必要ないと判断したのはそちらでしょう?

風見ゆうみ

文字の大きさ
16 / 18

13 悲しい過去があるのかもしれないわね

しおりを挟む
 私の部屋に行き、早速、チワーに確認してみると、チワーは大きく首を縦に振った。

「魔物を操るには、その魔物よりも強い負の感情を持っている人間であれば可能じゃ。この国の魔物は人間よりも賢いものはおらんからな」
「そんなことって有り得るのか?」
「ありえるのじゃ。例えば誰かに家族の命を奪われた時、負の感情というものは大きくなるものじゃ」

 ランの質問に答えたあと、チワーがしゅんと顔を下に向けた。

 もしかして、チワーにも負の感情というものが芽生えたことがあるのかもしれない。
 そして、それは家族の命を奪われたということと関係するのかも……。

「ということは、サウロン陛下の命を狙っている誰かがいるかもしれないということだな?」
「そうなるじゃろうな」

 悲しいことを思い出させてしまったようで、チワーは、ランの言葉に答えたあと「すまぬ。体調が悪いのじゃ」と言って、チワーのために用意したベッドに潜り込み、わたし達の声に反応しようとはしなかった。

 チワーがそんな状態のため、城に帰るというランを見送ろうと、エントランスホールに向かって歩きながら会話する。

「もしかしたら、チワーには悲しい過去があるのかもしれないわね」
「そうだな。チワーがチワワの姿になってしまったのも、それが原因かもしれない。聖獣のことだから難しいかもしれないけど、少し調べてみる」
「ありがとう。チワーが元気になってくれると良いんだけど。チワーの好きなものって何かしら?」
「そうだな。クッキーは好きだな。というか甘いものが好きだ」
「甘いものを食べさせても良いのかしら?」
「本人はいいって言ってるぞ」
「それは本人が食べたいからいいって言ってるだけじゃないの」

 わたしが眉を寄せて言うと、ランが苦笑する。

「それはそうかもな。俺もなんだかんだ言って、チワーに甘かったみたいだ」
「そうね。でも、今日くらいは体にすぐに害が出るものじゃないのなら食べさせてあげようかな」
「そうだな」

 ランとはそんな話をして別れ、部屋に戻って、チワーに食べたいものを聞くと、尻尾を振って私に駆け寄ってきたのだった。


 次の日、ランからチワーらしきフェンリルについての話を聞いた。

 わたしが聖女の力に目覚めた日、フェンリルが2匹死んでいるらしい。
 人間がフェンリルを裏切り、魔物に殺させたのだという。
 その時、2匹のフェンリルが最後の力を振り絞って逃がした子供のフェンリルがいるらしく、それがチワーじゃないかということだった。

 多くの人はフェンリルと共に戦ったけれど、裏切った人物がいる。
 もしかすると、今回、陛下を狙わせている人物と同じ人物かもしれない。

 ランが候補としてあげた人間の中に、アウトン国の重鎮がいた。
 元老院の中の一人であり、その中でも発言力が強い。

 わたしをサウロン陛下から遠ざけて、彼を暗殺しようとしているのだとしたら……?

 チワーには辛い過去を思い出させてしまうかもしれないけれど、それを確認するために、わたしとランはチワーを連れて、アウトン国に行くことにした。





※あと2話。
本日中に終わります!

そして、こっそり新作をはじめております。
「こんなはずじゃなかった? それは残念でしたね」になります。
よろしければ、お読みいただけると嬉しいです。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

双子の妹を選んだ婚約者様、貴方に選ばれなかった事に感謝の言葉を送ります

すもも
恋愛
学園の卒業パーティ 人々の中心にいる婚約者ユーリは私を見つけて微笑んだ。 傍らに、私とよく似た顔、背丈、スタイルをした双子の妹エリスを抱き寄せながら。 「セレナ、お前の婚約者と言う立場は今、この瞬間、終わりを迎える」 私セレナが、ユーリの婚約者として過ごした7年間が否定された瞬間だった。

これまでは悉く妹に幸せを邪魔されていました。今後は違いますよ?

satomi
恋愛
ディラーノ侯爵家の義姉妹の姉・サマンサとユアノ。二人は同じ侯爵家のアーロン=ジェンキンスとの縁談に臨む。もともとはサマンサに来た縁談話だったのだが、姉のモノを悉く奪う義妹ユアノがお父様に「見合いの席に同席したい」と懇願し、何故かディラーノ家からは二人の娘が見合いの席に。 結果、ユアノがアーロンと婚約することになるのだが…

ダンスパーティーで婚約者から断罪された挙句に婚約破棄された私に、奇跡が起きた。

ねお
恋愛
 ブランス侯爵家で開催されたダンスパーティー。  そこで、クリスティーナ・ヤーロイ伯爵令嬢は、婚約者であるグスタフ・ブランス侯爵令息によって、貴族子女の出揃っている前で、身に覚えのない罪を、公開で断罪されてしまう。  「そんなこと、私はしておりません!」  そう口にしようとするも、まったく相手にされないどころか、悪の化身のごとく非難を浴びて、婚約破棄まで言い渡されてしまう。  そして、グスタフの横には小さく可憐な令嬢が歩いてきて・・・。グスタフは、その令嬢との結婚を高らかに宣言する。  そんな、クリスティーナにとって絶望しかない状況の中、一人の貴公子が、その舞台に歩み出てくるのであった。

婚約者を奪われた私は、他国で新しい生活を送ります

天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルクルは、エドガー王子から婚約破棄を言い渡されてしまう。 聖女を好きにったようで、婚約破棄の理由を全て私のせいにしてきた。 聖女と王子が考えた嘘の言い分を家族は信じ、私に勘当を言い渡す。 平民になった私だけど、問題なく他国で新しい生活を送ることができていた。

絶縁状をお受け取りくださいませ旦那様。~離縁の果てに私を待っていたのは初恋の人に溺愛される幸せな異国ライフでした

松ノ木るな
恋愛
 アリンガム侯爵家夫人ルシールは離婚手続きが進むさなかの夜、これから世話になる留学先の知人に手紙をしたためていた。  もう書き終えるかという頃、扉をノックする音が聞こえる。その訪ね人は、薄暗い取引で長年侯爵家に出入りしていた、美しい男性であった。

せっかく家の借金を返したのに、妹に婚約者を奪われて追放されました。でも、気にしなくていいみたいです。私には頼れる公爵様がいらっしゃいますから

甘海そら
恋愛
ヤルス伯爵家の長女、セリアには商才があった。 であれば、ヤルス家の借金を見事に返済し、いよいよ婚礼を間近にする。 だが、 「セリア。君には悪いと思っているが、私は運命の人を見つけたのだよ」  婚約者であるはずのクワイフからそう告げられる。  そのクワイフの隣には、妹であるヨカが目を細めて笑っていた。    気がつけば、セリアは全てを失っていた。  今までの功績は何故か妹のものになり、婚約者もまた妹のものとなった。  さらには、あらぬ悪名を着せられ、屋敷から追放される憂き目にも会う。  失意のどん底に陥ることになる。  ただ、そんな時だった。  セリアの目の前に、かつての親友が現れた。    大国シュリナの雄。  ユーガルド公爵家が当主、ケネス・トルゴー。  彼が仏頂面で手を差し伸べてくれば、彼女の運命は大きく変化していく。

【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください

ゆうき
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。 義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。 外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。 彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。 「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」 ――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。 ⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎

婚約破棄に乗り換え、上等です。私は名前を変えて隣国へ行きますね

ルーシャオ
恋愛
アンカーソン伯爵家令嬢メリッサはテイト公爵家後継のヒューバートから婚約破棄を言い渡される。幼い頃妹ライラをかばってできたあざを指して「失せろ、その顔が治ってから出直してこい」と言い放たれ、挙句にはヒューバートはライラと婚約することに。 失意のメリッサは王立寄宿学校の教師マギニスの言葉に支えられ、一人で生きていくことを決断。エミーと名前を変え、隣国アスタニア帝国に渡って書籍商になる。するとあるとき、ジーベルン子爵アレクシスと出会う。ひょんなことでアレクシスに顔のあざを見られ——。

処理中です...