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25.モブ悪役令嬢からの大出世コースに乗りました?
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イザークは、全キャラを攻略した後に攻略可能になる隠しキャラだ。
公国に未知の病が蔓延し、民たちを助けるため一縷の望みをかけて、聖女を探すと決めたイザーク。
黒猫の姿だったのは、人にしか感染しない病から逃れるため、一族に伝わる秘術で変化していたからだ。
アクイレギア聖教国に婿入りする予定だった彼は、亡くなったと思われていたマリアの元に奇跡的に辿り着いた。アンナマリアは母親とそっくりなので、顔を見たらすぐにわかったらしい。まぁ、この辺はゲーム的には愛の力というやつなのだろう。
だけど、魔力を使いすぎたイザークは、回復するまで人間の姿に戻れなくなっていた。
黒猫姿のままアンナマリアと接触し、彼女の優しさや孤独を知った結果、己の望みはマリアとして生きる彼女の平和な日常を壊すものだと悟り、葛藤するイザーク。
やがて魔力が回復し、こっそりと元の姿に戻ったイザーク。
しかし、体内に潜伏していた病に侵されてしまい――――
(隠しルートなだけあって、マリアの出自への言及が一番多かったんだよね。イザークはあんま好みじゃないけど、シナリオが面白かったお陰で内容はしっかり思い出せたわ)
この世界で生きているイザークも、苦労してマリアの元に辿り着いたんだろう。
けど、その後に取った手段がよくない。
誘拐ダメ絶対。大いに反省して欲しい。
◇◇◇
「……だから、君の力がすぐにでも必要なんだ!ボクと一緒に来てくれ!!」
ゲームのシナリオとほぼ同じ内容を語ったイザークは、マリアに必死で頼み込んでいる。
「私の力で助かる人がいるなら、この力を役立てたいです。でも、私はハルモニア王国の皆様にお世話になっているので、国王陛下の許可なく動くことはできません」
「聖女の君は、そんな些事にとらわれないでくれ!ボクらは生まれる前から女神に定められた運命の相手で、婚約者なのだから。こんな国の王族の言うことなんて、聞く必要はない!!」
なりふり構っていられない状況なのはわかる。
けど、どうしても聞き捨てならない発言が出たので、全力で首を突っ込むと決めた。
「マリアがこの人と婚約しなくても、ナダル公国の民を救うことは出来るわ。この人が公子として、ハルモニア王家に正式に協力を要請して、陛下が応じればマリアに話が行くでしょう」
「だ、だがしかし、我が国とアクイレギア聖教国の関係は……」
「ここに居るのはハルモニア王国のマリア・クラウト伯爵令嬢で、アンナマリア王女ではありません。ナダル公国とアクイレギア聖教国の関係など持ち出されても、彼女には無関係の事です」
「そんな……ッ!」
別にイザークと婚約しなくても、既に神聖力を覚醒させたマリアなら民を癒すことが出来る。
そう伝えてもなお、「婚約者」としての立場を前面に押し出して食い下がって来るということは、イザークはマリアを公妃として迎えたいのだろう。公国もマリアの引き渡しを要求してくるに違いない。
けど、そこにマリアの意思が欠片も反映されていないなら、私は絶対にこの子を行かせない。
「ナダル公子。マリアを求めるなら彼女の意思を尊重し、隠し事も嘘偽りもなく全てを打ち明けた上で乞わなければ、私たちは絶対にマリアをあなたの元へは行かせません。例え本人が望んだとしても」
「ぐっ……」
「マリアは優しい子です。両親と引き離されて、貴族ばかりの学園に入れられて、慣れない環境で精一杯頑張っていました。きっと、周囲の期待に応えたいからなのでしょう。そんな子に、見ず知らずの国の民の命を背負わせるようなことを、言わないでください。引き受けても断っても、マリアにはとっては大きな負担に違いありません」
マリアが自分で考えて決めたことなら、私は止めない。例えマリアが辛い目に遭うとしても。その上で、行くのであればマリア自身が心から納得した上で赴いて欲しいと思う。
「そうか……今代の聖女には、女神の導き手がついているのか。アンナマリアがここまで無事に生き延びられたのも、すべては女神の采配……ッ!」
「導き手?」
イザークがよくわからないことを言い出した。
(そんな設定、ゲームにあったっけ?システム面の細かいことは覚えてないなー。説明求む!)
◇◇◇
「女神アイグレイシスのいとし子は、全ての悪意から守られるという言い伝えがあります。謀反を企てたアクイレギアの王弟も、いとし子を害したことで女神の怒りに触れ、神罰が下ったのです」
「守られてるというなら、そもそも最初から危険な目に遭わないものではなくて?」
「神とて、万能ではございません。神界と人界には隔たりがあるため、女神とてすぐには手出しできないのです」
女神がいとし子の危機を知り急いで駆けつけたとしても、既にいとし子が害された後だった……というのが、アクイレギア聖教国の滅びの顛末らしい。ここで言ういとし子は、マリアの母フレデリカ女王陛下のことを指す。
「そのため女神は、いとし子のアンナマリアを離れた場所からでも守り導くために、人界から相応しい人間を選定したのでしょう。貴女様は、聖女アンナマリアの元に女神が遣わした導き手ですね」
(えー、覚えてない!全ッ然覚えてない!ていうかそんな設定存在した?いわゆるヒロインのお助けキャラってこと?可愛いマスコットキャラがやるべきなやつじゃん?いやでも、親友キャラがやたらとサポートしてくれるゲームもあったなぁ……)
「ヴィオ、だから君は、マリアのことを知っていたのだね」
「クリス様……あー、えっと、それはですね……」
「導き手は最初からそうと定められて生まれるのではなく、聖女の周囲の人間から最もふさわしい者が神託を授かるといいます。貴女様には女神より神託が下り、母国を遠く離れた地で生きていくマリアのために、導き手として目覚めたのでしょう」
「なるほどな。ヴィオレッタ嬢が頭を打ってそれまでの記憶を失ったのは、神託を授かった影響ってことか」
(無い設定のハズなのに、どんどん外堀が埋まってく!怖っ!)
2人の殿下は納得したようだけど、私には全くさっぱり心当たりがない!
ただ単に頭を打って前世の記憶を思い出しただけだし、神託なんて下ってない。
「ヴィオレッタ様は、私のせいで記憶を失ってしまったのですね……あとで、記憶の回復に私の神聖力が効くか、試してみてもいいですか……?」
「そんな、勿体ないわ。そもそも私が導き手だなんて……何かの間違いじゃないかしら」
導き手なんて言われてもピンとこない。
それに、記憶を失ったのは中の人が変わったせいだ。マリアのせいでは絶対にない。
(むしろ、中の人は私に変わっちゃったけど、ヴィオレッタの命がギリギリ繋がったのは女神の采配……ってやつ?導き手のヴィオレッタが不慮の事故で失われかけたから、急遽他の魂を器に入れた……みたいな?あくまで私の推測というか、妄想みたいなものだけど)
「ヴィオレッタ様が私のことを守ってくれて、慈しんでくださったからこそ、私は神聖力の使い方を理解したのです。ヴィオレッタ様が導き手で間違いありません!」
「マリア!?」
(えぇー!?聖女のマリアが断言したら、これ以上否定するのは無理じゃない?)
「マ、マリア。貴女は私だけが助けたわけじゃないのよ?クリス様もカイル様も、アレクシス殿下もいるじゃない」
「それはわかっています。けど、私の暴走を止めてくれたのはヴィオレッタ様です」
「マリアの言う通りだ、ヴィオレッタ嬢。君だけが、神聖力に当てられても怯まずマリアに近付けた。導き手として、耐性があるんだろう」
「アレクシス殿下まで……!」
外堀がどんどん埋まっていって、もう私には止められる気がしない。
「ヴィオレッタ様。私、ヴィオレッタ様のことが大好きです!クリス様に負けないくらい!だから、これからもお傍にいさせてください」
「ちょ、ちょっと待ってマリア、そこで僕の名前を出すの!?」
「もー殿下ってば、勢いでは完全に負けてますよ」
(たまたま前世の記憶を思い出しただけで、魔力も神聖力もないのに……!)
かくして私は、二人の王子殿下と聖女と他国の公子公認の元、女神の導き手という謎の役職?に就任?することとなった。
公国に未知の病が蔓延し、民たちを助けるため一縷の望みをかけて、聖女を探すと決めたイザーク。
黒猫の姿だったのは、人にしか感染しない病から逃れるため、一族に伝わる秘術で変化していたからだ。
アクイレギア聖教国に婿入りする予定だった彼は、亡くなったと思われていたマリアの元に奇跡的に辿り着いた。アンナマリアは母親とそっくりなので、顔を見たらすぐにわかったらしい。まぁ、この辺はゲーム的には愛の力というやつなのだろう。
だけど、魔力を使いすぎたイザークは、回復するまで人間の姿に戻れなくなっていた。
黒猫姿のままアンナマリアと接触し、彼女の優しさや孤独を知った結果、己の望みはマリアとして生きる彼女の平和な日常を壊すものだと悟り、葛藤するイザーク。
やがて魔力が回復し、こっそりと元の姿に戻ったイザーク。
しかし、体内に潜伏していた病に侵されてしまい――――
(隠しルートなだけあって、マリアの出自への言及が一番多かったんだよね。イザークはあんま好みじゃないけど、シナリオが面白かったお陰で内容はしっかり思い出せたわ)
この世界で生きているイザークも、苦労してマリアの元に辿り着いたんだろう。
けど、その後に取った手段がよくない。
誘拐ダメ絶対。大いに反省して欲しい。
◇◇◇
「……だから、君の力がすぐにでも必要なんだ!ボクと一緒に来てくれ!!」
ゲームのシナリオとほぼ同じ内容を語ったイザークは、マリアに必死で頼み込んでいる。
「私の力で助かる人がいるなら、この力を役立てたいです。でも、私はハルモニア王国の皆様にお世話になっているので、国王陛下の許可なく動くことはできません」
「聖女の君は、そんな些事にとらわれないでくれ!ボクらは生まれる前から女神に定められた運命の相手で、婚約者なのだから。こんな国の王族の言うことなんて、聞く必要はない!!」
なりふり構っていられない状況なのはわかる。
けど、どうしても聞き捨てならない発言が出たので、全力で首を突っ込むと決めた。
「マリアがこの人と婚約しなくても、ナダル公国の民を救うことは出来るわ。この人が公子として、ハルモニア王家に正式に協力を要請して、陛下が応じればマリアに話が行くでしょう」
「だ、だがしかし、我が国とアクイレギア聖教国の関係は……」
「ここに居るのはハルモニア王国のマリア・クラウト伯爵令嬢で、アンナマリア王女ではありません。ナダル公国とアクイレギア聖教国の関係など持ち出されても、彼女には無関係の事です」
「そんな……ッ!」
別にイザークと婚約しなくても、既に神聖力を覚醒させたマリアなら民を癒すことが出来る。
そう伝えてもなお、「婚約者」としての立場を前面に押し出して食い下がって来るということは、イザークはマリアを公妃として迎えたいのだろう。公国もマリアの引き渡しを要求してくるに違いない。
けど、そこにマリアの意思が欠片も反映されていないなら、私は絶対にこの子を行かせない。
「ナダル公子。マリアを求めるなら彼女の意思を尊重し、隠し事も嘘偽りもなく全てを打ち明けた上で乞わなければ、私たちは絶対にマリアをあなたの元へは行かせません。例え本人が望んだとしても」
「ぐっ……」
「マリアは優しい子です。両親と引き離されて、貴族ばかりの学園に入れられて、慣れない環境で精一杯頑張っていました。きっと、周囲の期待に応えたいからなのでしょう。そんな子に、見ず知らずの国の民の命を背負わせるようなことを、言わないでください。引き受けても断っても、マリアにはとっては大きな負担に違いありません」
マリアが自分で考えて決めたことなら、私は止めない。例えマリアが辛い目に遭うとしても。その上で、行くのであればマリア自身が心から納得した上で赴いて欲しいと思う。
「そうか……今代の聖女には、女神の導き手がついているのか。アンナマリアがここまで無事に生き延びられたのも、すべては女神の采配……ッ!」
「導き手?」
イザークがよくわからないことを言い出した。
(そんな設定、ゲームにあったっけ?システム面の細かいことは覚えてないなー。説明求む!)
◇◇◇
「女神アイグレイシスのいとし子は、全ての悪意から守られるという言い伝えがあります。謀反を企てたアクイレギアの王弟も、いとし子を害したことで女神の怒りに触れ、神罰が下ったのです」
「守られてるというなら、そもそも最初から危険な目に遭わないものではなくて?」
「神とて、万能ではございません。神界と人界には隔たりがあるため、女神とてすぐには手出しできないのです」
女神がいとし子の危機を知り急いで駆けつけたとしても、既にいとし子が害された後だった……というのが、アクイレギア聖教国の滅びの顛末らしい。ここで言ういとし子は、マリアの母フレデリカ女王陛下のことを指す。
「そのため女神は、いとし子のアンナマリアを離れた場所からでも守り導くために、人界から相応しい人間を選定したのでしょう。貴女様は、聖女アンナマリアの元に女神が遣わした導き手ですね」
(えー、覚えてない!全ッ然覚えてない!ていうかそんな設定存在した?いわゆるヒロインのお助けキャラってこと?可愛いマスコットキャラがやるべきなやつじゃん?いやでも、親友キャラがやたらとサポートしてくれるゲームもあったなぁ……)
「ヴィオ、だから君は、マリアのことを知っていたのだね」
「クリス様……あー、えっと、それはですね……」
「導き手は最初からそうと定められて生まれるのではなく、聖女の周囲の人間から最もふさわしい者が神託を授かるといいます。貴女様には女神より神託が下り、母国を遠く離れた地で生きていくマリアのために、導き手として目覚めたのでしょう」
「なるほどな。ヴィオレッタ嬢が頭を打ってそれまでの記憶を失ったのは、神託を授かった影響ってことか」
(無い設定のハズなのに、どんどん外堀が埋まってく!怖っ!)
2人の殿下は納得したようだけど、私には全くさっぱり心当たりがない!
ただ単に頭を打って前世の記憶を思い出しただけだし、神託なんて下ってない。
「ヴィオレッタ様は、私のせいで記憶を失ってしまったのですね……あとで、記憶の回復に私の神聖力が効くか、試してみてもいいですか……?」
「そんな、勿体ないわ。そもそも私が導き手だなんて……何かの間違いじゃないかしら」
導き手なんて言われてもピンとこない。
それに、記憶を失ったのは中の人が変わったせいだ。マリアのせいでは絶対にない。
(むしろ、中の人は私に変わっちゃったけど、ヴィオレッタの命がギリギリ繋がったのは女神の采配……ってやつ?導き手のヴィオレッタが不慮の事故で失われかけたから、急遽他の魂を器に入れた……みたいな?あくまで私の推測というか、妄想みたいなものだけど)
「ヴィオレッタ様が私のことを守ってくれて、慈しんでくださったからこそ、私は神聖力の使い方を理解したのです。ヴィオレッタ様が導き手で間違いありません!」
「マリア!?」
(えぇー!?聖女のマリアが断言したら、これ以上否定するのは無理じゃない?)
「マ、マリア。貴女は私だけが助けたわけじゃないのよ?クリス様もカイル様も、アレクシス殿下もいるじゃない」
「それはわかっています。けど、私の暴走を止めてくれたのはヴィオレッタ様です」
「マリアの言う通りだ、ヴィオレッタ嬢。君だけが、神聖力に当てられても怯まずマリアに近付けた。導き手として、耐性があるんだろう」
「アレクシス殿下まで……!」
外堀がどんどん埋まっていって、もう私には止められる気がしない。
「ヴィオレッタ様。私、ヴィオレッタ様のことが大好きです!クリス様に負けないくらい!だから、これからもお傍にいさせてください」
「ちょ、ちょっと待ってマリア、そこで僕の名前を出すの!?」
「もー殿下ってば、勢いでは完全に負けてますよ」
(たまたま前世の記憶を思い出しただけで、魔力も神聖力もないのに……!)
かくして私は、二人の王子殿下と聖女と他国の公子公認の元、女神の導き手という謎の役職?に就任?することとなった。
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