『選ばれし乙女』ではありませんが、私で良いのでしょうか?私、地味で目立たない風属性ですよ?

ミミリン

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風魔法でも出来る事

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私はセレナ=クイーズ18歳の未婚女性。


一応貴族だけど、没落寸前まで落ちた男爵家の令嬢だ。

家族は両親と4つ違いの弟がいる。

家族間は仲が良くて貧しいながらも慎ましく平和に暮らせていた。

けど、2年前の大洪水で領地に大きな被害を受けてしまい復興しようにも財源がなく、領民共々路頭に迷うような騒ぎになってしまった。

というか、何故この領地がここまで貧しくなったのかって思いますよね?


それは父の兄私の叔父が隠れて借金を膨らまし、私の父が肩代わりしたから。


借金を返済すると言っていた叔父は行方をくらまし、連絡もよこさない。


私が領民なら暴動を起こすところだけれど、皆父に恩義があると言って苦労を共にすることを選んでくれた。


私も領主の娘として微力ながら出来ることを行っていた。


そこまで膨大な魔力は持っていないけど、女性にしてはそこそこ自慢できる程度の魔力はある。

といっても風魔法だからとても地味。


この国で重宝されるのはやっぱり水魔法だ。


その次が火魔法である。

風魔法はあたりかハズレで言えばハズレの属性と思われてしまうくらい地味なのだ。

それでも魔力があるだけありがたいわ。

領地の作物が育つように風通しを良くしたり、風車を作って農具の力動に応用させたりとささやかな支援をしてきた。

それと、貴族だからといって働けないわけではない。


私の風魔法を生かせる職種がこの国にはあったのだ。


その仕事というのは運送屋。


人力で配達などものを運んで届ける方法が一般的だけど、途中で紛失したり開封されてしまう恐れがある。


大切な伝達は魔力で文を飛ばし、途中で関係のない人間に見つかれば読まれる前に魔法で破壊するという方法を好む人がいる。


そんな一部の需要にこたえる運送屋を私はさせてもらっている。


その中でも元軍人のお年寄りが仲間同士の連絡でこの方法を使うと喜ばれるらしい。
人の好みもそれぞれよね。


戦争が盛んな時代はこの魔力運送が活躍していたみたいだけど、今は平和な時代なのでこの方法が一般的ではない。けれど一定のお客様は定期的に私の運送を利用して下さるのだ。

商売として面白いのが、お客様が固定化されてくると次は要望も広がってくる。


みなさんありがたいことに温和で地位のある方々なので非常識な事は言ってこないが、かなり長距離の運送や運送した文の返信も頼まれるようになった。


こうなると、必要とされる魔力も必然的に多くなる。あまりにも魔力を使い果たして気絶しそうになる事もあるけど…


けど、その分手当も跳ね上がる訳で…。


色々動いてみて、自分なりに領地の復興のために出来る限り応じてきたのだ。



ああ、そうそう。

運送屋に関しては退役した方への挨拶文を運送だけでなく執筆代行してほしいリクエストもある。


これがまた、相手が同国の人とは限らない。
他国の方が相手ならその国の言語が必要となる。


公用語で良いよと言ってくださるけれど、挨拶の文ならやっぱり温かいものが良いのではないかと思い、先方の母国語で書いてみた。




それがとても喜んでいただけたのをきっかけに私の日課に語学学習が加わった。



そうやって領民と一緒になって復興を目指していたけれど、貧しさはなかなか改善できなかった。


このままだとみんな息切れしてしまう。

疲労から病を拾いやすくなる。

どうしよう…。

ここに『女神さまの水』があればどんなに良かったか。


『女神さまの水』とは傷を癒し土地を豊かにする水らしい。


この国も大昔は存在していたけど今は伝説になっている代物だ。


『女神さまの水』を発現させるには『選ばれし乙女』が必要らしくそれは代々水属性の魔力を持った女性らしい。


あと、一部の伝記には『女神さまの使者』という聖獣も選ばれし乙女と関連があるって書いてあったわね。



だからこの国の水属性はとても地位が高いと言う訳なの。


風属性の私は選ばれし乙女から完全除外なのでどんなに努力してもありがたい水を生み出す事出来ないのよ。




ないものを願うのは良くないわよね。



それに、今の私はそんな空想に浸っているほど余裕はないの。

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