【完結】俺のばあちゃんがBL小説家なんだが ライト文芸大賞【奨励賞】

桐乃乱

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第一章

【五】月子―腐女子の結界②

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「星夜のお父さんが渡米するから、海人はお祖母ちゃんと暮らすことになった。俺たちと同じ高校に編入してくるって!」
「よかったね、お兄ちゃん。星夜君と親友だったもんね」

 海人お兄ちゃんは、自分の容姿や人気に嫉妬したり、嫌みを言う馬鹿な男の子にうんざりしていた。マイペースな星夜君は萩野家の日本庭園でお祖母さまの点てたお抹茶を飲むのが大好きだった。
 お祖母さまにも気に入られていた、父親がエリートの友達……。

 彼はどんな若者に成長したのかしら。都会のセンスが染みついたクソ生意気な男になってたら、きっとお兄ちゃんはがっかりするだろうな……。


 私たち兄妹が通う『私立紅葉学園』は、金持ち家庭の生徒が七割、一般家庭の生徒が二割の、地元では有名な中高一貫校だ。
 残りの一割は海外のボンボンが気まぐれに留学してくる。


 二割の生徒は学業が優秀な特待生。姉妹校の『青葉学園』の生徒と共に『青葉大学』へエスカレーター式に進学する生徒が多く、卒業後は県内の経済を支えている実家の企業へ入社する。要するに、ボンボンネットワークがここで培われる訳だ。

 既に見合いをして婚約しているカップルもいて、私が一番仲のいい幼なじみも一年後に結婚式が予定されている。私はブライズメイド、お兄ちゃんはアッシャーを頼まれている。安心して。新郎は海人兄ちゃんと違う、クールガイタイプなのよ。

「星夜、こっち、こっち!」

 弾んだ兄の声に、女子生徒達が反応した。

「わあ、萩野くん。今日もイケメン~」
「顔の造作が神レベルだよね」
「あの泣きぼくろがいいの!」

 いいの=エロいって事ですよね。海人兄ちゃんは坂道を駆けだした。珍しい。

「海人、久しぶり!」

 クラス分けの掲示板の前でウロチョロしているイケメンは、なんと星夜君だった。私と同じ身長だったのに、三年間で三十センチ以上伸びていた。やや前髪は長めだけど、都会の洒落た美容院でカットしたと見える。
 おぬし、モテ男を目指しているのか?

 でもあら、おでこにニキビ発見。それに目の下に隈まであるわ。肌のメンテナンスはイマイチね。
 挨拶を交わしたら、昔と変わらない星夜君だった。発音も仙台なまりのままだ。

「そうだ、三人でLINグループ作ろうぜ!」
「俺、学校にはスマホ持って来てないんだ」
「ブハッ。何でだよ。中学生じゃないんだから、休み時間にゲームとかできるじゃん」
「俺は、卒業まで持ってこない。だから帰ってから連絡するよ」
「星夜……お前、転校先で何かあったのか?」

 星夜君は転校してからも、ずっとスマホを持っていなかった。お兄ちゃんが星夜君の自宅へ数回電話をした際、私にこぼしていた。

『あいつ、学校の勉強についていくのが大変で、親にスマホを禁止されてるんだって。高校になるまで買ってもらえないって愚痴ってたな……』
 
 私は海人兄ちゃんと視線を交わした。ここで離す内容じゃない。

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