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エピローグ
エピローグ
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きゃらきゃらと、明るい笑い声が響いていた。
場所は、王城の居館の一室だ。大きな窓からは春の陽光が注ぎ、室内は光で満ちていた。
エミールは目を細めて、ユリウスと戯れているエドゥルフを見つめた。三歳児は元気いっぱいにオモチャの剣を振っている。ユリウスはやはりオモチャの剣と盾を手に、甥っ子の騎士ごっこに付き合ってあげていた。
すこしもじっとしていない子どもの姿に、思わず「元気だなぁ」と感想が漏れる。
「そうね、とても元気ですわ」
隣に座るアマーリエが、吐息とともに答えた。
彼女の腕は、スヤスヤと眠る赤ちゃんを抱いていた。
エミールが登城を決めたのは、クラウスとの愛を確かめあった翌日だった。
子どもを産むことのできない自分は、もうクラウスの傍には居られないと思っていた。けれどエミールのアルファは、自分も子どもを産むことはできない、だなんておかしなことを言って、エミールのためにすべてを棄てようとしてくれた。
王城を出て、何者でもないただのクラウスとエミールとしてともに過ごす。そんな世界を、確かに見た。しあわせな夢の世界だ。
けれど、現実を棄てきれなかったのはエミールの方だった。
騎士であるクラウスも、王族であるクラウスも、何者でもないクラウスも、ぜんぶ好きだから。
彼が一番彼らしく生きることのできる場所で、エミールもともに在ろうと決めたのだ。
その決断は、クラウスの愛があればこそできたことだと思う。
エミールはエミールであるだけでいいのだ、と。クラウスがそう言ってくれたから、エミールはおのれを受け入れることができた。
騎士として、王族として生きるクラウスと、一生涯をともにする。揺らぎない覚悟が胸の深くで芽吹いたら、不思議とアマーリエに会うことも怖くなくなった。
「オレも、一緒に王城へ行くよ」
騎士団の制服に身を包んだクラウスへと、朝食の後にそう告げたら、蒼い瞳が心配げにすこし歪んだ。
「アマルにお祝いを言いたいし……だけどちょっと不安だから、最初だけ一緒に居てくれる?」
「無論だ。最初だけと言わずにずっと一緒に居る」
「あなたは仕事があるだろ? 最初だけ、手を握ってて。オレが大丈夫そうなら騎士団に行っていいから」
「……」
「ラスが」
エミールは男の頬をてのひらで撫で、小さく笑って続けた。
「ラスが、オレに愛をくれたから。オレ、たぶん、もう大丈夫だと思う」
三か月もの間、ずっと心配をかけ続けた。正気を失って暴れることもあった。そのせいでお腹の傷の治りは遅く、医師のベルンハルトも気が気ではなかっただろう。
そんなエミールを、クラウスは辛抱強く支えてくれた。エミールのいのちは、彼の愛が繋いでくれたのだ。
もう大丈夫。ようやくそう思えたのも、すべてクラウスのおかげだ。
それに。
「それに、スヴェンが魂寄りの実をくれたしね。オレの体に『狼』が入ったから、もうオレには災厄は起こらないんだって」
魂寄りの赤い木の実。それをエミールに分けてくれたスヴェンは、黙って頭を下げた。
来年の春には、魂寄りの木にはまた再び赤い実がなるだろう。エミールの赤ちゃんの骨の欠片を埋めた、あの木に。
「『狼』だけじゃない。私も傍に居る」
「うん。知ってる」
クラウスとともにある未来。エミールはもうそれを疑うことはない。
「ずっと一緒に居るよ、ラス」
ささやいて、触れるだけのキスをする。
クラウスが微笑んだ。甘く蕩けるような笑みだった。
「登城されるなら先に着替えですよ」
スヴェンの冷静な声が割り込んできて、エミールは慌てて身支度を整えた。
アマーリエの待つ部屋の扉を開くときは、さすがに勇気が必要だった。
クラウスはエミールが願ったとおり、ずっと手を繋いでいてくれた。それに励まされて、ゆっくりと押し開いた。
途端にドンっと前から抱きつかれた。
「エミール!!」
飛び込んできたのはアマーリエだった。彼女は泣いていた。泣きながらエミールを抱きしめてくれた。
「アマル……久しぶり」
「心配しましたわ」
「うん」
「食事は、ちゃんとしてますの?」
「うん」
「痩せましたわね」
「そうかな」
ぐずぐすとアマーリエが鼻を啜った。泣いている母親に気づいたのか、子ども用の寝台から大きな泣き声が響いた。
赤ん坊の声に、エミールの肩が我知らず強張った。それに気づいたクラウスが背を撫でてくれる。
「いい加減私のオメガから離れろ」
エミールから強引にアマーリエを引き剥がしたクラウスが、眼差しだけで「帰るか?」と問いかけてきた。エミールは首を横に振って「大丈夫」と答えた。
「アマル、出産おめでとう」
おめでとう。その言葉を口にすると、胸がストンと軽くなった。アマーリエの出産を、ちゃんと喜べている。そう思えた。
「ありがとう。エミール、顔を見てくださる?」
「もちろん」
片手をクラウスに、もう片方の手をアマーリエに引かれて、エミールは寝台に近づいた。
小さなベッドで、小さな赤ちゃんが泣いていた。うわぁぁぁん、と顔を真っ赤にして泣き声を上げている赤ちゃんを、アマーリエが慣れた仕草で抱き上げる。
よしよし、と揺すってあやしている内に、赤ちゃんの小さなこぶしがエミールの腕にとんと当たった。
エミールはハッとして咄嗟に体を引いた。それから恐る恐る指を伸ばした。赤ちゃんのやわらかな桃色の肌。そこに指先を触れて、すぐに離れた。
気づけば涙が溢れていた。
クラウスとアマーリエがこちらを見つめている。エミールは震える息を吐いて、ごめん、と謝った。
「ごめん。大丈夫。可愛いなぁって思って……マリウス様に似てるね」
「エミール、抱いてみる?」
アマーリエがやさしい声で尋ねてきた。エミールは自身の胸元を握りしめ、赤ちゃんとアマーリエを交互に見た。
「……今日は、やめとく」
「そう」
「でもいつか、抱っこさせてほしい」
「ええ。いつでもよろしくてよ」
赤ん坊の泣き声はやがて小さくなり、いつの間にか眠りについたようだった。
寝顔を見つめながら、エミールは可愛いなぁと思った。
痛みはあった。胸の中に。どうしようもない痛みが。けれどそれ以上に、繋いだ手からクラウスの愛情が流れこんでくるから。たぶんこれも、時間が解決してくれるのだろうと思えた。
エミールとアマーリエがソファに腰を下ろした段で、マリウスが顔を覗かせた。ユリウスも呼んでいいかと問われて、頷く。
ユリウスはすぐにやってきた。エドゥルフも一緒だった。
すこし見ない内にまた身長が伸びたような気がするユリウスが、キラキラしい笑顔でエミールをハグしてきたとき、隣でごりっと鈍い音が鳴った。クラウスが苦々しい顔つきをしている。
「どうしたんですか?」
エミールが驚いて尋ねると、ユリウスが、
「エミール殿。兄上は僕がエミール殿にくっつくのが嫌なんですよ。でも僕のことも大好きだから、無理やりに引き剥がすこともできずに奥歯を噛んで耐えているんです」
と耳打ちしてきた。
十三歳の子ども相手になにをしているのかと呆れておのれのアルファを見上げたら、真面目くさった声が返ってくる。
「ユーリとはいえ、子どもとはいえ、アルファはアルファだ」
このひとはバカだなぁ、とエミールは苦笑いをこぼした。
ユリウスのおかげでようやく緊張がほどけ、エミールがアマーリエたちとの会話を楽しめるようになった頃、繋がれていたクラウスの手が離れた。
彼はマリウスの隣へ行き、なにごとかを話している。
そのうちにエドゥルフの騎士ごっこが始まった。部屋に響く笑い声を聞きながら、エミールはぼつりと口を開いた。
「オレ、養護施設の慰問、続けるよ」
「エミール……」
「子どもはやっぱりいいね。生きてるって力を、全身で発してるから、オレも元気をもらえる」
「元気すぎて、こっちの力を吸い取られることもありますわよ」
「ふふっ。それはそれで、いいことだよ」
元ヴローム村の子どもたちは元気だろうか。アイクは、ミアは、どうしているだろう。
明日にでも、会いに行ってみようか。それとも屋敷にずっと閉じこもっていたから、明日はしんどくなって寝込んでしまうだろうか? それでもそれはきっと、心地良い疲れだろう。
「エミール」
アマーリエがエミールの手の甲に、そっと手を重ねてきた。
ユリウスたちの姿から彼女の方へ視線を移すと、膝の上の赤ん坊も目に入った。
「あのね、マリウスとも相談していたのだけれど……エミール、もしもね、もしもあなたさえ良ければ、この子の名付け親になってくださらないかしら」
アマーリエの申し出は、想像もしなかったものだった。
エミールは束の間唖然と彼女の赤みがかった瞳を見つめていた。
アマーリエはひどく緊張した面持ちだった。
「あなたが、嫌じゃなければ」
そう付け足して、忙しないまばたきをする。
自分の提案がエミールを傷つけてはいまいか、それを心配しているのがありありと伝わってきた。
エミールはアマーリエの手を握り返した。
「アマル、ありがとう」
「エミール……」
「でも、やめとく」
「……わたくし、あなたを怒らせてしまったかしら」
「違うんだ。アマル、オレは怒ってないし傷ついてもない。アマルの気持ちは嬉しいよ。でも」
でも、と続く言葉をすこし探して、エミールは赤ちゃんの髪をそっと撫でた。
「でも、この子にはなにも背負わせたくない。オレが名前をつけちゃうと、代わりみたいになっちゃうから。この子はきみの子だよ、アマル。オレの傷を癒すための子じゃない」
アマーリエの目から、ぼろり、ぼろりと涙が落ちた。
「わたくし……わたくしが、あなたにしてあげられることがなくて、悔しい……」
「アマル」
「あなたはわたくしの親友なのに……わたくしにできることは、なにもないの。それが悔しくて仕方ないわ」
「アマーリエ、違うんだ。オレはきみを責めてない。誰もきみを責めたりしない。この子はきみの子だよ、アマル。きみはそれを誇っていいんだ」
彼女にも負い目があるのかもしれないと、そのときエミールは感じた。
自分だけが無事に出産を果たした。その負い目が。
けれどそれはおかしな話だ。アマーリエはなにも悪くないのに。自身の出産を素直に喜べないなんて、あまりに彼女が可哀想だった。
「アマーリエ。オレを親友と言ってくれるきみが、オレは好きだよ。オレはこの子がこの世に生まれてくれたことを、きみと一緒に喜びたい。この子を一番に愛するのはアマルとマリウス様だけど……二番目に、オレとクラウス様を入れてくれる?」
「エミール……ええ、ええ、もちろんよ」
アマーリエが幾度も頷いた。
誰もが傷ついている。だけどその傷の上に、新しい愛が生まれている。なんど傷ついても、新たななにかを得て、そうやってこれからも時を刻んでゆくのだろう。
エミールは眠る赤子を見つめながら、いつかこの子を抱くであろう自分を想像した。きっとそれは、そう遠くない未来に実現するに違いない。
クラウスと一緒に、この子を抱きしめる未来が、明るくやわらかな光に満ちていればいい。
エミールはそっと、おのれの下腹部に手を置いた。
服の下にあるのはもはや傷痕ではなかった。クラウスが、エミールのいのちの形だと言ってくれたから。それに、エミールの体には、魂寄りの実が入っている。『狼』たちの魂と、名前のない墓標の下に居る赤ちゃんの魂が。
エミールは春が来るたびにあの酸っぱい赤い実を食べて、いのちを繋いでゆくのだ。
「ははぁ~っ」
急に元気のいい声が響いて、エミールはハッと注意を引き戻された。
ふと見れば、エドゥルフの騎士ごっこが様相を変えていた。
両手に剣を掲げ持ったユリウスが厳かな雰囲気で立ち、その前にエドゥルフが片膝をついて頭を下げている。可愛らしい敬礼だ。
ユリウスが、
「エディ、左手は後ろだよ」
と甥っ子に教えている。
アマーリエが「まぁ」と小さな笑いを漏らした。
「佩剣の儀を真似ているのね」
「騎士の叙任式?」
「ええ。ユーリが王様役ね。騎士は国王から剣を授かるから」
「騎士って、跪くのが好きだよね」
「まぁ……! なにを言ってるの、エミール!」
アマーリエの目が真ん丸に見開かれた。
「我が国の騎士は膝をつかないことで有名ですのに!」
「は?」
今度はエミールが驚く番だった。
膝をつかない? なにを言ってるのだろう。
だってクラウスは、エミールと会ってさほど間がないときからエミールに跪いて求婚してきたのに。
「嘘だろ?」
「まぁまぁ! あなたこそ嘘でしょう? 騎士はまもるものがあるならば膝をついてはならない、それが騎士の心得ですわ。ですから騎士は、国王陛下以外に最敬礼など見せませんわ。必要なときは略式の敬礼をしますのよ」
「……ほんとに?」
「本当ですわ。ユーリ、ちょっといらっしゃいな」
アマーリエがなにを思ったのか、エドゥルフの儀式を遮ってユリウスを手招いた。
ユリウスは甥っ子に「ちょっと待ってね」と声をかけ、こちらへ歩み寄ってくる。
王子様そのものというような彼の麗しい顔を見上げて、アマーリエが絨毯の敷かれた床を指さした。
「ユーリ、わたくしに跪けますこと?」
「ええ?」
ユリウスが嫌そうに眉をしかめた。
「なんで僕がアマル殿に跪かないといけないんですか」
「あら、できませんの?」
「嫌ですよ。僕はクラウス兄上のような騎士になりますからね。騎士が跪くのは国王陛下だけですよ」
きっぱりと言い切ったユリウスの言葉に、アマーリエが「ほらね」というようにエミールへ目配せをしてきた。
エミールは狐につままれたような気分になった。騎士は跪かない? ではなぜクラウスは……。
不思議に思ったエミールの耳に、ユリウスの声が聞こえてくる。
「それと、まだ見ぬ僕のつがいですね。僕の最愛が見つかったなら、僕はいくらでも跪きますよ」
大人びたことを言うユリウスに、エミールは思わず問いかけていた。
「最愛になら、跪くんですか?」
「ええ」
なぜエミールがいまさらそんなことを聞くのか、とばかりに不思議そうにまばたきをしたユリウスが、きっぱりと頷く。
「騎士が跪くのは、国王以外には、もっとも愛しい者に愛を捧げるときだけですよ。忠誠は、国王に。愛は、おのれの最愛に」
「騎士の最敬礼が向けられるのは、一生で二人だけ、とも言われますわね。陛下と、騎士にもっとも愛される者の、二人だけ」
アマーリエが微笑みながら言葉を付け足した。
待ちきれなくなったエドゥルフがユリウスを呼んでいる。ユリウスは一礼をして甥っ子のところへ戻っていった。
その後姿を呆然と見ていたら、
「エミールあなた、本当に知りませんでしたの?」
とアマーリエに問われた。
「知らなかった……」
こくりと頷いて。エミールは視線をクラウスへと向けた。壁際でマリウスと話している、エミールの騎士。
「あのひとは、オレに言ってないことがまだたくさんあるんだ……」
この先あと幾度、エミールはクラウスに驚かされるのだろう。
「言葉が足りないのは仕方ありませんわね。だって、クラウスですもの」
「うん……ラスだから、仕方ない」
アマーリエとひとしきり笑い合って、エミールは立ち上がった。
どうしようもない衝動のままに、勢いよく足を踏み出す。
クラウスの蒼い瞳が、ハッとこちらを向いた。エミールは両手を広げて、いとしい騎士の胸に飛び込んだ。
「もうっ……この、バカ王子っ!」
「どうした、急に……」
クラウスが困惑しながらも、エミールをしっかりと受け止めてくれる。
鼻先に彼の匂いが香った。
そこにかなしみの匂いはもうなかった。
愛に満ちた匂いだけが、エミールを包み込んでいた。
『騎士は愛を束ね、運命のオメガへと跪く』・完
場所は、王城の居館の一室だ。大きな窓からは春の陽光が注ぎ、室内は光で満ちていた。
エミールは目を細めて、ユリウスと戯れているエドゥルフを見つめた。三歳児は元気いっぱいにオモチャの剣を振っている。ユリウスはやはりオモチャの剣と盾を手に、甥っ子の騎士ごっこに付き合ってあげていた。
すこしもじっとしていない子どもの姿に、思わず「元気だなぁ」と感想が漏れる。
「そうね、とても元気ですわ」
隣に座るアマーリエが、吐息とともに答えた。
彼女の腕は、スヤスヤと眠る赤ちゃんを抱いていた。
エミールが登城を決めたのは、クラウスとの愛を確かめあった翌日だった。
子どもを産むことのできない自分は、もうクラウスの傍には居られないと思っていた。けれどエミールのアルファは、自分も子どもを産むことはできない、だなんておかしなことを言って、エミールのためにすべてを棄てようとしてくれた。
王城を出て、何者でもないただのクラウスとエミールとしてともに過ごす。そんな世界を、確かに見た。しあわせな夢の世界だ。
けれど、現実を棄てきれなかったのはエミールの方だった。
騎士であるクラウスも、王族であるクラウスも、何者でもないクラウスも、ぜんぶ好きだから。
彼が一番彼らしく生きることのできる場所で、エミールもともに在ろうと決めたのだ。
その決断は、クラウスの愛があればこそできたことだと思う。
エミールはエミールであるだけでいいのだ、と。クラウスがそう言ってくれたから、エミールはおのれを受け入れることができた。
騎士として、王族として生きるクラウスと、一生涯をともにする。揺らぎない覚悟が胸の深くで芽吹いたら、不思議とアマーリエに会うことも怖くなくなった。
「オレも、一緒に王城へ行くよ」
騎士団の制服に身を包んだクラウスへと、朝食の後にそう告げたら、蒼い瞳が心配げにすこし歪んだ。
「アマルにお祝いを言いたいし……だけどちょっと不安だから、最初だけ一緒に居てくれる?」
「無論だ。最初だけと言わずにずっと一緒に居る」
「あなたは仕事があるだろ? 最初だけ、手を握ってて。オレが大丈夫そうなら騎士団に行っていいから」
「……」
「ラスが」
エミールは男の頬をてのひらで撫で、小さく笑って続けた。
「ラスが、オレに愛をくれたから。オレ、たぶん、もう大丈夫だと思う」
三か月もの間、ずっと心配をかけ続けた。正気を失って暴れることもあった。そのせいでお腹の傷の治りは遅く、医師のベルンハルトも気が気ではなかっただろう。
そんなエミールを、クラウスは辛抱強く支えてくれた。エミールのいのちは、彼の愛が繋いでくれたのだ。
もう大丈夫。ようやくそう思えたのも、すべてクラウスのおかげだ。
それに。
「それに、スヴェンが魂寄りの実をくれたしね。オレの体に『狼』が入ったから、もうオレには災厄は起こらないんだって」
魂寄りの赤い木の実。それをエミールに分けてくれたスヴェンは、黙って頭を下げた。
来年の春には、魂寄りの木にはまた再び赤い実がなるだろう。エミールの赤ちゃんの骨の欠片を埋めた、あの木に。
「『狼』だけじゃない。私も傍に居る」
「うん。知ってる」
クラウスとともにある未来。エミールはもうそれを疑うことはない。
「ずっと一緒に居るよ、ラス」
ささやいて、触れるだけのキスをする。
クラウスが微笑んだ。甘く蕩けるような笑みだった。
「登城されるなら先に着替えですよ」
スヴェンの冷静な声が割り込んできて、エミールは慌てて身支度を整えた。
アマーリエの待つ部屋の扉を開くときは、さすがに勇気が必要だった。
クラウスはエミールが願ったとおり、ずっと手を繋いでいてくれた。それに励まされて、ゆっくりと押し開いた。
途端にドンっと前から抱きつかれた。
「エミール!!」
飛び込んできたのはアマーリエだった。彼女は泣いていた。泣きながらエミールを抱きしめてくれた。
「アマル……久しぶり」
「心配しましたわ」
「うん」
「食事は、ちゃんとしてますの?」
「うん」
「痩せましたわね」
「そうかな」
ぐずぐすとアマーリエが鼻を啜った。泣いている母親に気づいたのか、子ども用の寝台から大きな泣き声が響いた。
赤ん坊の声に、エミールの肩が我知らず強張った。それに気づいたクラウスが背を撫でてくれる。
「いい加減私のオメガから離れろ」
エミールから強引にアマーリエを引き剥がしたクラウスが、眼差しだけで「帰るか?」と問いかけてきた。エミールは首を横に振って「大丈夫」と答えた。
「アマル、出産おめでとう」
おめでとう。その言葉を口にすると、胸がストンと軽くなった。アマーリエの出産を、ちゃんと喜べている。そう思えた。
「ありがとう。エミール、顔を見てくださる?」
「もちろん」
片手をクラウスに、もう片方の手をアマーリエに引かれて、エミールは寝台に近づいた。
小さなベッドで、小さな赤ちゃんが泣いていた。うわぁぁぁん、と顔を真っ赤にして泣き声を上げている赤ちゃんを、アマーリエが慣れた仕草で抱き上げる。
よしよし、と揺すってあやしている内に、赤ちゃんの小さなこぶしがエミールの腕にとんと当たった。
エミールはハッとして咄嗟に体を引いた。それから恐る恐る指を伸ばした。赤ちゃんのやわらかな桃色の肌。そこに指先を触れて、すぐに離れた。
気づけば涙が溢れていた。
クラウスとアマーリエがこちらを見つめている。エミールは震える息を吐いて、ごめん、と謝った。
「ごめん。大丈夫。可愛いなぁって思って……マリウス様に似てるね」
「エミール、抱いてみる?」
アマーリエがやさしい声で尋ねてきた。エミールは自身の胸元を握りしめ、赤ちゃんとアマーリエを交互に見た。
「……今日は、やめとく」
「そう」
「でもいつか、抱っこさせてほしい」
「ええ。いつでもよろしくてよ」
赤ん坊の泣き声はやがて小さくなり、いつの間にか眠りについたようだった。
寝顔を見つめながら、エミールは可愛いなぁと思った。
痛みはあった。胸の中に。どうしようもない痛みが。けれどそれ以上に、繋いだ手からクラウスの愛情が流れこんでくるから。たぶんこれも、時間が解決してくれるのだろうと思えた。
エミールとアマーリエがソファに腰を下ろした段で、マリウスが顔を覗かせた。ユリウスも呼んでいいかと問われて、頷く。
ユリウスはすぐにやってきた。エドゥルフも一緒だった。
すこし見ない内にまた身長が伸びたような気がするユリウスが、キラキラしい笑顔でエミールをハグしてきたとき、隣でごりっと鈍い音が鳴った。クラウスが苦々しい顔つきをしている。
「どうしたんですか?」
エミールが驚いて尋ねると、ユリウスが、
「エミール殿。兄上は僕がエミール殿にくっつくのが嫌なんですよ。でも僕のことも大好きだから、無理やりに引き剥がすこともできずに奥歯を噛んで耐えているんです」
と耳打ちしてきた。
十三歳の子ども相手になにをしているのかと呆れておのれのアルファを見上げたら、真面目くさった声が返ってくる。
「ユーリとはいえ、子どもとはいえ、アルファはアルファだ」
このひとはバカだなぁ、とエミールは苦笑いをこぼした。
ユリウスのおかげでようやく緊張がほどけ、エミールがアマーリエたちとの会話を楽しめるようになった頃、繋がれていたクラウスの手が離れた。
彼はマリウスの隣へ行き、なにごとかを話している。
そのうちにエドゥルフの騎士ごっこが始まった。部屋に響く笑い声を聞きながら、エミールはぼつりと口を開いた。
「オレ、養護施設の慰問、続けるよ」
「エミール……」
「子どもはやっぱりいいね。生きてるって力を、全身で発してるから、オレも元気をもらえる」
「元気すぎて、こっちの力を吸い取られることもありますわよ」
「ふふっ。それはそれで、いいことだよ」
元ヴローム村の子どもたちは元気だろうか。アイクは、ミアは、どうしているだろう。
明日にでも、会いに行ってみようか。それとも屋敷にずっと閉じこもっていたから、明日はしんどくなって寝込んでしまうだろうか? それでもそれはきっと、心地良い疲れだろう。
「エミール」
アマーリエがエミールの手の甲に、そっと手を重ねてきた。
ユリウスたちの姿から彼女の方へ視線を移すと、膝の上の赤ん坊も目に入った。
「あのね、マリウスとも相談していたのだけれど……エミール、もしもね、もしもあなたさえ良ければ、この子の名付け親になってくださらないかしら」
アマーリエの申し出は、想像もしなかったものだった。
エミールは束の間唖然と彼女の赤みがかった瞳を見つめていた。
アマーリエはひどく緊張した面持ちだった。
「あなたが、嫌じゃなければ」
そう付け足して、忙しないまばたきをする。
自分の提案がエミールを傷つけてはいまいか、それを心配しているのがありありと伝わってきた。
エミールはアマーリエの手を握り返した。
「アマル、ありがとう」
「エミール……」
「でも、やめとく」
「……わたくし、あなたを怒らせてしまったかしら」
「違うんだ。アマル、オレは怒ってないし傷ついてもない。アマルの気持ちは嬉しいよ。でも」
でも、と続く言葉をすこし探して、エミールは赤ちゃんの髪をそっと撫でた。
「でも、この子にはなにも背負わせたくない。オレが名前をつけちゃうと、代わりみたいになっちゃうから。この子はきみの子だよ、アマル。オレの傷を癒すための子じゃない」
アマーリエの目から、ぼろり、ぼろりと涙が落ちた。
「わたくし……わたくしが、あなたにしてあげられることがなくて、悔しい……」
「アマル」
「あなたはわたくしの親友なのに……わたくしにできることは、なにもないの。それが悔しくて仕方ないわ」
「アマーリエ、違うんだ。オレはきみを責めてない。誰もきみを責めたりしない。この子はきみの子だよ、アマル。きみはそれを誇っていいんだ」
彼女にも負い目があるのかもしれないと、そのときエミールは感じた。
自分だけが無事に出産を果たした。その負い目が。
けれどそれはおかしな話だ。アマーリエはなにも悪くないのに。自身の出産を素直に喜べないなんて、あまりに彼女が可哀想だった。
「アマーリエ。オレを親友と言ってくれるきみが、オレは好きだよ。オレはこの子がこの世に生まれてくれたことを、きみと一緒に喜びたい。この子を一番に愛するのはアマルとマリウス様だけど……二番目に、オレとクラウス様を入れてくれる?」
「エミール……ええ、ええ、もちろんよ」
アマーリエが幾度も頷いた。
誰もが傷ついている。だけどその傷の上に、新しい愛が生まれている。なんど傷ついても、新たななにかを得て、そうやってこれからも時を刻んでゆくのだろう。
エミールは眠る赤子を見つめながら、いつかこの子を抱くであろう自分を想像した。きっとそれは、そう遠くない未来に実現するに違いない。
クラウスと一緒に、この子を抱きしめる未来が、明るくやわらかな光に満ちていればいい。
エミールはそっと、おのれの下腹部に手を置いた。
服の下にあるのはもはや傷痕ではなかった。クラウスが、エミールのいのちの形だと言ってくれたから。それに、エミールの体には、魂寄りの実が入っている。『狼』たちの魂と、名前のない墓標の下に居る赤ちゃんの魂が。
エミールは春が来るたびにあの酸っぱい赤い実を食べて、いのちを繋いでゆくのだ。
「ははぁ~っ」
急に元気のいい声が響いて、エミールはハッと注意を引き戻された。
ふと見れば、エドゥルフの騎士ごっこが様相を変えていた。
両手に剣を掲げ持ったユリウスが厳かな雰囲気で立ち、その前にエドゥルフが片膝をついて頭を下げている。可愛らしい敬礼だ。
ユリウスが、
「エディ、左手は後ろだよ」
と甥っ子に教えている。
アマーリエが「まぁ」と小さな笑いを漏らした。
「佩剣の儀を真似ているのね」
「騎士の叙任式?」
「ええ。ユーリが王様役ね。騎士は国王から剣を授かるから」
「騎士って、跪くのが好きだよね」
「まぁ……! なにを言ってるの、エミール!」
アマーリエの目が真ん丸に見開かれた。
「我が国の騎士は膝をつかないことで有名ですのに!」
「は?」
今度はエミールが驚く番だった。
膝をつかない? なにを言ってるのだろう。
だってクラウスは、エミールと会ってさほど間がないときからエミールに跪いて求婚してきたのに。
「嘘だろ?」
「まぁまぁ! あなたこそ嘘でしょう? 騎士はまもるものがあるならば膝をついてはならない、それが騎士の心得ですわ。ですから騎士は、国王陛下以外に最敬礼など見せませんわ。必要なときは略式の敬礼をしますのよ」
「……ほんとに?」
「本当ですわ。ユーリ、ちょっといらっしゃいな」
アマーリエがなにを思ったのか、エドゥルフの儀式を遮ってユリウスを手招いた。
ユリウスは甥っ子に「ちょっと待ってね」と声をかけ、こちらへ歩み寄ってくる。
王子様そのものというような彼の麗しい顔を見上げて、アマーリエが絨毯の敷かれた床を指さした。
「ユーリ、わたくしに跪けますこと?」
「ええ?」
ユリウスが嫌そうに眉をしかめた。
「なんで僕がアマル殿に跪かないといけないんですか」
「あら、できませんの?」
「嫌ですよ。僕はクラウス兄上のような騎士になりますからね。騎士が跪くのは国王陛下だけですよ」
きっぱりと言い切ったユリウスの言葉に、アマーリエが「ほらね」というようにエミールへ目配せをしてきた。
エミールは狐につままれたような気分になった。騎士は跪かない? ではなぜクラウスは……。
不思議に思ったエミールの耳に、ユリウスの声が聞こえてくる。
「それと、まだ見ぬ僕のつがいですね。僕の最愛が見つかったなら、僕はいくらでも跪きますよ」
大人びたことを言うユリウスに、エミールは思わず問いかけていた。
「最愛になら、跪くんですか?」
「ええ」
なぜエミールがいまさらそんなことを聞くのか、とばかりに不思議そうにまばたきをしたユリウスが、きっぱりと頷く。
「騎士が跪くのは、国王以外には、もっとも愛しい者に愛を捧げるときだけですよ。忠誠は、国王に。愛は、おのれの最愛に」
「騎士の最敬礼が向けられるのは、一生で二人だけ、とも言われますわね。陛下と、騎士にもっとも愛される者の、二人だけ」
アマーリエが微笑みながら言葉を付け足した。
待ちきれなくなったエドゥルフがユリウスを呼んでいる。ユリウスは一礼をして甥っ子のところへ戻っていった。
その後姿を呆然と見ていたら、
「エミールあなた、本当に知りませんでしたの?」
とアマーリエに問われた。
「知らなかった……」
こくりと頷いて。エミールは視線をクラウスへと向けた。壁際でマリウスと話している、エミールの騎士。
「あのひとは、オレに言ってないことがまだたくさんあるんだ……」
この先あと幾度、エミールはクラウスに驚かされるのだろう。
「言葉が足りないのは仕方ありませんわね。だって、クラウスですもの」
「うん……ラスだから、仕方ない」
アマーリエとひとしきり笑い合って、エミールは立ち上がった。
どうしようもない衝動のままに、勢いよく足を踏み出す。
クラウスの蒼い瞳が、ハッとこちらを向いた。エミールは両手を広げて、いとしい騎士の胸に飛び込んだ。
「もうっ……この、バカ王子っ!」
「どうした、急に……」
クラウスが困惑しながらも、エミールをしっかりと受け止めてくれる。
鼻先に彼の匂いが香った。
そこにかなしみの匂いはもうなかった。
愛に満ちた匂いだけが、エミールを包み込んでいた。
『騎士は愛を束ね、運命のオメガへと跪く』・完
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