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二人の王子
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エミールは吐息して、クラウスを見た。彼はすこし困ったように眉を寄せている。エミールの願いならば手紙のひとつやふたつ書いてやりたいという思いと、エミールを危険に晒す真似などゆるせないという思いがせめぎ合い、けれど結局は後者が圧勝するのだろう。
そんなクラウスの思考が手に取るように伝わってきて、エミールはもういいかと諦めた。
「もういいです。もう手紙の件は蒸し返しません。あなたの好きにしたらいいですよ、ラス」
「エル……すまない」
「謝るのもなしです」
「む……」
クラウスが言葉を詰まらせるのを唇の端で笑って、エミールは二人の王子を見比べた。
革命派を掃討するため、敢えて革命派の内側へ潜り込んだクラウス。彼が掴んだ情報はマリウスへと流れ、二人は共闘して末弟ユリウスのため、後顧の憂いを断ったのだ。
改めてすごいと思う。アルファという生き物は皆、彼らのように大局を見据えているのだろうか。
エミールももっと視野を広げなければならないのかもしれない。これからもクラウスと共に在るならば。
彼の足を引っ張るだけの存在であってはならないのだ。
クラウスのつがいとして生きるということ、そのことを改めて突き付けられ、エミールは覚悟を新たにした。
「ドナースマルクらの聴取はこれからだが、ひとまずは一件落着だ」
マリウスがワインを注ぎ足したグラスを高々と掲げ、
「我がサーリーク王国と、新たなる騎士団長に」
と言った。
クラウスが同じようにグラスを持ち上げ、口を開く。
「未来の国王陛下に」
弟の言葉に、マリウスが眉を軽く上げた。笑みを交わし合った二人の王子は、「乾杯」の声をそろえて空中でグラスを触れ合わせた。グラスが澄んだ音を響かせる。それはさながら、祝福の鐘の音のようだった。
四人だけで密やかに行われた祝宴は、ロンバードがクラウスを呼びにきたことでお開きとなった。
ユリウスの護衛として騎士団を離れた後も、ロンバードはこうして度々クラウスの任務もこなしている。忙しそうなだなぁとエミールは思うが、そもそもユリウスの護衛というのも、クラウスの私兵としての任務のひとつだと考えるとロンバードの主人はやはりクラウスのままなのかもしれなかった。
エミールがなにげなくドア付近で話している主従を眺めていると、マリウスに改まった口調で呼ばれた。
「エミール」
「はい」
顔を振り向けたら、指先で呼ばれた。エミールは立ち上がり、マリウスの傍らに立った。彼の隣ではアマーリエが、マリウスの手からワイングラスを取り上げている。
「クラウスの手綱を離すなよ」
おもむろに告げられた言葉の意味がわからず、エミールは首を傾げた。マリウスは榛色の目を細め、ロンバードと話しているクラウスへと視線を流した。
「あいつは俺のことを褒めていたがな、真に稀有なのはクラウスの心根の方だ。頭も切れ、視野も広く、騎士団をまとめるだけの力量もある、にも関わらず俺の裏方に回り微塵も嫉妬を覚えない。心底から俺を慕っている。玉座につくだけの実力がありながら、だ」
密やかな声で語るマリウスがなにを言いたいのか掴み切れずに、エミールは曖昧に頷いた。
マリウスが背もたれに深くもたれ、チラとこちらを見上げた。
「だが、俺にあってあいつにないものがある。それは枷だ」
「枷、ですか?」
「俺には国という枷がある。王太子であり次期国王でもある俺は、一番に国のこと、国民のことを考える義務があるのだ」
マリウスは一度言葉を切って、アマーリエへ目を向けた。
「国のためなら俺は、アマルでさえ利用する」
エミールは息を飲んだ。当のアマーリエは平然とした表情で、小さな笑みをひらめかせさえした。
「わたくしは王になるひとと結婚したのですもの。むしろ王が民を優先せずにどうしますか」
アマーリエの言葉に、マリウスが喉を鳴らた。
「エミール。クラウスとおまえは、俺とアマルとは違う」
「……? クラウス様が、国民のために動けないということですか? それともオレが、」
「そのようなことではない。おまえとクラウスが、運命のつがいだということだ」
その言い方に引っかかりを覚え、エミールは眉を寄せた。
尋ねてもいいのだろうか。エミールの逡巡を感じ取ったのか、アマーリエが先に口を開いた。
「わたくしとマリウスは運命のつがいではありませんわ。ただのオメガとアルファよ」
「そもそも、運命の相手というものはそうおいそれとは見つからんものだ。クラウスは僥倖だった」
「そう……なんですか?」
「当然だ。世界がどれだけ広いと思っている」
屈託のない口調でマリウスが頷いた。
言われてみればその通りだが、でも、それだと……マリウスとアマーリエ、それぞれの運命のつがいがどこかに存在することになる。
出会ってしまったなら、どうなるのだろう。たとえばマリウスが、運命のつがいを見つけたら……アマーリエよりもそのオメガの方へとこころが移ってしまうのだろうか。
魂で惹かれ合うとされる、運命のつがい。一度出会ったら二度とは離れらない存在。
「言っておくがな、俺は会えもしない『運命』よりも、こうして俺の隣に居るアマルの方が充分、俺の魂のつがいなのだと思っている」
エミールはハッとして目を瞠った。アマーリエが小さく笑った。
「わたくしはね、エミール。生まれたときからこのひとの許嫁でしたの。オメガであってもなくても、女が生まれたら王太子に嫁がせる、そう決まってましたのよ。わたくしもこのひとも、覚悟はありますわ。国を背負って添い遂げる覚悟が」
「アマル……」
同い年の彼女がひどく大きく見えて、エミールはアマーリエの凛とした気迫に飲まれた。
運命のつがいでなくとも二人の間には確かに愛がある。そのつながりは強固なもので、たとえ『運命』が現われたとしても、揺らぐことはないのかもしれないと思わせた。
しかしマリウスは、
「だが、運命のつがいというものは本能が求める相手だ。それはある意味理の埒外の存在だ」
と言う。
「俺はもちろんアマルもエディも愛している。だが俺は夫であり父である前に王家の人間なのだ。クラウスなどは俺を自由だ破天荒だと言うが、俺には国という枷がある。俺の天秤は常に、サーリーク王国に傾いているのだ」
エミールはようやく、マリウスが言わんとしていることを理解した。
「クラウス様には、その枷がない、と」
「ないのではない。あれも王家の一員だ。無論民のために尽くしたいという意思はある。だが、その枷よりもなによりも他に優先すべきものが、クラウスにはできてしまった。それはおまえだ、エミール」
「…………はい」
「おまえが真に望むなら、クラウスは王位に就くことも厭わない」
「それは!」
咄嗟に大きな声が飛び出そうになり、エミールはてのひらで口を押さえた。
扉の横でロンバードと話していたクラウスが、こちらを気にする様子を見せている。なんでもないと手を振って、エミールは声量を絞って反論した。
「それはクラウス様があなたと対立する可能性があると仰ってるんですか? 有り得ない!」
あんなにも兄を慕っている男が、その兄を押しのけてまで王位継承者に名乗りを上げるはずがなかった。
しかしエミールの反駁をマリウスが否定する。
「クラウスが、ではない。おまえだ。おまえが望むなら、クラウスはそれを叶えようとするだろう。クラウスにとっておまえは、おのれのいのちよりも、騎士の誇りよりも、肉親よりも、国よりもだいじな存在なのだから」
「…………まさか」
エミールの喉からかすれた声が漏れた。
「言っただろう。運命のつがいとは、理の埒外の存在だと。おまえが権力を欲すれば、クラウスはそれを叶えるために動く。必ずだ」
「オレは……そんなことは望んでない」
「うむ。弟のつがいがおまえのように無欲なオメガで良かった」
マリウスが腕を組み、二度頷いた。彼自身、エミールの反逆を疑っているわけではないようだった。マリウスの懸念はその周囲にあった。
「いいか、俺はおまえのことを信じている。クラウスが選んだつがいを、俺も信じる。だが、おまえを取り巻く全員が俺と同じだとは思うなよ。すこしでも運命のつがいについて知識のある者なら、真っ先におまえを利用しようとする。おまえはクラウスのアキレス腱だ。おまえさえ押さえれば、クラウスを動かすのは容易い。あれは国よりもおまえを選ぶ。騎士団長の立場を擲ってでもおまえのために動くだろう」
エミールは無意識に生唾を飲み込んでいた。
マリウスの言葉が重く、腹の奥へと沈殿してゆく。
革命派を捕縛したからと言って浮かれている場合ではなかった。気を引き締めなければ、すぐに足元をすくわれてしまう。そんな場所に、エミールは居るのだ。
「エミール。俺の弟を、誇りある騎士団長のままでいさせてやってくれ。そのために上手く手綱を握れ。クラウス・ミュラーはサーリーク王国のために必要な男だ。道を踏み外させるなよ」
マリウスの命令は、兄としてというよりも、次期国王としてのものだった。
おのれの治世にはクラウスが必要なのだと、真摯にエミールに教えていた。
エミールは半ば呆然と、クラウスの方を見た。エミールの視線にすぐに気づいた男が、ロンバードの話を遮り、こちらへ来ようとする。
エミールは慌てて首を横に振った。クラウスの足が止まった。彼の腕をロンバードが掴み、なにかを言っている。それでもクラウスはエミールが気になるのか、蒼い瞳を逸らさなかった。
エミールがロンバードを指さし、唇だけで「困らせるな」と伝えると、クラウスはようやく部下へと向き直った。
アマーリエがエミールへとささやきの音で告げてくる。
「マリウスの話は極論ですのよ。でも、頭の片隅にでも置いておいてちょうだいね。エミール、わたくしたちは、気をつけすぎるぐらいでちょうどいいの」
王族の伴侶としての彼女の言葉を、エミールは胸に刻みつけた。
生きる世界が違う。もうそんなことを言える段階ではない。
クラウスと一緒に生きると決めたのは、他らなぬ自分なのだから。
そんなクラウスの思考が手に取るように伝わってきて、エミールはもういいかと諦めた。
「もういいです。もう手紙の件は蒸し返しません。あなたの好きにしたらいいですよ、ラス」
「エル……すまない」
「謝るのもなしです」
「む……」
クラウスが言葉を詰まらせるのを唇の端で笑って、エミールは二人の王子を見比べた。
革命派を掃討するため、敢えて革命派の内側へ潜り込んだクラウス。彼が掴んだ情報はマリウスへと流れ、二人は共闘して末弟ユリウスのため、後顧の憂いを断ったのだ。
改めてすごいと思う。アルファという生き物は皆、彼らのように大局を見据えているのだろうか。
エミールももっと視野を広げなければならないのかもしれない。これからもクラウスと共に在るならば。
彼の足を引っ張るだけの存在であってはならないのだ。
クラウスのつがいとして生きるということ、そのことを改めて突き付けられ、エミールは覚悟を新たにした。
「ドナースマルクらの聴取はこれからだが、ひとまずは一件落着だ」
マリウスがワインを注ぎ足したグラスを高々と掲げ、
「我がサーリーク王国と、新たなる騎士団長に」
と言った。
クラウスが同じようにグラスを持ち上げ、口を開く。
「未来の国王陛下に」
弟の言葉に、マリウスが眉を軽く上げた。笑みを交わし合った二人の王子は、「乾杯」の声をそろえて空中でグラスを触れ合わせた。グラスが澄んだ音を響かせる。それはさながら、祝福の鐘の音のようだった。
四人だけで密やかに行われた祝宴は、ロンバードがクラウスを呼びにきたことでお開きとなった。
ユリウスの護衛として騎士団を離れた後も、ロンバードはこうして度々クラウスの任務もこなしている。忙しそうなだなぁとエミールは思うが、そもそもユリウスの護衛というのも、クラウスの私兵としての任務のひとつだと考えるとロンバードの主人はやはりクラウスのままなのかもしれなかった。
エミールがなにげなくドア付近で話している主従を眺めていると、マリウスに改まった口調で呼ばれた。
「エミール」
「はい」
顔を振り向けたら、指先で呼ばれた。エミールは立ち上がり、マリウスの傍らに立った。彼の隣ではアマーリエが、マリウスの手からワイングラスを取り上げている。
「クラウスの手綱を離すなよ」
おもむろに告げられた言葉の意味がわからず、エミールは首を傾げた。マリウスは榛色の目を細め、ロンバードと話しているクラウスへと視線を流した。
「あいつは俺のことを褒めていたがな、真に稀有なのはクラウスの心根の方だ。頭も切れ、視野も広く、騎士団をまとめるだけの力量もある、にも関わらず俺の裏方に回り微塵も嫉妬を覚えない。心底から俺を慕っている。玉座につくだけの実力がありながら、だ」
密やかな声で語るマリウスがなにを言いたいのか掴み切れずに、エミールは曖昧に頷いた。
マリウスが背もたれに深くもたれ、チラとこちらを見上げた。
「だが、俺にあってあいつにないものがある。それは枷だ」
「枷、ですか?」
「俺には国という枷がある。王太子であり次期国王でもある俺は、一番に国のこと、国民のことを考える義務があるのだ」
マリウスは一度言葉を切って、アマーリエへ目を向けた。
「国のためなら俺は、アマルでさえ利用する」
エミールは息を飲んだ。当のアマーリエは平然とした表情で、小さな笑みをひらめかせさえした。
「わたくしは王になるひとと結婚したのですもの。むしろ王が民を優先せずにどうしますか」
アマーリエの言葉に、マリウスが喉を鳴らた。
「エミール。クラウスとおまえは、俺とアマルとは違う」
「……? クラウス様が、国民のために動けないということですか? それともオレが、」
「そのようなことではない。おまえとクラウスが、運命のつがいだということだ」
その言い方に引っかかりを覚え、エミールは眉を寄せた。
尋ねてもいいのだろうか。エミールの逡巡を感じ取ったのか、アマーリエが先に口を開いた。
「わたくしとマリウスは運命のつがいではありませんわ。ただのオメガとアルファよ」
「そもそも、運命の相手というものはそうおいそれとは見つからんものだ。クラウスは僥倖だった」
「そう……なんですか?」
「当然だ。世界がどれだけ広いと思っている」
屈託のない口調でマリウスが頷いた。
言われてみればその通りだが、でも、それだと……マリウスとアマーリエ、それぞれの運命のつがいがどこかに存在することになる。
出会ってしまったなら、どうなるのだろう。たとえばマリウスが、運命のつがいを見つけたら……アマーリエよりもそのオメガの方へとこころが移ってしまうのだろうか。
魂で惹かれ合うとされる、運命のつがい。一度出会ったら二度とは離れらない存在。
「言っておくがな、俺は会えもしない『運命』よりも、こうして俺の隣に居るアマルの方が充分、俺の魂のつがいなのだと思っている」
エミールはハッとして目を瞠った。アマーリエが小さく笑った。
「わたくしはね、エミール。生まれたときからこのひとの許嫁でしたの。オメガであってもなくても、女が生まれたら王太子に嫁がせる、そう決まってましたのよ。わたくしもこのひとも、覚悟はありますわ。国を背負って添い遂げる覚悟が」
「アマル……」
同い年の彼女がひどく大きく見えて、エミールはアマーリエの凛とした気迫に飲まれた。
運命のつがいでなくとも二人の間には確かに愛がある。そのつながりは強固なもので、たとえ『運命』が現われたとしても、揺らぐことはないのかもしれないと思わせた。
しかしマリウスは、
「だが、運命のつがいというものは本能が求める相手だ。それはある意味理の埒外の存在だ」
と言う。
「俺はもちろんアマルもエディも愛している。だが俺は夫であり父である前に王家の人間なのだ。クラウスなどは俺を自由だ破天荒だと言うが、俺には国という枷がある。俺の天秤は常に、サーリーク王国に傾いているのだ」
エミールはようやく、マリウスが言わんとしていることを理解した。
「クラウス様には、その枷がない、と」
「ないのではない。あれも王家の一員だ。無論民のために尽くしたいという意思はある。だが、その枷よりもなによりも他に優先すべきものが、クラウスにはできてしまった。それはおまえだ、エミール」
「…………はい」
「おまえが真に望むなら、クラウスは王位に就くことも厭わない」
「それは!」
咄嗟に大きな声が飛び出そうになり、エミールはてのひらで口を押さえた。
扉の横でロンバードと話していたクラウスが、こちらを気にする様子を見せている。なんでもないと手を振って、エミールは声量を絞って反論した。
「それはクラウス様があなたと対立する可能性があると仰ってるんですか? 有り得ない!」
あんなにも兄を慕っている男が、その兄を押しのけてまで王位継承者に名乗りを上げるはずがなかった。
しかしエミールの反駁をマリウスが否定する。
「クラウスが、ではない。おまえだ。おまえが望むなら、クラウスはそれを叶えようとするだろう。クラウスにとっておまえは、おのれのいのちよりも、騎士の誇りよりも、肉親よりも、国よりもだいじな存在なのだから」
「…………まさか」
エミールの喉からかすれた声が漏れた。
「言っただろう。運命のつがいとは、理の埒外の存在だと。おまえが権力を欲すれば、クラウスはそれを叶えるために動く。必ずだ」
「オレは……そんなことは望んでない」
「うむ。弟のつがいがおまえのように無欲なオメガで良かった」
マリウスが腕を組み、二度頷いた。彼自身、エミールの反逆を疑っているわけではないようだった。マリウスの懸念はその周囲にあった。
「いいか、俺はおまえのことを信じている。クラウスが選んだつがいを、俺も信じる。だが、おまえを取り巻く全員が俺と同じだとは思うなよ。すこしでも運命のつがいについて知識のある者なら、真っ先におまえを利用しようとする。おまえはクラウスのアキレス腱だ。おまえさえ押さえれば、クラウスを動かすのは容易い。あれは国よりもおまえを選ぶ。騎士団長の立場を擲ってでもおまえのために動くだろう」
エミールは無意識に生唾を飲み込んでいた。
マリウスの言葉が重く、腹の奥へと沈殿してゆく。
革命派を捕縛したからと言って浮かれている場合ではなかった。気を引き締めなければ、すぐに足元をすくわれてしまう。そんな場所に、エミールは居るのだ。
「エミール。俺の弟を、誇りある騎士団長のままでいさせてやってくれ。そのために上手く手綱を握れ。クラウス・ミュラーはサーリーク王国のために必要な男だ。道を踏み外させるなよ」
マリウスの命令は、兄としてというよりも、次期国王としてのものだった。
おのれの治世にはクラウスが必要なのだと、真摯にエミールに教えていた。
エミールは半ば呆然と、クラウスの方を見た。エミールの視線にすぐに気づいた男が、ロンバードの話を遮り、こちらへ来ようとする。
エミールは慌てて首を横に振った。クラウスの足が止まった。彼の腕をロンバードが掴み、なにかを言っている。それでもクラウスはエミールが気になるのか、蒼い瞳を逸らさなかった。
エミールがロンバードを指さし、唇だけで「困らせるな」と伝えると、クラウスはようやく部下へと向き直った。
アマーリエがエミールへとささやきの音で告げてくる。
「マリウスの話は極論ですのよ。でも、頭の片隅にでも置いておいてちょうだいね。エミール、わたくしたちは、気をつけすぎるぐらいでちょうどいいの」
王族の伴侶としての彼女の言葉を、エミールは胸に刻みつけた。
生きる世界が違う。もうそんなことを言える段階ではない。
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