『選ばれし乙女』ではありませんが、私で良いのでしょうか?私、地味で目立たない風属性ですよ?

ミミリン

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メイドの靴

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とある日、私とピーター様に侯爵家令嬢のお誕生日会に誘われた。

令嬢は11歳になるらしく、昔から付き合いがあるのでピーター様は毎年呼ばれているそうだ。

ガーデンパーティらしいのでカジュアルな服装を指定された。


当日

「ピーター様私の服装これでよろしいでしょうか?」


出発直前ピーター様に声かける。


ドレスコードが分からず侍女に教えてもらいながら綺麗目の服装で仕上げたのだが、一応確認をする。


「なんだその靴は…。そんなものを履くんじゃない!お前はこのメイドの靴でも履いていろ!」

そう言ってメイドに指をさしている。


このヒールの靴はだめなの?


お見送りに出てきたメイドや侍女達は居た堪れない表情をしている。


「遅刻するぞ!早くそこのメイドと靴を取り換えろ。ぐずぐずするな、ノロマ!」


指をさされたメイドは青ざめている。


もう、何でも良いか。
私も好きでこんな動きにくい高いヒール靴を履いてるわけじゃないんだし。

そう切り替え、メイドに靴を借りた。


メイドの動きやすい靴はなかなか履き心地は良かった。


ピーター様と並んでも私が高くなることはなかった。


そして、多分ピーター様はかかとを高くする靴を履いておられるようで普段より身長が高く増していた。


侯爵家のパーティに参加するが、知らない貴族ばっかりだった。


それに、明らかにみなさん私の足元をみて驚いた表情をしている。

そして、見て見ぬ振りをして私を避けた。



そんな私を見て婚約者のピーター様は何やら嬉しそうに見える。


そして、誕生日の主役侯爵令嬢への挨拶しに二人で向かう。


「ティナ様、10歳のお誕生日おめでとうございます。」


「あら、ピーター。来てくれたのね!やっぱりカッコいいわ。
いつか私と結婚してくれる?」


「ははは、いつもそう言ってくださいますねティナ様。
しかし、僕は婚約中でして今は…難しですね。今は。」


「えっと、隣の方がピーターの婚約者?」


「はい、セレナと申します。」


ティナ嬢は私をじろりと見てクビをかしげる。


「なんだか、ダサいわね。こんな方で大丈夫?」


嫌味ではなく純粋に言っているのはよく分った。


「ははは、ティナ様は手厳しいな。まあ、そうなのですけどね。大ハズレですよ。」


「…ハズレってどういうこと?」


ピーター様の言葉にティナ様が反応した。


いけない、まだ幼い侯爵令嬢に変な言葉を覚えさせてはいけない。


「さあ、他の方もご挨拶を待っておられます。私たちはこれで失礼します。」


私は無理矢理話を切り上げた。


ふう、あぶなかった。


「おい、自分がティナ嬢に馬鹿にされたからってあんな去り方あるか?
本当にお前は礼儀の知らない女だな。だから大ハズレなんだよ。」


ええ?そういう認識をされるの?


「ちっ。もうこれ以上俺の隣を歩くな。気分が悪い。じゃあな。」

そう言ってピーター様は私から離れた。


本来こういう場で婚約者として他のゲストたちに挨拶をしていくべきなのに、これでは無理ね。


せっかく来たのでお料理を頂く。


会場に居るピーター様は知り合いとお話ししながら私を見てニヤニヤとしている。


多分私の事を良くは言っていないのだろう。

それは分かった。



ここまで憎まれるのは初めてだわ。前世でピーター様とは国を分けた戦いでもしたのかしら。

サンドイッチを口にしたとき会場の空気が変わった。


突然強い風が立った。


と思ったら目の前で竜巻が発生しており、猛スピードで会場に近づいてきた。


竜巻はすごい勢いで会場をかき乱していく。

そこにティナ嬢が腰を抜かしているのか動けず固まっていた。


「あぶない!!」



私は何も考えずティナ嬢を抱きかかえる。


しかし、逃げるよりも竜巻が襲ってくるスピードの方が明らかに早かった。


竜巻だって私と同じ風なんだから、何とかできるはずっ!


先日岩を動かしたようにティナ嬢を抱えながら竜巻に拮抗する風魔法を使った。


お、重い…。




竜巻に負けそうになるけど、何とか足を踏みしめて耐える。




そして、私の起こした風魔法がやっと竜巻を上に弾き飛ばしたようで空に向かって消えてくれた。



ああ、やっと終わった。


さすがに…これは疲れた…。



冷静になった時自分が小さな女の子を抱えていることを思い出した。


「ティナ嬢、大丈夫ですか?怖かったでしょう?」


ティナ嬢を怖がらせないように笑顔で声をかける。


私の腕に抱かれていたティナ嬢はキラキラとした瞳をこちらに向け


「かっこいい…。私と結婚して。」


そんな事をつぶやいた。





「た、助かった…。」
「いやはや、素晴らしい風魔法だ。」パチパチパチ…

そんな声と共に私は皆さまの拍手に囲まれてしまった。





そこに一人私を睨む男性が一人。

婚約者のピーター様だ。



ピーター様は足を引きずっておられ、片足をかばって歩いている。


この方も一応ティナ嬢を助けようと動いたけれど、かかとの高い靴だったから上手く動けず足を捻られたようだ。


今日、私はメイドの靴を履いていて結果オーライという事ね。



その後は、私は様々なゲストの方たちに礼を言われティナ様からはどこの出身で家族構成はどうなのかなど身辺調査に近い質問を受け続けた。



自身の親戚筋の男性を紹介するような話の流れになったので、丁重にお断りした。

まだ幼い女の子の思い付きの提案に乗るほど私も世間知らずではないので。でも気持ちはとても嬉しかった。


「じゃああなたの弟と結婚するわ。そうすればあなたが私のお姉さまになるでしょ。」とまで言って頂いた。


侯爵家に入るなんて我が弟には身が重すぎるのでこれまた丁重にお断りし、出来る事なら騎士になった際には侯爵家で雇ってほしいと口契約はさせていただいた。



まだまだ先の話だけど、姉さん弟のために頑張ったわよ。




気づけば婚約者様の姿はなく先に帰っていたようだ。



私は侯爵家から手厚く高級馬車で送っていただいた。



見送りの際「今度、セレナに似合う素敵な靴をプレゼントするわね。」とティナ様に笑顔で言われてしまった。



それはそれで、また色々ややこしくなりそうですよ。


とは言えず自分の身長を恨んでしまった。

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