必要ないと判断したのはそちらでしょう?

風見ゆうみ

文字の大きさ
17 / 18

14 触りたくないのよね

しおりを挟む
 自分の大好物を食べたことと、遠出するとわかったチワーはご機嫌になった。

 もちろん、遠出の理由は伝えてあり、会いに行く相手が親の仇かもしれないということは覚悟してくれたみたいだった。

「われにとっては憎き者だが、われは神獣だし、父上も母上も人間のために死んだのじゃ。それなのに、われが人間を殺すわけにはいかぬのじゃ。それに、そんなことをしたらわれは捕まってしまう、もしくは魔獣になってしまうやもしれん。そんなの嫌じゃ。これからもランディスとリンファと遊ぶのじゃ」
「遊びが目的かよ。神獣なんだろ?」
「神獣時々チワワじゃ!」
「チワワたまに神獣の間違いだろ」
「何てことを言うのじゃっ!」

 じゃれているランとチワーを見て和んでから、二人に告げる。

「覚悟はできた? アウトン国に向かうわよ!」

 私の言葉にランとチワーは大きく首を縦に振った。



 アウトン国の王城内にはもう、ほとんど人がいなかった。

 魔物の存在を感じるから、皆、避難したのかもしれない。

 魔物は、サウロン陛下だけを狙うように指示をされているようで、彼の部屋の前に行ってみると、何匹かの魔物が扉の前でウロウロしていた。

 部屋の扉に触れても入れないみたいなので、チーチルが結界を張ったのだと思われる。

「リンファ様!」

 元老院の一人である元公爵が、わたしのところにやって来て叫ぶ。

「陛下を助けていただけませんか!」
「助けるのはかまいませんが、呼んでいただきたい人がいるのです」
「それは構いませんが……」

 呼んでほしい人の名前を伝えると、ちょうど今、会議で集まっているからと呼びに行ってくれた。
 姿が見えなくなると、チワーがバスケットの中から顔を出す。

「ようく、見ておけよ、二人共。われが聖獣だというところを見せてやるのじゃ!」

 勢いよく、バスケットから飛び出したチワーは、まるで全身が焼けただれてしまったような人の形をした魔物の元へ向かっていく。
 すると、魔物達がチワーの存在に気がついて逃げようとした。

「逃さぬ!」

 チワーは魔物を追って走り出すと、体当りした。
 すると、魔物は断末魔をあげて消滅した。

 書物で呼んだことがあるけれど、太陽の光を浴びただけで消滅してしまう魔物もいるらしく、今回の場合は聖なる力に触れて消滅したパターンだと思われる。
 ちなみに、これはわたしにも可能なことで、魔物はわたしに触れたり、触れられたりしたら消滅するし、凶悪犯の人間の場合は、触れた部分が焼けただれる。

「わたしもあれが出来るんだけど、触りたくないのよね」
「見た目がちょっとな……」
「そうなのよ」

 チワーが元気に魔物を倒していく姿を見守りながら、ランと話をしていると、サウロン陛下の部屋の扉が開いて、チーチルが顔を出した。

「リンファっ! 来てくれたのねっ!?」
「来なければいけない用事があったから、ついでに来てみたの」
「もう、そんな意地悪言ってっ!」

 チーチルはスキップしながらわたしに近付いてくる。

「これからは、ずっと一緒よっ! サウロン陛下とわたくしと三人で楽しく暮らしましょっ!」
「絶対に嫌よ。拷問じゃないの」

 そう答えたところで、チワーが魔物を倒し、すっきりした顔で戻ってこようとするのが見え、慌てて、チーチルの意識をわたしに向けて、その間に、ランにチワーを回収してもらおうと目で合図を送った時だった。

 チワーが目を見開いて立ち止まった。
 彼の目はチーチルでも、わたし達でもなく、わたし達の背後に向けられていた。

「やあ、お待たせしましたのう。リンファ様、お戻りが早いようで。仕事をする気になられたのですかのう?」

 現れたのは、怪しいと思われている人物、スカミゴ様だった。
 大きく出たお腹を揺らし、額から流れる汗をハンカチで拭きながら、わたし達に近寄ってくる。

「どうしたのですか、そんな驚いた顔をして」

 チワーの様子がおかしいことの方が気になって、スカミゴ様を無視していたからか、彼がわたしの顔を覗き込もうとした時だった。

「リンファに近付くなっ!!」

 チワーの叫び声が聞こえたと同時、チワーはチワワの姿から、フェンリルの姿に変化したのだった。


しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

双子の妹を選んだ婚約者様、貴方に選ばれなかった事に感謝の言葉を送ります

すもも
恋愛
学園の卒業パーティ 人々の中心にいる婚約者ユーリは私を見つけて微笑んだ。 傍らに、私とよく似た顔、背丈、スタイルをした双子の妹エリスを抱き寄せながら。 「セレナ、お前の婚約者と言う立場は今、この瞬間、終わりを迎える」 私セレナが、ユーリの婚約者として過ごした7年間が否定された瞬間だった。

これまでは悉く妹に幸せを邪魔されていました。今後は違いますよ?

satomi
恋愛
ディラーノ侯爵家の義姉妹の姉・サマンサとユアノ。二人は同じ侯爵家のアーロン=ジェンキンスとの縁談に臨む。もともとはサマンサに来た縁談話だったのだが、姉のモノを悉く奪う義妹ユアノがお父様に「見合いの席に同席したい」と懇願し、何故かディラーノ家からは二人の娘が見合いの席に。 結果、ユアノがアーロンと婚約することになるのだが…

婚約者を奪われた私は、他国で新しい生活を送ります

天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルクルは、エドガー王子から婚約破棄を言い渡されてしまう。 聖女を好きにったようで、婚約破棄の理由を全て私のせいにしてきた。 聖女と王子が考えた嘘の言い分を家族は信じ、私に勘当を言い渡す。 平民になった私だけど、問題なく他国で新しい生活を送ることができていた。

善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です

しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。

わざわざパーティで婚約破棄していただかなくても大丈夫ですよ。私もそのつもりでしたから。

しあ
恋愛
私の婚約者がパーティーで別の女性をパートナーに連れてきて、突然婚約破棄を宣言をし始めた。 わざわざここで始めなくてもいいものを…ですが、私も色々と用意してましたので、少しお話をして、私と魔道具研究所で共同開発を行った映像記録魔道具を見ていただくことにしました。 あら?映像をご覧になってから顔色が悪いですが、大丈夫でしょうか? もし大丈夫ではなくても止める気はありませんけどね?

絶縁状をお受け取りくださいませ旦那様。~離縁の果てに私を待っていたのは初恋の人に溺愛される幸せな異国ライフでした

松ノ木るな
恋愛
 アリンガム侯爵家夫人ルシールは離婚手続きが進むさなかの夜、これから世話になる留学先の知人に手紙をしたためていた。  もう書き終えるかという頃、扉をノックする音が聞こえる。その訪ね人は、薄暗い取引で長年侯爵家に出入りしていた、美しい男性であった。

公爵令嬢ですが、実は神の加護を持つ最強チート持ちです。婚約破棄? ご勝手に

ゆっこ
恋愛
 王都アルヴェリアの中心にある王城。その豪奢な大広間で、今宵は王太子主催の舞踏会が開かれていた。貴族の子弟たちが華やかなドレスと礼装に身を包み、音楽と笑い声が響く中、私——リシェル・フォン・アーデンフェルトは、端の席で静かに紅茶を飲んでいた。  私は公爵家の長女であり、かつては王太子殿下の婚約者だった。……そう、「かつては」と言わねばならないのだろう。今、まさにこの瞬間をもって。 「リシェル・フォン・アーデンフェルト。君との婚約を、ここに正式に破棄する!」  唐突な宣言。静まり返る大広間。注がれる無数の視線。それらすべてを、私はただ一口紅茶を啜りながら見返した。  婚約破棄の相手、王太子レオンハルト・ヴァルツァーは、金髪碧眼のいかにも“主役”然とした青年である。彼の隣には、勝ち誇ったような笑みを浮かべる少女が寄り添っていた。 「そして私は、新たにこのセシリア・ルミエール嬢を伴侶に選ぶ。彼女こそが、真に民を導くにふさわしい『聖女』だ!」  ああ、なるほど。これが今日の筋書きだったのね。

婚約破棄に乗り換え、上等です。私は名前を変えて隣国へ行きますね

ルーシャオ
恋愛
アンカーソン伯爵家令嬢メリッサはテイト公爵家後継のヒューバートから婚約破棄を言い渡される。幼い頃妹ライラをかばってできたあざを指して「失せろ、その顔が治ってから出直してこい」と言い放たれ、挙句にはヒューバートはライラと婚約することに。 失意のメリッサは王立寄宿学校の教師マギニスの言葉に支えられ、一人で生きていくことを決断。エミーと名前を変え、隣国アスタニア帝国に渡って書籍商になる。するとあるとき、ジーベルン子爵アレクシスと出会う。ひょんなことでアレクシスに顔のあざを見られ——。

処理中です...