どうして許されると思ったの?

わらびもち

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叱責

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「どういうつもりだ、エルザ!」
 
 夫である子爵の叱責に子爵夫人は怯えてビクッと身を震わせる。
 茶会の場から強制的に執務室へと連れて行かれた夫人を待っていたのは夫からの説教だった。

「どう……と言われましても、フレン伯爵夫人に無礼を働いたのは私ではなくパメラお従姉様なので……」

「だから自分は悪くないと? その無礼な女を招き入れたのは誰だ?」

「わ……私ですが、まさかあのような真似をするとは思ってもみませんでしたし……」

「そういう問題ではない! フレン伯爵夫人にあのような礼儀作法のなっていない者
を近づけること自体が問題なのだ! 立場を弁えぬ愚か者を茶席に招いたのはお前だろう? ならばお前の責任だ! だいたいどうしてあのような無礼者まで同席させる必要があった?」

「そ、それは……えっと……」

 夫の鋭い眼光に夫人は身をすくませた。
 パメラを茶席に招いたのはシスティーナへの嫌がらせの為なのだが、正直にそれを言えばますます夫の怒りに火をつけることだろう。

「それよりあなたはどうしてあの場にいらしたの? 今日はお仕事で外出の予定だったのに……」

「話を逸らすな……と言いたいところだが、お前はどうして僕があの場に来たのか本気で分かっていないのか?」

「え…………?」

 キョトンとする妻に子爵は軽蔑した表情でため息をついた。
 その態度に夫人は自分が侮辱されていると分かり羞恥で顔を真っ赤に染める。

「メイドからお前がフレン伯爵夫人を招いたと聞いたからだ。だからご挨拶を、と思って仕事を中断して行ってみれば頭のおかしい女が夫人に狼藉を働こうとしている場に出くわしたというわけだ」

「え……? ど、どうしてあなたが挨拶を? 今まで私のお客様に挨拶なんてしたことないじゃないの……?」

 まさかあの女フレン伯爵夫人に好意をもったの……!?

 愕然とする夫人に子爵はますます呆れて冷たい視線を送る。
 それはまるで「お前は何も分かっていない」とでも言わんばかりの目だ。

「お前の客人? 過去のお前の客人は皆下位貴族出の令嬢ばかりだったではないか。フレン伯爵の前妻もそうだった。何の旨味のない下位貴族の令嬢に挨拶などして何になる? 現フレン伯爵夫人だからこそ挨拶する意味がある。何せ彼女は天下のベロア家の姫君だ。上手くいけばベロア侯爵とお近づきになれるかもしれない。それがどれだけの利益につながるか本気で分からないのか?」

 夫の問いかけに「分からない」と言いたげに視線を泳がす夫人。
 妻のそんな表情に子爵はまた盛大にため息をついた。

「……情けない。貿易で財を成したこのミスティ子爵家の女主人でありながら、ベロア侯爵とお近づきになれる幸運を理解していないとは……。やはりお前のような教養の無い女を妻にするのではなかった……」

「………………っ!!」

 夫の発言に悔しそうに唇を噛みしめる夫人。
 言い返したいが言い返せない。そうしたところでますます蔑まれるだけだから。
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