『選ばれし乙女』ではありませんが、私で良いのでしょうか？私、地味で目立たない風属性ですよ？

ダーウィン様との再会

「若い娘さんが訪ねてきたと聞いたが、君だったか。
セレナ。」


「ダーウィン様、突然の訪問申し訳ございません。
あなた様しか頼れる方がいなくて…。」

「ああ、謝らなくて良いよ。
いや、その、嬉しいんだ。退役した老いぼれ軍人を頼ってくれる若者なんて居ないからね。
これからいつでも来ればいいさ。
それにしても…君、ちゃんと食べていないんじゃないか？
裕福な伯爵家で世話になっていると聞いたがこれじゃあ、没落寸前の実家居た時より不健康じゃないか。
一体、何があったんだ？
誰にも言わないから言ってみてごらん。」


「ダーウィン様…。」



私は、以前手紙の運送を担当したダーウィン様を思い出し訪ねさせていただいた。


ダーウィン様は元軍人とは聞いていたけど、明らかに知っている言語や知識が一般人とは桁違いだったのだ。

小さな家に住んでいるが、そこが本来の居住地なのかも分からない正体不明のお客様だった。


そのお人柄は信頼できたし、いつも私の心配をして下さっていたのだ。


安心した私は、誰にも言えずにしまい込んでいたピーター様との関係性をダーウィン様に全て打ち明けた。

ダーウィン様は最後まで優しく私の話を聞いてくださった。


「…なるほどな…。ロディウス家の長男はやはり、そうだったか…。
ふむ。セレナも苦労が絶えないな。」


ダーウィン様は何かを悟ったように頷いていた。


「まあ、よかろう。
これから君はここに通いなさい。
知り合いの老いぼれの世話をしていたとでも言っておけばいいからね。
さあ、まずは食事だ。頭に栄養を回してからお勉強としようか。」


ダーウィン様は私に栄養のある美味しいご飯を持ってきてくださった。


「日中はお手伝いさんが来るんだよ。
用事で実家に戻っている家内が頼んでくれるんだけど量が多くてね。
この歳でこんなに食べきれないから丁度良かった。ささ、お食べ。」


「ありがとうございます。」


実はロディウス伯爵から頂いていたお金では自分の食費を十分賄いきれず食事を抜くこともあったので、ダーウィン様のお食事は身体が待ち望んだかのように芯から身体が温まった。


その日から私は学校終わりにダーウィンの自宅に通わせていただいている。


毎回食事を頂き、上級クラスの勉強や魔法術まで教わることが出来た。


ダーウィン様は緑の属性で植物を使い魔法をかけることができる。


美しい花を出すときもあればモンスターのような食虫植物や鉄のように硬い植物を生み出すことも出来た。


「私もダーウィン様のような属性だったら領地にもっと貢献できたのに…。」


「何を言っているんだ。
セレナの風魔法は素晴らしいぞ。
私は戦場で数々の風魔法を見てきたが、君のような繊細で力強い風魔法はなかなかお目見えできなかったよ。
一見荒々しい台風を生み出す軍人も居たがね、見てくれだけで長時間もたないし根源に私の植物をまき散らせばもう何も出来なくなる軟弱魔法だったよ。
ああ、こんな昔の話、年頃のお嬢さんにするもんじゃないな。」


「いいえ、もっと聞かせてください。すごく楽しいです。」


「はははは。君は本当に勉強熱心だね。
他国の言語も勉強してるんだって？」



「はい、以前ダーウィン様からの依頼で他国の言葉でお手紙を書いてから興味が湧いたので勉強はずっと続けています。」


「うん、素晴らしい。
君には幸せになってもらいたいね。」


「ピーター様とは上手くいきませんが、実家を助けていただいて学園にも通えていますし、
こうしてダーウィン様に教えてもらえているだけで十分幸せですよ。」


「…。そうか、そうか。
さて、じゃあ今日は魔力を物質に移し長期持続できる方法を練習をしてみようか。」



「はい！よろしくお願いします！」