7 / 45
第一章 魔女さんとの不思議な日々
作戦会議!
しおりを挟む
朝ごはんを食べ終わった姉妹は、いつもの村へと買い出しに向かっていた。また悪い動物に遭遇してしまうのは嫌だけれど、その時は魔女さんが助けに来てくれるはず。そんな自信が二人にはあった。
ルルとナナは手を繋いで、草原に囲まれた土の道を歩いている。
空は雲ひとつない青空、遠くには大きな山、見渡せば草原の緑。いつ見てもこの景色は素晴らしい。絵本の世界にでも迷い込んでしまったのでは無いかと錯覚する程だ。
「それで、お姉ちゃんの言ってたナイショ話ってなに?」
家を出る前、ルルから「ナイショ話がある!」と言われていた。しかしここまでの道のりで、ルルがナイショ話をする様子はなくひたすら村に前進をするだけだった。
「うん、もうそろそろ大丈夫かな」
ルルはそう言うと後ろを確認して、誰も居ないことを確認した。特に用はないが、釣られてナナも後ろを確認する。
「えっとね、昨日寝る時に私が言ってたこと分かる?」
「えーと、サーモン?」
「もっと後の話だよ!」
「えー、何か言ってたっけ?」
何も思い当たる節が無さそうに、宙に視線を飛ばしながら頭を捻るナナ。
「魔女さんが私たちの顔を見たいって言ってた時だよ!」
「あ~、その時ナナ眠たかったから、魔女さんの言葉しか覚えてないよぉ」
「うぐ……やっぱりか……」
私があの言葉を発した時、確かにナナは寝息を立てていた気がする。それは聞いていなくても仕方がないかと思ったルルは、偉そうに胸を張りながら話し始めた。
「魔女さんが私たちの顔を見たいんだって! でも目が見えないから見ることは出来ないらしいの」
「うん、それは分かるよ?」
「それでね! 私たちは魔女さんに命を救って貰ったでしょ?」
「うん、山で拾ってくれたのは魔女さんだもんね」
「そう! だから、私たちが魔女さんの目を治してあげるの!」
そう言い切ったルルの表情には、どこか誇らしさを感じさせるものがあった。
「どうやって治すのー?」
「分からない!」
それすらも言い切ったルル。なんだか清々しさも感じる。ナナは口をポカンと開いて、ルルへと掛ける言葉を探していた。
「お姉ちゃん、多分出来ないよ?」
「なんで!?」
「魔女さん、沢山の魔法が使えるのに目を治してないってことは、お医者さんでも治せないんじゃないかな……」
ナナの台詞にルルは歩む足を止めた。
「たしかに……」
ルルがボソッと言葉を発するのは珍しい。恐らく、それくらい動揺しているのだろう。
「どどどとうしよう! 魔女さんに目を治してあげるって言っちゃたよぉ」
「えぇ、お姉ちゃん言うのが早いよぉ……もっと治せそうになったら言わないと……」
これが姉妹での性格の差だ。そのことを改めて実感させられる。しかし、ルルは考えるのを辞めた訳ではない。今もナナの目の前で「うーん」と唸りながら思考を張り巡らせている。
何も無いような道に幼い姉妹が手を繋ぎながら立ち止まり、深く考えている光景は風変わりだ。誰か旅人が通れば、間違いなく心配して声を掛けてくるだろう。
「何か思いつきそう?」
ナナが心配そうにルルの顔を覗いてみるが、まだ何も思いつかないようだ。
「もう無理だよ……魔女さんが出来ないことでナナたちが出来る事なんて無いよぉ……」
そんなマイナス思考なナナを尻目に、ルルは笑顔を見せながら顔を上げた。
「そうだ! 村の人たちに聞けばいいんだ!」
顔をキラキラとさせながら言っているが、ナナはとても有効な手段とは思えなかった。
「それはダメだよ……だって魔女さんがあれだけ村に行きたがらないってことは何かあるんだよ……」
「魔女さんのことは言わなくても良いんだよ! 目を治す方法さえ聞ければ!」
確かにその方法だと、魔女さんのことは言わなくても良さそうだ。しかし医者が診てやると言い出したらどうするのだろうか。ルルの場合、簡単に魔女さんの家まで案内してしまいそうだが……。
「うーん……いいのかなぁ……」
何かが胸の奥で少しだけ引っかかっているのだが、その正体が分からない。それが口に出せずにいると、ルルが元気よく声を上げる。
「大丈夫だよ! 魔女さんの家にも人は呼ばないし、もちろん魔女さんにも会わせたりしないから!」
「うーん……それなら良いのかなぁ……」
ルルの勢いに圧倒されるナナ。しかし流石は双子だ、ナナの考えていた魔女さん家のことも、ルルは簡単に言い当てた。魔女さんの家に人を呼ばないとなれば、問題はないのかもしれない。そう思ったナナは、首を縦に振っていた。
「じゃあ分かったよぉ、村に行ったら聞き込みするんだね?」
「うん! 村の人には私から話し掛けるからナナは心配しなくてもいいよ!」
「わかった、ありがとう……」
ナナの引っ込み思案な性格を考慮して、自分が話すと言ってくれたルル。そう言われてしまっては断る理由もないと、もう一度首を縦に振った。
これで前へと進める。
ルルは止めていた足を再び動かし始め、ナナの手を引っ張るようにして歩き出す。
「よーし! 魔女さんへの恩返しだー! 絶対に目を治すぞー!」
「お、お~!」
魔女さんの目を治せたら喜ぶだろうな。そして、私たちの顔を見たら何と言うのだろう。
姉妹はそんな妄想を頭の中で繰り広げながら、村へと向かったのだった。
ルルとナナは手を繋いで、草原に囲まれた土の道を歩いている。
空は雲ひとつない青空、遠くには大きな山、見渡せば草原の緑。いつ見てもこの景色は素晴らしい。絵本の世界にでも迷い込んでしまったのでは無いかと錯覚する程だ。
「それで、お姉ちゃんの言ってたナイショ話ってなに?」
家を出る前、ルルから「ナイショ話がある!」と言われていた。しかしここまでの道のりで、ルルがナイショ話をする様子はなくひたすら村に前進をするだけだった。
「うん、もうそろそろ大丈夫かな」
ルルはそう言うと後ろを確認して、誰も居ないことを確認した。特に用はないが、釣られてナナも後ろを確認する。
「えっとね、昨日寝る時に私が言ってたこと分かる?」
「えーと、サーモン?」
「もっと後の話だよ!」
「えー、何か言ってたっけ?」
何も思い当たる節が無さそうに、宙に視線を飛ばしながら頭を捻るナナ。
「魔女さんが私たちの顔を見たいって言ってた時だよ!」
「あ~、その時ナナ眠たかったから、魔女さんの言葉しか覚えてないよぉ」
「うぐ……やっぱりか……」
私があの言葉を発した時、確かにナナは寝息を立てていた気がする。それは聞いていなくても仕方がないかと思ったルルは、偉そうに胸を張りながら話し始めた。
「魔女さんが私たちの顔を見たいんだって! でも目が見えないから見ることは出来ないらしいの」
「うん、それは分かるよ?」
「それでね! 私たちは魔女さんに命を救って貰ったでしょ?」
「うん、山で拾ってくれたのは魔女さんだもんね」
「そう! だから、私たちが魔女さんの目を治してあげるの!」
そう言い切ったルルの表情には、どこか誇らしさを感じさせるものがあった。
「どうやって治すのー?」
「分からない!」
それすらも言い切ったルル。なんだか清々しさも感じる。ナナは口をポカンと開いて、ルルへと掛ける言葉を探していた。
「お姉ちゃん、多分出来ないよ?」
「なんで!?」
「魔女さん、沢山の魔法が使えるのに目を治してないってことは、お医者さんでも治せないんじゃないかな……」
ナナの台詞にルルは歩む足を止めた。
「たしかに……」
ルルがボソッと言葉を発するのは珍しい。恐らく、それくらい動揺しているのだろう。
「どどどとうしよう! 魔女さんに目を治してあげるって言っちゃたよぉ」
「えぇ、お姉ちゃん言うのが早いよぉ……もっと治せそうになったら言わないと……」
これが姉妹での性格の差だ。そのことを改めて実感させられる。しかし、ルルは考えるのを辞めた訳ではない。今もナナの目の前で「うーん」と唸りながら思考を張り巡らせている。
何も無いような道に幼い姉妹が手を繋ぎながら立ち止まり、深く考えている光景は風変わりだ。誰か旅人が通れば、間違いなく心配して声を掛けてくるだろう。
「何か思いつきそう?」
ナナが心配そうにルルの顔を覗いてみるが、まだ何も思いつかないようだ。
「もう無理だよ……魔女さんが出来ないことでナナたちが出来る事なんて無いよぉ……」
そんなマイナス思考なナナを尻目に、ルルは笑顔を見せながら顔を上げた。
「そうだ! 村の人たちに聞けばいいんだ!」
顔をキラキラとさせながら言っているが、ナナはとても有効な手段とは思えなかった。
「それはダメだよ……だって魔女さんがあれだけ村に行きたがらないってことは何かあるんだよ……」
「魔女さんのことは言わなくても良いんだよ! 目を治す方法さえ聞ければ!」
確かにその方法だと、魔女さんのことは言わなくても良さそうだ。しかし医者が診てやると言い出したらどうするのだろうか。ルルの場合、簡単に魔女さんの家まで案内してしまいそうだが……。
「うーん……いいのかなぁ……」
何かが胸の奥で少しだけ引っかかっているのだが、その正体が分からない。それが口に出せずにいると、ルルが元気よく声を上げる。
「大丈夫だよ! 魔女さんの家にも人は呼ばないし、もちろん魔女さんにも会わせたりしないから!」
「うーん……それなら良いのかなぁ……」
ルルの勢いに圧倒されるナナ。しかし流石は双子だ、ナナの考えていた魔女さん家のことも、ルルは簡単に言い当てた。魔女さんの家に人を呼ばないとなれば、問題はないのかもしれない。そう思ったナナは、首を縦に振っていた。
「じゃあ分かったよぉ、村に行ったら聞き込みするんだね?」
「うん! 村の人には私から話し掛けるからナナは心配しなくてもいいよ!」
「わかった、ありがとう……」
ナナの引っ込み思案な性格を考慮して、自分が話すと言ってくれたルル。そう言われてしまっては断る理由もないと、もう一度首を縦に振った。
これで前へと進める。
ルルは止めていた足を再び動かし始め、ナナの手を引っ張るようにして歩き出す。
「よーし! 魔女さんへの恩返しだー! 絶対に目を治すぞー!」
「お、お~!」
魔女さんの目を治せたら喜ぶだろうな。そして、私たちの顔を見たら何と言うのだろう。
姉妹はそんな妄想を頭の中で繰り広げながら、村へと向かったのだった。
10
あなたにおすすめの小説
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。
猫菜こん
児童書・童話
小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。
中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!
そう意気込んでいたのに……。
「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」
私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。
巻き込まれ体質の不憫な中学生
ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主
咲城和凜(さきしろかりん)
×
圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良
和凜以外に容赦がない
天狼絆那(てんろうきずな)
些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。
彼曰く、私に一目惚れしたらしく……?
「おい、俺の和凜に何しやがる。」
「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」
「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」
王道で溺愛、甘すぎる恋物語。
最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。
クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました
藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。
相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。
さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!?
「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」
星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。
「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」
「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」
ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や
帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……?
「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」
「お前のこと、誰にも渡したくない」
クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。
「いっすん坊」てなんなんだ
こいちろう
児童書・童話
ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。
自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
グリモワールなメモワール、それはめくるめくメメントモリ
和本明子
児童書・童話
あの夏、ぼくたちは“本”の中にいた。
夏休みのある日。図書館で宿題をしていた「チハル」と「レン」は、『なんでも願いが叶う本』を探している少女「マリン」と出会う。
空想めいた話しに興味を抱いた二人は本探しを手伝うことに。
三人は図書館の立入禁止の先にある地下室で、光を放つ不思議な一冊の本を見つける。
手に取ろうとした瞬間、なんとその本の中に吸いこまれてしまう。
気がつくとそこは、幼い頃に読んだことがある児童文学作品の世界だった。
現実世界に戻る手がかりもないまま、チハルたちは作中の主人公のように物語を進める――ページをめくるように、様々な『物語の世界』をめぐることになる。
やがて、ある『未完の物語の世界』に辿り着き、そこでマリンが叶えたかった願いとは――
大切なものは物語の中で、ずっと待っていた。
四尾がつむぐえにし、そこかしこ
月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。
憧れのキラキラ王子さまが転校する。
女子たちの嘆きはひとしお。
彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。
だからとてどうこうする勇気もない。
うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。
家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。
まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。
ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、
三つのお仕事を手伝うことになったユイ。
達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。
もしかしたら、もしかしちゃうかも?
そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。
結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。
いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、
はたしてユイは何を求め願うのか。
少女のちょっと不思議な冒険譚。
ここに開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる