姑が勝手に連れてきた第二夫人が身籠ったようですが、夫は恐らく……

泉花ゆき

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「……記録?」

夫人の瞳が細くなります。

「はい。あちらの地方での慣習ですが、効力は国内全土に及びます」

……凌家の夫人は、その石を見た時のことを思い出します。息子の嫁の持参金がわけの分からない鉱石であったことに落胆を隠しきれなかったこと。
売り捌いた時に、思わぬ値がついて驚きながらも都合の良さに笑みが溢れたことも。

「原産地から始まり……販売先から、今誰が所有するのかまでのすべてが紐づけられます。価値が高すぎるためのことです」

役人は指先で帳簿を叩きました、ここへすべて記されているのだと。

「つまりは、金に名がついているも同然。どれが誰の金で買われたものか、すべて分かる仕組みなのですよ」

夫人は一瞬、息が止まるような心地を覚えました。

(……は?)

役人がさらに続けると、夫人の表情が初めて揺らぎました。
胸が焼けるような怒りと、底冷えするような不安が同時にぶわりと押し寄せてくるようです。

「……そんな馬鹿な話があるかい。作り話に決まっている……!」

「作り話かどうかは、裁判にてお確かめください」

「裁判だって!?」

夫人の裏返った声が響きます。役人は、それを伝えてしまうと用は終えたとばかりに帰り支度を始めていました。

「ふざけるんじゃないよ!誰に断ってそんなこと……っ許されると思ってんのかい!?」

「国からの許可を得ております。……後日、通達があるかと思いますので、ご確認ください」

彼女に浴びせられたのは、とりつく島もない言葉だけ。役人は伝えることは伝えたと、出ていってしまいます。

残された夫人はじっとりと冷たい汗をかきながら、どうにかその通達とやらをごまかす手立てを混乱する脳内で考えようとしましたが…………


数日後。

名家として知られるこの凌家。
そこで夫人は今、夫の鋭い視線に晒されて顔を青ざめさせていました。

「一体どういうことなんだ! 」

どうにかごまかそうとしていたのですが、裁判の通達が届き、それを先に当主が開封してしまったことで、すべてが露見してしまったのです。
夫は通達の文書を握りしめ、声を荒げました。

「とっくに離縁した娘からの持参金を使い込んだだと!? それも役人まで巻き込んで裁判……何をしているんだ…………」

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