【完結】第一王子の婚約者になりましたが、妃になるにはまだまだ先がみえません!

風見ゆうみ

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17 刺客の正体

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「なぜ、そう思う?」
「殿下のお人柄については他国からは誤解が多いようですが、聞き取りさせていただいたところ、この国の数多くの女性が、あなたを絶賛されています」
「サナトラの女性を調べたのか?! 一体、いつ?!」
「まあ、それはさておきまして」

 王太子が質問するけれど、ラス様は話題をそらす。

 昨日、別宅で女の人達と話をしていたけど、王太子の話を聞いて回ってたのかな。
 どうせ侵入するなら、ってやつ?
 ある意味、スパイ行為みたいだけど。

「ユーニ様が危なくないと判断されたんですか」
「いや、危なくなれば助ければ良いか、というくらいの判断かな」
「え?!」

 私が思わず声を上げると、

「いや、すまんかった! ユウヤ殿とユウマ殿が選んだ相手というから、どんな女性か知りたくてな」

 王太子は謝ってはくれたけど、豪快に笑う。

「では何かあった場合、どう責任を?」

 ユウヤくんは彼の態度が気に入らなかったようで、不信感を感じさせる口調で尋ねた。

「心配要素があるなら盾になどせぬ。リア嬢が動いていなければ、余が助けておったよ」
「それは」

 ユウヤくんが何か言い返そうとしたのを、ラス様が無言で彼の前に腕を出して制した。

「証拠ならある。リア嬢が投げ捨てた剣を拾ってみよ」

 王太子の言葉に、ユウヤくんとラス様がリアの方に振り返る。
 リアが低木の向こうを指差すと、二人でその場に向かった。

「これは・・・・・」
「なんでこんなもんを落として帰るんだよ」

 剣を拾い、灯りがある道に戻ってきたラス様は、その剣を見た事でもあるのか声を上げ、近寄って確認したユウヤくんは頭に手を置いて呟く。

「何かわかったか?」
「あ、いえ」

 ラス様は誤魔化そうとしたけれど、

「剣についておる紋章はマヌグリラの王家のものだろう?」

 王太子は笑いながら言った。

「知っておられたんですか」
「さすがにわかるとも。今回は口にしておらんかったが、妹は渡さん、とか口にしておったからな」
「・・・・・」

 他国の王太子の話なのに、ラス様が片方の手で頭を抱えて絶句した。
 
 うーん。
 王太子って、こんなに自由奔放に動けるもんなの?
 どうやら、さっきの刺客はマヌグリラの王族みたいだ。
 ただ、王族みずから暗殺に関わろうとするなんて、自分達も逆に危ないと思うんだけど。
 それこそ、戦争になるだろうし。

「その剣はアダルシュ側から返してくれるか。こちらが返すとややこしくなりそうだ」
「承知致しました」

 ラス様は空間魔法も使えるようで、小さく呪文を唱えると、持っていた剣が一瞬にして消えてなくなった。
 それを見た王太子がラス様に話しかける。

「たしか、アダルシュの公爵、イッシュバルド家の長男だったな?」
「そうでございます、殿下」
「お主、我が国に来ぬか?」
「はい?」

 王太子の突然の提案に、ラス様だけでなく、私達も反応して王太子に視線を向ける。

「空間魔法も使えるようだし、先日の停戦会議でも感じたが、お主は宰相に向いておる。我が国に来て、その手腕を」
「「駄目です!!」」
「「お断りします!」」

 勧誘されている本人ではなく、私とリア、ユウヤくんとユウマくんが声をそろえてお断りする。

「いや、私の意思は」
「ない!!」
「ないです!!」

 ラス様が呆れた顔をして私達に言おうとした言葉を、また私達がかき消して否定する。

 あれ?
 前にもこんな事を話してたような?
 すると、王太子が豪快に笑い始めた。

「好かれておるな」
「とんでもない。使える人間がいなくなるから困るだけですよ」

 ラス様は微笑したあと、頭を下げる。

「有り難いお申し出でしたが、今回は見送らせていただきたく」
「今回は、か。お主にも色々とあるのだな」
「申し訳ありません」
「まあ良い。他に話したいこともあるし、少し付き合ってくれ」
「承知致しました。ユウヤ殿下とユウマ殿下はお二人を連れて先にお戻りください。せっかくですし、ダンスを楽しまれては?」

 私達の返事を待たずに、王太子と歩き出したラス様の背中を見ていると、なぜか不安がよぎった。
 それは、ユウヤくん達も一緒だったようで、さっきまでの私と同じように、ラス様の背中を見つめて立ち尽くしている。

 止めないといけない。

「ラスさまっ!」

 思った瞬間、駆け出していて、私はまたラス様の髪の毛をつかんでしまった。

「いっ?!」

 ラス様は前回と同じく後ろにのけぞると、髪をおさえながら、こちらに振り返った。

「またですか」
「ラス様! ファーストダンスをユウヤくんと踊ったあとなら踊ってくれるって言ってましたよね?!」

 表情を歪めているラス様に謝りもせず、私がまくし立てると、今度は困った顔になって答える。

「言ってましたが・・・・・」
「じゃあ、一緒に行かないと! お話に行ってしまったら間に合いません!」
「それは」
「ラス様、その後は私と踊ってくれますよね? レディのお願いを断ったり、待たせたりしませんよね?!」

 後から走ってきたリアがラス様の服をつかんで、追い打ちをかける。

「リアさんまで」

 私とリアがラス様の服をつかんで、同時に彼を見つめると、困ったように額に手を当てた。
 
 私達になんて断ったら良いか考えてる?

 でも、今行かせてしまったら、一生後悔する気がした。
 
 だから、なんとしても行かせまい、とラス様の服をつかむ手の力を強めた。

「アスラン王太子殿下」

 ユウヤくんの声が聞こえて振り返ると、真っ直ぐに王太子を見つめている彼の姿があった。

「彼は私の国の人間であり、幼い頃からの友人です。申し訳ありませんが、お話はまたの機会にしていただけませんでしょうか」

 ユウヤくんが言い終わり、頭を下げると、ユウマくんも隣に立ち頭を下げた。

「これは困ったな。ユウヤ殿とユウマ殿に頭を下げられて、女性二人から懇願の目をされては、連れて行けぬわな」
「申し訳ありません」
「構わぬ! 二人とも頭を上げてくれ!」

 ラス様の謝罪を受けたあと、王太子はユウヤくん達に言う。

「寛大な対応、恐れ入ります」
「立場的にはそう変わらんのだから、そう堅苦しい態度はよそうや。隣国なのだから、仲良くやらんとな」

 ユウヤくんの言葉に応えてから、今度はラス様にくっついている私達に向き直る。

「誰が誰の婚約者かわからんな」
「大事な人に順番なんてないですから」

 私がそう答えると、王太子はそれはもう楽しそうに笑った。

「たしか、夫を二人持たないといけなくなるとか?」
「「・・・・・・」」

 噂がだいぶまわっているんだな。
 他国まで流れてるんじゃ撤回できるんだろうか。

「余はどうだ?! 余を夫にしておけば問題の多くは解決すると思うが」
「・・・・・そういう手もありますね」

 ラス様が呟くので、リアが聞き返す。

「どういう事ですか?」
「王太子殿下と結婚した場合、殿下は奥様を何人も持てますから、前にユーニさんが気にしていた心配はなくなるわけです」
「え? あ、そういう事か」

 リアが納得し、ラス様から放れて、ユウヤくんとユウマくんの所へ行って話し始めた。
 
「ユーニ嬢は良いのか?」
「大変光栄なお申し出ですが、そうなった場合、私はラス様と決めてますので」

 ユウヤくんに聞かれないよう、小さな声で王太子に告げると、

「そうか! それは悪かった!」

 気分を害しもせずに笑ってくれた。

 なんか、思ったよりも良い人だった。
 足を踏んでしまって悪かったかも?

「時間をとらせたな。まだ、夜は始まったばかりだ。サナトラの夜を楽しんでいってくれ!」

 そう言って、王太子は私達を残し、ダンスホールではなく宮殿の方へ歩き去っていったのだった。
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