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4幕 家守の鏡
16 謎かけの虎
しおりを挟む「銀嶺!」
天祐は叫んだ。
安が碧玉とともに崖から落ちるのを見て、式神を呼びだそうと呪符を取り出す。ヤモリの群れの気味の悪さに動揺している場合ではないというのに、ひるんだ自分を呪った。
天祐の後ろのほうでも白家の道士達が動く気配がしたが、眉が白い黄虎が天祐の前に立ちふさがると、なぜかその場から動けなくなった。
「我は白眉。この〈深山〉の主である。皆、我と問答を終えるまで、その場を離れられぬと思え」
白眉の言葉には場を支配する響きがあった。
おかげで天祐は式神を呼びだすこともできず、目の前の巨体を持つ黄虎を前にして、無防備に立っているしかない。
問答と聞いて、天祐は思い出した。
「まさかお前が謎かけの虎か?」
「左様。やれやれ、その憎たらしい白い衣をまた見る羽目になるとは。お前の先祖との古き約束により、我は好き勝手に人間を喰えなくなったのだ。おかげで、謎かけをして答えられた者は見逃さねばならぬ」
うんざりとため息をこぼす声は、どこか艶めかしい。
虎は雄のほうが体が大きいので、てっきり雄かと思ったが、この声色では雌のようだ。
「それだけでも腹立たしいのに、桃領内の妖邪を管理せよとまで……。図々しい男であった。道術でねじ伏せられなければ、このように窮屈に生きずに済んだものを」
よほど鬱憤がたまっているらしく、白眉はぶつぶつと文句を連ねる。
「その約束というもののせいで、桃家の者の命令を聞いているのか?」
天祐が問うと、白眉はふんと鼻を鳴らした。
「はあ、あれのことを聞いているのか? あれは……桃安であり、桃安ではない。しかし我を縛る者でもあるゆえ、呼ばれれば応えねばならぬ」
白眉は意味のわからないことを言い、不満げに前脚で地面を叩いた。
「我とて不本意ではあるが、約束がある。我はお前達に問いかけ、お前達は答えよ。問を間違えたら、私の晩飯となってもらおう。これほど多いと、しばらく楽しめそうだな」
白眉は天祐達を見回して、舌なめずりをした。
どうやらこの黄虎は桃領となんらかの取引をしているだけで、本質は獣であるらしい。
(恐らく、白明鏡を作ったという白家のご先祖様のことだろうな)
ここに至るまでに見聞きしたことから、天祐はそう判断した。
「いいだろう。さっさと問いかけをしろ」
「おい、天祐殿? そんな妖怪の口車にのせられるべきではないだろう」
紫曜が焦って口を挟んだが、天祐はそちらを振り返る。
「どうせ問答を終えるまで離れられないなら、さっさと問答を済ませたほうがいいでしょう。私は銀嶺を探しに行かねばなりません」
「分かった。だが、白眉殿。我らが相談するのは許してほしい。命運を一人に持たせるのは、気持ち的にはばかられる」
紫曜が交渉に出ると、白眉は頷いた。
「ああ、好きなだけ相談するがよい。同じ命運を歩むのだ。それくらいの慈悲は見せようではないか」
「感謝する」
紫曜は礼儀を示して拱手をすると、ため息をついた。
「この場に銀嶺がいないのが悔やまれる。なんだかんだ、この中ではあいつが一番賢い」
紫曜がこぼすと、白家と黒家の者達はそろって頷いた。空気に悲壮感が漂う。
「紫曜殿、失礼な。こちらには崔師父もいらっしゃるんですよ!」
天祐が白家の者達を振り返ると、白蓮は苦笑した。
「はは、微才ながら努力いたします。しかし、そこは白宗主が名乗り出るべきでは?」
「私は道術には詳しいですが、興味がないことはどうも……」
天祐が正直に打ち明けるので、場がざわついた。
白眉はタシッと前脚で地面を叩く。
「文句を言いあうのは、我の問いかけを聞いてからにせよ」
騒いでいた面々はぴたりと口を閉じる。
白眉は満足げに目を細め、問いを口にした。
「では、我は問う。昨日、山の上で死んだ牛が、今日は山の下にある村を歩いている。これはなぜか」
白眉の出した謎かけに、天祐達は視線をかわした。
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後書き
世界のなぞなぞを参考に、ちょっと文言をアレンジしてみました。
よかったら考えてみてね。
というわけで、短いけどここで切ります。
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