれる領民の生活を守ること。政略結婚は家の利益と領民の利益に繋がる重要なもの。貴族の娘が果たすべき義務です」
こんなのは貴族としての教育を受けていれば常識の範疇なのだが、何故か夫人は信じられないものを見るような目を向けてくる。その反応にこの人は本当に貴族なのかと疑った。
「で、でも……私は主人から見初められて嫁いだのよ! 私の生家は一代男爵家だし、縁戚になったとしても何の利益もないはずだわ! 貴族だって愛のある結婚はするわよ!」
「別に貴族が全員愛の無い結婚をしているとは言っておりません。愛の無い政略結婚も義務として受け入れていると言っただけです。それと、ミスティ子爵は政略結婚を選ばずとも財を維持できる手腕をお持ちなのでしょう。政略を結ぶ必要性を感じないのであればご自分が好意を寄せた女性を妻にすることも可能です」
ミスティ子爵はこの人の何が良くて妻にしたのか……やっぱり顔だろうか。
ここまで常識も礼儀作法もなっていない女性をよく見初めたものだと感心してしまう。
「ご存知かと思いますが、フレン伯爵家は先代の浪費や目ぼしい産業が無かったせいで代々赤字続きです。旦那様もそれを承知しておりますので資産家のご令嬢を娶っておりました。奥方の生家に支援してもらい、その時は持ち直したようですが……離婚後はやはり元の状態に戻ってしまったようですね。資金繰りに奔走する旦那様の心労は如何ほどでしょう……。領民達も苦しい生活を強いられて可哀想です」
こうやって口にすると段々腹が立ってきた。
離婚さえしなければ奥方の家の支援で領民達の生活は安定していたかもしれないのに、離婚によってそれが振り出しに戻っていたのだから。幼馴染達の非常識で余計な行動のせいで一番振り回されて犠牲になったのは領民達だ。
離婚したからこそシスティーナがレイモンドの妻になれたのだが、それはそれ、これはこれ。領民達を振り回して苦しい生活をさせたことは許しがたい。
「ところで夫人、先程フレン伯爵である我が夫の妻になりたい方が沢山いるとおっしゃいましたが……それってどちらにいらっしゃるの? 社交界では誰も嫁ぎたがらないほど悪評が広まってしまったフレン家に嫁入りしたいというお嬢様はどちらに?」
「え………………? あ……それは……」
狼狽える子爵夫人だが目線はしっかりパメラの方を向いている。
「沢山、とおっしゃるからには複数人いるはずですよね? そのような家や未婚のご令嬢の話は聞いたことがないのですけどね……」
どうせ嘘でしょう、と言わんばかりの表情で煽れば分かり易くカッとなった。
「こちらにおりますパメラお従姉様です! それと同じく伯爵様の幼馴染でいらっしゃるアリー様とメグ様も! 皆様ずっと昔から伯爵様のことが好きだったのですよ!? それを貴方が横から攫うような真似をして……!」
いきなり恋心を暴露されたパメラは驚愕した顔を子爵夫人へと向けた。
両手はチョコレートを摘まんでおり、よく見れば箱の中に大量にあったのが空になっている。静かだと思ったらずっとチョコレートに夢中だったのか。
「わたくしが嫁ぎましたのはフレン家所有の鉱山を利用した共同事業の為です。かなり大掛かりなものとなり、両家の協力が必要不可欠であることからより結びつきを強める為に結婚にて縁戚関係となりました」
本当はフレン家所有の鉱山から採掘される希少な鉱石を独占する為だが、これによりフレン伯爵領の経済の発展も見込めるから嘘は言っていない。そしてその希少な鉱石を狙って他家がおかしな横槍を入れないように目を光らせる為でもある。
「何それ……。そんな打算で夫婦になるなんておかしいでしょう!? 愛がない結婚なんて伯爵様が可哀想よ!」
「可哀想なのは貴女の頭では?」
「な……なんですって!?」
「あのですね、打算的な政略結婚は貴族ならば普通です。貴族が何不自由なく贅沢な暮らしが出来るのは誰のおかげだと思っているのですか?」
「え……? それは……当主のおかげ、かしら……」
「半分正解で半分不正解ですね。確かに当主の尽力あってこそとは思いますが、それだけではございません。税を納める領民の働きがあるからわたくし達は衣食住に事欠かない暮らしが出来るのですよ。ならば当主の一族がすべきことは税を納めてくれる領民の生活を守ること。政略結婚は家の利益と領民の利益に繋がる重要なもの。貴族の娘が果たすべき義務です」
こんなのは貴族としての教育を受けていれば常識の範疇なのだが、何故か夫人は信じられないものを見るような目を向けてくる。その反応にこの人は本当に貴族なのかと疑った。
「で、でも……私は主人から見初められて嫁いだのよ! 私の生家は一代男爵家だし、縁戚になったとしても何の利益もないはずだわ! 貴族だって愛のある結婚はするわよ!」
「別に貴族が全員愛の無い結婚をしているとは言っておりません。愛の無い政略結婚も義務として受け入れていると言っただけです。それと、ミスティ子爵は政略結婚を選ばずとも財を維持できる手腕をお持ちなのでしょう。政略を結ぶ必要性を感じないのであればご自分が好意を寄せた女性を妻にすることも可能です」
ミスティ子爵はこの人の何が良くて妻にしたのか……やっぱり顔だろうか。
ここまで常識も礼儀作法もなっていない女性をよく見初めたものだと感心してしまう。
「ご存知かと思いますが、フレン伯爵家は先代の浪費や目ぼしい産業が無かったせいで代々赤字続きです。旦那様もそれを承知しておりますので資産家のご令嬢を娶っておりました。奥方の生家に支援してもらい、その時は持ち直したようですが……離婚後はやはり元の状態に戻ってしまったようですね。資金繰りに奔走する旦那様の心労は如何ほどでしょう……。領民達も苦しい生活を強いられて可哀想です」
こうやって口にすると段々腹が立ってきた。
離婚さえしなければ奥方の家の支援で領民達の生活は安定していたかもしれないのに、離婚によってそれが振り出しに戻っていたのだから。幼馴染達の非常識で余計な行動のせいで一番振り回されて犠牲になったのは領民達だ。
離婚したからこそシスティーナがレイモンドの妻になれたのだが、それはそれ、これはこれ。領民達を振り回して苦しい生活をさせたことは許しがたい。
「ところで夫人、先程フレン伯爵である我が夫の妻になりたい方が沢山いるとおっしゃいましたが……それってどちらにいらっしゃるの? 社交界では誰も嫁ぎたがらないほど悪評が広まってしまったフレン家に嫁入りしたいというお嬢様はどちらに?」
「え………………? あ……それは……」
狼狽える子爵夫人だが目線はしっかりパメラの方を向いている。
「沢山、とおっしゃるからには複数人いるはずですよね? そのような家や未婚のご令嬢の話は聞いたことがないのですけどね……」
どうせ嘘でしょう、と言わんばかりの表情で煽れば分かり易くカッとなった。
「こちらにおりますパメラお従姉様です! それと同じく伯爵様の幼馴染でいらっしゃるアリー様とメグ様も! 皆様ずっと昔から伯爵様のことが好きだったのですよ!? それを貴方が横から攫うような真似をして……!」
いきなり恋心を暴露されたパメラは驚愕した顔を子爵夫人へと向けた。
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