『選ばれし乙女』ではありませんが、私で良いのでしょうか?私、地味で目立たない風属性ですよ?

ミミリン

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婚約者のお友達

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さて、学園での生活はおおむね楽しいと感じることが出来た。


本来貴族であれば上級クラスに入るのが通常らしいが、私はピーター様の希望で普通クラスに入室となった。


「俺のテリトリーを平民もどきに荒らされたくないんだよ。」
というコメント共に入室を言い渡された。


確かに普通クラスは一代貴族、騎士といった永続的な貴族は約束されていない家柄、貴族とのパイプを作りたい裕福な商家など上位貴族とは違う人たちが集まっている。


といっても、彼らは普通科でありながら世間一般では十分エリートであり頭脳や魔力など一定の合格ラインを越えて入学してるのだ。


初めは伯爵家の婚約者という私にみんなよそよそしかったが、魔法演習でかなり大きな岩を力技の風魔法で動かしたのを見て数名が友達になってくれた。


毎日毎日畑仕事で風車を動かしていたのがここで役になったのは何とも嬉しい気持ちだ。



「セレナ、今日は一緒に食堂でご飯を食べない?
今日はデザートにチェリーパイが出る日なのよ。ね、行きましょう?」


私を誘ってくれたのは父親が大きな商会を持つロレッタだ。


この学園の制服や衣服関係の素材も卸しているらしい。


「ロレッタ、チェリーパイって美味しいの?
私食べた事ないわ。」


「ふふふふ、この学園で出されるチェリーパイは有名なパティスリーが期間限定で作るそれはそれは美味しいパイなのよ。是非、食べに行きましょう!」


流石、商家の人は色々よく知っているなあと感心する。


食堂に着くと、上級クラスの人たちと時間が被ったようで席が埋まっていた。


「あ~ん、ちょっとついてないなあ。
けど、ここまで来たならチェリーパイを食べたいし。」

ロレッタは口をとがらせている。
その仕草が、小柄で童顔な彼女に似合ってすごく可愛らしかった。


あ…婚約者のピーター様が居る。


ピーター様は数名の男子生徒に囲まれて何やら話に盛り上がっていた。


悪趣味だが、少しだけ聞いてみたい。


我が婚約者はどんな会話をしているんだろう。


もし、何か自分と共通点があればもう少し建設的な関係を望めるのではないかと言い訳をして微量な風魔法をかけピーター様の場所のみ会話が自分の耳に入るようにした。


「おいピーター!お前最近調子乗ってるんじゃないか?
また新しい時計買ったんだって?この前も他国から取り寄せた時計買ったばかりじゃないか。
いいよなお坊ちゃまは。」


「まあな、色々あって今は両親のしばりが緩んでるんだ。
欲しかったものを買うタイミングが来たんだよ。」


「ああ、何か没落寸前の令嬢と婚約したんだってな。
全然一緒にないじゃんか。
ずっと俺らとつるんでて良いのかよ?」


「ああ、全く問題ない。
離れのコテージに住ませているから会う事もないしな。」


「まじかよ、じゃあ女連れ込んじゃってもバレないじゃん。
なあなあ、今度俺たち可愛いお友達連れてお前んち行かせてよ。
親がいないんなら酒飲んでもバレねえしさ。」


「ははは、まあ近々それも良いな。お前ら、ほっとにそういうの好きだよな。」


「まあなあ~この国の貴族に生まれた時点で俺ら勝ち組じゃん。楽しまなきゃ損だろ。」




そんな会話が耳に入って来る。


確かにご両親は領地視察のために各地を飛び回っているから家をほぼ空けている。

だからって、これはどうなのか?


…何と言うかガラが悪すぎる。
この国は大丈夫?他の貴族たちはどうなってるのかしら?


そうか、今この学園は親が伯爵家以上の爵位を持っている生徒が居ないんだった。
たまたまなのか、こういう悪影響を与えそうな生徒が居るから他国に留学させているのかしら。


そんな事をぼんやり考えていたら婚約者のピーター様と目が合ってしまった。


あ、何か睨まれている。

「あっれ~あそこにいるの、ピーターの婚約者じゃん!」

「うわ!ほんとに地味だなあ。まあ、顔は悪くないけど、肌焼けすぎじゃね?
平民じゃんこれじゃ。」


「なんでお前がここに居るんだ?」

「友達とチェリーパイを食べに来たのです。」

「貧乏人がここのデザートを食べれるなんてな。お前は俺に感謝しろよ。」


「おいおい、ピーター様そんなこと言っちゃったら婚約者の彼女が可哀そうだろ?」
周りがニタニタとはやし立てる。


「あ~あ、辛気臭い顔見て気分が下がった。
お前はここを片づけておけ。さあ、もう教室に戻ろうぜ。」


「ははは、婚約者じゃなくて女給じゃん。
じゃ、婚約者ちゃん片付けよろしく~。」



そう言ってガラの悪いピーター様一行は食堂をあとにした。


「セレナ、大丈夫?」


「うん、大丈夫。丁度席も空いたし、すぐ片付けて私たちもチェリーパイ食べましょう。」



「ええ、そうね。」


こうして私たちは授業までにチェリーパイを食べることが出来た。



ああ、このパイ家族にも食べさせたいなあ。


そう思えるほど美味しかった。

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