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助けてくれたのは……
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「大丈夫でしたか? お怪我はございませんか?」
システィーナの前に颯爽と現れ、彼女の代わりに頭からお茶を被った人物が距離を取ったうえで頭を下げてくる。
自分にかかったお茶の飛沫がシスティーナに飛ばないよう配慮してくれているようだ。
「ええ、大丈夫です。あの、貴方様の方こそ大丈夫ですか?」
お茶は冷めていたから火傷の心配は無いと思うが、服にはお茶の染みが広がっていた。
「ええ、ご心配には及びません。貴女様が無事ならばそれに越したことはありません。失礼ながらフレン伯爵夫人でいらっしゃいますか?」
「はい、さようでございます。あの……貴方様は?」
「私は当家の主人、リチャード・ミスティにございます。本日はフレン伯爵夫人がいらっしゃると聞きましたのでご挨拶を、と思ったのですが……」
システィーナを庇ってくれた人物は夫人の夫のミスティ子爵だったようだ。
子爵はシスティーナに向けていたにこやかな表情から一変、険しい顔で背後にいるパメラを睨みつける。
「ひっ……!? あ、あの……これは……」
流石に不味いと思ったパメラは慌てて誤魔化そうとしたが無駄だった。
システィーナにお茶をかけようとした場面はしっかり子爵に見られてしまっている。
何ならその時の鬼の形相すら目撃されているので言い逃れなど出来ようもない。
「……この狼藉者を邸から摘まみだせ」
子爵は自分の護衛騎士にパメラをこの場から追い出すように命じた。
それを受けた護衛騎士は「畏まりました」と一礼し、パメラの腕を乱暴に掴んだ。
「痛っ!? ちょっと何するの! 痛いじゃない!」
非難の声をあげるパメラに騎士は「煩い、静かにしろ」と一喝し、そのまま外へと無理やり連れて行く。
扱いが令嬢に対してのそれというより、もう完全に犯罪者に向けてのそれである。
「フレン伯爵夫人、この度は当家の茶会でご不快な思いをさせてしまい大変申し訳ございません。あらためてお詫びに伺いたいと存じます。お召し物が汚れてしまったかもしれませんので、今日のところはお帰り下さいますようお願い申し上げます」
深々と頭を下げる子爵にシスティーナは「分かりました」とだけ返す。
本来ならば謝罪やお詫びは茶会の主催者である夫人がすべきことなのだが、当の本人は呆気にとられたままその場に固まっていて役に立たない。
子爵はそんな妻に見向きもせず、手際よく使用人に土産の指示を出していた。
「当家の領地で採れました蜂蜜を用いたお酒をご用意いたしました。荷物になりますがよろしければどうぞお納めください。お口に合えば幸いです」
茶会の際に客人へ渡す手土産は主催者が用意すべきものなのだが、多分準備していなかったのだろう。先程子爵がメイドに小声で「おい、手土産は用意してあるのか?」と尋ねているのが聞こえてしまった。勿論メイドは沈痛な表情で首を横に振っていたが。
礼儀知らずの夫人に対して子爵は大分礼儀正しい。
てっきり夫である子爵も同じような人種かと思ったがそうではないようだ。
(それにしても疲れたわ……)
何だかどっと疲れてしまった。
茶会でここまでの疲労を感じたのは初めてだ。
価値観や常識がここまで違う相手と会話をするというのはここまで精神に負担がかかるものなのか。
システィーナの前に颯爽と現れ、彼女の代わりに頭からお茶を被った人物が距離を取ったうえで頭を下げてくる。
自分にかかったお茶の飛沫がシスティーナに飛ばないよう配慮してくれているようだ。
「ええ、大丈夫です。あの、貴方様の方こそ大丈夫ですか?」
お茶は冷めていたから火傷の心配は無いと思うが、服にはお茶の染みが広がっていた。
「ええ、ご心配には及びません。貴女様が無事ならばそれに越したことはありません。失礼ながらフレン伯爵夫人でいらっしゃいますか?」
「はい、さようでございます。あの……貴方様は?」
「私は当家の主人、リチャード・ミスティにございます。本日はフレン伯爵夫人がいらっしゃると聞きましたのでご挨拶を、と思ったのですが……」
システィーナを庇ってくれた人物は夫人の夫のミスティ子爵だったようだ。
子爵はシスティーナに向けていたにこやかな表情から一変、険しい顔で背後にいるパメラを睨みつける。
「ひっ……!? あ、あの……これは……」
流石に不味いと思ったパメラは慌てて誤魔化そうとしたが無駄だった。
システィーナにお茶をかけようとした場面はしっかり子爵に見られてしまっている。
何ならその時の鬼の形相すら目撃されているので言い逃れなど出来ようもない。
「……この狼藉者を邸から摘まみだせ」
子爵は自分の護衛騎士にパメラをこの場から追い出すように命じた。
それを受けた護衛騎士は「畏まりました」と一礼し、パメラの腕を乱暴に掴んだ。
「痛っ!? ちょっと何するの! 痛いじゃない!」
非難の声をあげるパメラに騎士は「煩い、静かにしろ」と一喝し、そのまま外へと無理やり連れて行く。
扱いが令嬢に対してのそれというより、もう完全に犯罪者に向けてのそれである。
「フレン伯爵夫人、この度は当家の茶会でご不快な思いをさせてしまい大変申し訳ございません。あらためてお詫びに伺いたいと存じます。お召し物が汚れてしまったかもしれませんので、今日のところはお帰り下さいますようお願い申し上げます」
深々と頭を下げる子爵にシスティーナは「分かりました」とだけ返す。
本来ならば謝罪やお詫びは茶会の主催者である夫人がすべきことなのだが、当の本人は呆気にとられたままその場に固まっていて役に立たない。
子爵はそんな妻に見向きもせず、手際よく使用人に土産の指示を出していた。
「当家の領地で採れました蜂蜜を用いたお酒をご用意いたしました。荷物になりますがよろしければどうぞお納めください。お口に合えば幸いです」
茶会の際に客人へ渡す手土産は主催者が用意すべきものなのだが、多分準備していなかったのだろう。先程子爵がメイドに小声で「おい、手土産は用意してあるのか?」と尋ねているのが聞こえてしまった。勿論メイドは沈痛な表情で首を横に振っていたが。
礼儀知らずの夫人に対して子爵は大分礼儀正しい。
てっきり夫である子爵も同じような人種かと思ったがそうではないようだ。
(それにしても疲れたわ……)
何だかどっと疲れてしまった。
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