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アリスティア編
破綻した家族
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母と父の生活が破綻したのは、私が5才の誕生日。
誕生日会を終え、片付けをしている母の元に父が愛人と子供を連れてあるお願いごとをしにきたのだ。
「約束が違うわ。オーウェン。貴方に言ったはずよ。分不相応な願いは聞けないと、なのに何故、彼女と子供を公爵家に招いたの?今日は、貴方のご両親や私の父である公爵もいるのよ。正気の沙汰ではないわ。貴方、この頃変だわ。目を覚まして、元の優しいオーウェンに戻って」
「君に無理を言っているのは解っている。でも、私の娘として公爵家の籍に入れて欲しいだけなんだ。そんな事位叶えてくれてもいいだろう。今までだって、君の希望は叶えたし、これからだって君の言うとおりにする。たった一つの頼みも聞き届けて貰えない程、君にとって私は価値がないのか」
「そんな事を言っているのではないわ。クロムウェル公爵家がどういう家なのか、親戚筋の貴方だって知っているでしょう。他の貴族とは違うのよ。王家の血筋を汚したと罪人扱いにされるのは貴方なのよ」
「何故、私を愛してくれるのはマリエルとエリーゼだけなんだ。その家族を守りたい気持ちを汲んでくれないのだな。これ程、君に全てを犠牲にして尽している私を」
「どうしたの?何が遭ってそんな事をいうのよ」
「聞いたんだ。君が別邸の使用人らにあることない事吹き込んで、マリエルを傷つけている事を。私は全て知っているんだからな」
「何を勘違いしているのか知らないけれど、今日はもうこのまま帰って、これ以上話す事はないわ。早く帰って、父に見つかったら、貴方はもうおしまいよ」
母の懇願に父は拳をグッと握りしめ、踵を返して扉の方に足を向けていた。私は部屋の前で魔女と出会った。
魔女は、その厭らしい微笑みを見せながら、長い爪を私の顔に近付けてくる。その忌まわしい爪や表情があの日の出来事を記憶の底から甦らせる。
---ああ、貴女はなんてオーウェンに似ているの。その赤い髪とエメラルドの瞳が無ければ生き写しなのに残念ね。あの澄ました憎らしい女にそっくりよ!---
頭の中で繰り返される呪文。
私はそれを振り払う様に大声で
「貴方は、私の父ではない!偽物の癖に堂々と公爵家に居座って、お母様を悲しませた。さっさと出て行きなさい!薄汚いの女とその連れ子を連れて!」
私の叫び声の様な怒鳴り声を聞き付けた祖父たちが慌てて応接室にやって来た。
母も父も驚愕している。5才の子供がまさかこんな事を言うとは思わなかったのだろう。父はカッとなって手を振り上げた。しかし、その手よりも傍にいた母の方が早く、父が振り落した掌は母の頬を直撃した。
そして、駆け付けた祖父や伯爵家の祖父母に見られたのだ。母を殴った父の姿を。愛人と連れ子を公爵家の跡取りのお披露目の誕生会に連れてきて、騒ぎを起こした事を知られたのだ。
「何があったんだ。アデライト」
祖父が母に駆け寄りながら訊ねたが、母は口を噤んでいる。
「どういう事か説明しろ!オーウェン!!事と次第ではただではおかんぞ!その女はなんだ。どうしてここに居るんだ。別れたはずだろう」
「それにその子は誰?」
父は両親に追及されたが、しどろもどろに答えている。代わりに魔女が
「私とオーウェン様との子供です」
それを聞いた伯爵家の皆は青くなった。
「そ…そんな、ありえないわ」
伯爵家の祖父母は顔を見合わせて、何か言っている。
その後、父と母は祖父らと一緒に別の部屋に行ったのだ。どうなったかは私は聞かされていない。
けれど、その日を境に父は公爵家に足を踏み入れる事はなかった。
母が余命わずかと知っていたのかどうかは知らないが、母が亡くなって3か月後に愛人と子供と一緒に帰って来るまでは。
誕生日会を終え、片付けをしている母の元に父が愛人と子供を連れてあるお願いごとをしにきたのだ。
「約束が違うわ。オーウェン。貴方に言ったはずよ。分不相応な願いは聞けないと、なのに何故、彼女と子供を公爵家に招いたの?今日は、貴方のご両親や私の父である公爵もいるのよ。正気の沙汰ではないわ。貴方、この頃変だわ。目を覚まして、元の優しいオーウェンに戻って」
「君に無理を言っているのは解っている。でも、私の娘として公爵家の籍に入れて欲しいだけなんだ。そんな事位叶えてくれてもいいだろう。今までだって、君の希望は叶えたし、これからだって君の言うとおりにする。たった一つの頼みも聞き届けて貰えない程、君にとって私は価値がないのか」
「そんな事を言っているのではないわ。クロムウェル公爵家がどういう家なのか、親戚筋の貴方だって知っているでしょう。他の貴族とは違うのよ。王家の血筋を汚したと罪人扱いにされるのは貴方なのよ」
「何故、私を愛してくれるのはマリエルとエリーゼだけなんだ。その家族を守りたい気持ちを汲んでくれないのだな。これ程、君に全てを犠牲にして尽している私を」
「どうしたの?何が遭ってそんな事をいうのよ」
「聞いたんだ。君が別邸の使用人らにあることない事吹き込んで、マリエルを傷つけている事を。私は全て知っているんだからな」
「何を勘違いしているのか知らないけれど、今日はもうこのまま帰って、これ以上話す事はないわ。早く帰って、父に見つかったら、貴方はもうおしまいよ」
母の懇願に父は拳をグッと握りしめ、踵を返して扉の方に足を向けていた。私は部屋の前で魔女と出会った。
魔女は、その厭らしい微笑みを見せながら、長い爪を私の顔に近付けてくる。その忌まわしい爪や表情があの日の出来事を記憶の底から甦らせる。
---ああ、貴女はなんてオーウェンに似ているの。その赤い髪とエメラルドの瞳が無ければ生き写しなのに残念ね。あの澄ました憎らしい女にそっくりよ!---
頭の中で繰り返される呪文。
私はそれを振り払う様に大声で
「貴方は、私の父ではない!偽物の癖に堂々と公爵家に居座って、お母様を悲しませた。さっさと出て行きなさい!薄汚いの女とその連れ子を連れて!」
私の叫び声の様な怒鳴り声を聞き付けた祖父たちが慌てて応接室にやって来た。
母も父も驚愕している。5才の子供がまさかこんな事を言うとは思わなかったのだろう。父はカッとなって手を振り上げた。しかし、その手よりも傍にいた母の方が早く、父が振り落した掌は母の頬を直撃した。
そして、駆け付けた祖父や伯爵家の祖父母に見られたのだ。母を殴った父の姿を。愛人と連れ子を公爵家の跡取りのお披露目の誕生会に連れてきて、騒ぎを起こした事を知られたのだ。
「何があったんだ。アデライト」
祖父が母に駆け寄りながら訊ねたが、母は口を噤んでいる。
「どういう事か説明しろ!オーウェン!!事と次第ではただではおかんぞ!その女はなんだ。どうしてここに居るんだ。別れたはずだろう」
「それにその子は誰?」
父は両親に追及されたが、しどろもどろに答えている。代わりに魔女が
「私とオーウェン様との子供です」
それを聞いた伯爵家の皆は青くなった。
「そ…そんな、ありえないわ」
伯爵家の祖父母は顔を見合わせて、何か言っている。
その後、父と母は祖父らと一緒に別の部屋に行ったのだ。どうなったかは私は聞かされていない。
けれど、その日を境に父は公爵家に足を踏み入れる事はなかった。
母が余命わずかと知っていたのかどうかは知らないが、母が亡くなって3か月後に愛人と子供と一緒に帰って来るまでは。
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