『選ばれし乙女』ではありませんが、私で良いのでしょうか？私、地味で目立たない風属性ですよ？

俺の婚約者

俺はピーター。


あと少しで18歳になる。


１８歳と言えばこの国では色々自己権利が生じる歳となる。

そうなれば俺はこの領地を受け継ぎ莫大な資産を受け取る権利が手に入るだろう。


両親は領地を治めるために色々動いているが、時代はもうそんな原始的な働き方は求められていないんだよ。


だって戦争が終わってもう何年が経ってると思う？


この国は平和そのものじゃないか。


実際俺の周りは退屈なほど平和だ。


だから俺が領主になればもっと効率的で、合理的で、独創的で、クリエイティブな方法で領地を治めるんだ。


今はまだ親の庇護が必要だから訳の分からない婚約者をあてがわれても表立って文句は言えない。





それにしても、俺の婚約者であるセレナは俺の好みの正反対をいく女だ。


初めて会った時から気に入らなかった。


地味すぎる髪の色。


顔は整ってはいるが愛想も華もないし一貫して冷めた態度をとる。


貴族令嬢のくせに肌は焼けていて風特性特有の小麦色の瞳。
どう見ても農家の娘だろ。



極めつけが俺より身長が高い。



隣に並ばれると俺の完璧な容姿が崩されるし、上から見下ろされている気分になる。



何もかもが俺の気分を害する存在なのだ。




あの学園に入れば自分の貧相な価値に気づき実家に帰るかと思いきや、チラホラと友達を作って楽しんでいるらしい。


ほぼ平民落ちの貧困女のくせに。



ちょっと顔がよくて魔力が強いだけでこの学園のポジションを獲得できるなんて女って得だよな。




それでも表向きは婚約者だから上位貴族に誘われれば二人で出向く必要もある。



先日のティナ嬢の誕生日会があり、あの女にお前は貴族の間で場違だと思い知らせてやろうと考えていた。



しかし俺に見せた姿は完璧ドレスを着こなす女だった。


腹が立ち、靴を変えさせてやった。


初めは他の貴族の笑いものになっていたはずなのに状況が変わった。


あいつは俺を差し置いてティナ嬢を救い出し、美味しいところを全部持って行きやがったんだ。



普通婚約者である俺に花を持たせるだろう。



どこまで馬鹿なんだあの女は。



あいつのせいで俺は足を痛めてしまい、しばらく不便な生活だった。



ああ、俺の婚約者は本来もっと小柄で華やかで俺の事を立てる女であるべきなのに。


俺はなんて不幸なんだ。



俺の不幸の元凶であるセレナ。



このままで済むと思うなよ。