『選ばれし乙女』ではありませんが、私で良いのでしょうか?私、地味で目立たない風属性ですよ?

ミミリン

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転校生

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「やあ、ピーター。
この前はリゾートで楽しませてくれて本当にありがとう。
やっぱり俺たちのピーター様は人としての格が違うぜ。」


「…まあな。」


「あれ?ピーター、何か悩み事?」

「いや、まあ…な。」

「そうだよなあ。
だってこれからこの上級クラスも授業が難しくなるし課題も難しくなるもんなあ。
俺たち貴族にそんなもの必要ないのにな。」


「あ、ああ。」


そうだった。この連休が明けたら俺の居る上級クラスは求められる内容が各段に上げられるんだった。
一部のくそ真面目な生徒はこの連休に予習しているらしいが、そんな事忘れてバカンスに興じてしまった。


「まあ、俺は授業についていけなくても中位貴族の3男坊だから卒業さえできれば良いんだけどね。
ピーターはロディウス家だろ?しかも長男だから大変だよな。」


「…まあ、な。」


「ああ、でもさ、楽しい話もあるんだぜ!
さっき職員室で聞こえたんだけど、今日からこの上級クラスに転入生が来るんだってよ。」


「こんな時期にか?」


「そうそう。しかも上級クラスってすごくないか?
何か訳アリの匂いだよな?
まあ、今この学園で一番偉いのはピーターなんだから気に入らなければ俺たちが可愛がってやるよ。な?」


「そうだな。」


そんな話をしていると先生が女子生徒を連れて教室に入ってきた。


先生の後ろに隠れているようでよく姿が分からない。


かなり小柄なのだろう。


「今日からこのクラスに入るミリア=スカータ君だ。
さあ、自己紹介をしたまえ。」


女子生徒はゆっくりと前に出てくる。


やっぱり小柄だ。

制服から出ている手足は白く細い。

そして、この国には珍しい水色の瞳だ。

顔を囲んでいる髪の毛はピンクブロンドで艶のあるフワフワと柔らかそうな髪だ。


「みなさん、こんにちはミリア=スカータです。
属性は水です。分からないことだらけなので、良かったら色々教えてください。」


そう言ってにこりと優しく笑う彼女には無数の輝く水玉が舞い、キラキラと水のオーラが彼女を取り囲んでいた。


まさに幻想的な空間が目の前で繰り広げられている。


その光景の俺は驚愕した。


この愛らしさと美しさの共存。


これぞ、選ばれし乙女なのだと。


この国で希少な水属性。

それだけで保護対象になるのだ。

ましてやこの存在感。
彼女が絶対に選ばれし乙女なのだと確信した。


「へえ~かなり可愛いじゃん。
しかも水属性。あの子絶対ピーターのタイプじゃない?」


「…。」
俺はすぐに声が出なかった。


大当たりだ。大当たり中の大当たりだ。

俺の理想を全て詰め合わせたような女の子だ。


華奢な体、透き通るような色白の肌、大きな瞳に潤いのある小さな唇。


「ミリアさん、ここの席空けますよ!
この学園で一番地位のあるピーター=ロディウス君の隣にどうぞ!」


俺の取り巻きが気を利かせて彼女を席に誘導してくれた。
何て気が利く奴だ。


おずおずと俺の席に来た彼女が小さい体を更に小さくして首を傾げながら聞いてきた。


「ロディウス?はく…しゃく、様?」


ああ、声も愛くるしい。

戸惑った顔がまた色々な感情を掻き立てる。


「ああ、そうさ。
俺が成人すればロディウス領は全て俺のものになる。
実質すでに伯爵みたいなものさ。」


「まあ、すてき…。
このような素晴らしい方にお会いできるなんて、私この学園に来て本当に良かった。」


彼女が俺に笑いかけた途端、ふわりと水の粒が彼女の顔周りで輝き、
それは女神さまのような美しい微笑みだった。



守ろう、彼女を。



俺はこの子を愛している。



魂がそう叫んでいた。

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