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セレーナと謝罪
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昨日は思い通りに行かない断罪劇に混乱した。
一晩経った今は、どうしようもない腹立ちが湧いてくる。
キャリーが侯爵夫人に相応しくないのは誰が見ても明らかで、どうしてそれを言った私が罰されなければならないの。
納得のいかないまま謝罪させられる羽目になり、訪れたエイレン侯爵邸。
部屋に入れば次期侯爵夫妻だけでなくキャリーまでいた。
なんで居るのよ!
キャリーに謝罪なんて冗談じゃないわ。
いらいらとそんな事を思っていると前を歩くお兄様が立ち止まったので、うっかりぶつかりそうになる。
「リーネ?」
何?
リーネ?
立ち止まったお兄様の顔を覗き込めば呆然とキャリーを見つめていた。
どうやらリーネとはキャリーのことらしい。
そして、まさかまさかの、お兄様はキャリーの素顔を知らなかったのですって!!
お兄様は釣書どころか姿絵すら見てなかったらしい。
キュッと唇を引き結ぶ。
でないと笑ってしまいそうだもの!!
やっぱりお兄様も田舎貴族なんて交流の価値がないと最初から切り捨てていたのよ。
私がエイレン侯爵邸に来たのは謝る為ではないわ。
次期侯爵もトウプチ先生もどこまでご存じなのかしらね?
侯爵邸に住まわせてやっている鈍臭い田舎娘が学園で恥を撒き散らしている事を知れば、いくら人の良さそうな次期侯爵でも怒り出すだろう。
そうなれば……エイレン侯爵側からキャリーが愚かだと言われればお父様だって私に処罰なんて言い出さないでしょう。
キャリーはエイレン次期侯爵夫妻に挟まれるように座っていた。
逃げ出さないようにかしら。
キャリー、あなた信用されていないのよ。
私は絶対に謝罪なんてしない。
あんな田舎者に頭なんか下げるもんですか!
エイレン次期侯爵やトウプチ先生はキャリーの事は棚に上げて、交流する気のない態度を理由にこちらを有責にしたい様だった。
「塩対応で学園では有名でしたよね?アラン様。」
私はトウプチ先生の言葉に待ってましたとばかりに立ち上がり、嬉々と反論した。
「そんなの当然だわ!トウプチ先生もご存知でしょう?キャリーったらブロンドウィッグに派手なメイクで毎朝お兄様に会いに行っていたのよ。私達も毎朝メイクを手伝わされて迷惑していたんですから!」
リーネが顔を上げ、驚いたように私を見た。
まあ、間抜けな顔。
本気で私達と仲良くしてたつもりなのかしら。
身の程はわきまえてると思っていたけど、結構図々しいのね。
「地理の授業では不可解な回答をしてタンガス先生を怒らせていたわよね、キャリー。授業に出なくていいというのにわざわざ出てきて授業を中断させるなんて嫌な人。そんな人が侯爵夫人に相応しい訳ないわ!」
これらの奇行はすべて本当の事だもの。
悪役令嬢のように振る舞わせていた事はさっきお兄様が否定した。
そして偽の手紙は捨てるように言ってある。
それこそ証拠なんてないのよ!!
嘲笑うように鼻を鳴らして見せると、キャリーは愕然として私を見つめていた。
ああその顔、メグとエイミーにも見せてあげたかったわ。
「不可解な回答?あなたが理解出来なかっただけでしょう?」
ズバっと思いもよらない言葉をトウプチ先生が言った。
「ではあなたなら何て答えるの?タンガス先生から聞いたわ。確か質問は『南部の地形の特徴とそれによる影響を答えよ』だったわね。確かに中等部の学生には難しい問題だけれども、正否ではなく柔軟な着眼点が知りたくてする質問だそうよ。さあ、聞かせてちょうだい。あなたならなんて答えるのかしら?」
え……?
「ちなみにリーネは地形の特徴、そしてその地形が南部に及ぼす気候の影響から、南部に適した作物まで答えたそうよ。質問をすればするほど出てくるリーネの知識にタンガス先生は夢中になって、授業を中断させそうになった事を反省していらしたわ。」
「娘が勉強不足で失礼な物言いをした様だ。申し訳ない。」
トウプチ先生が言い終わるや、お父様が立ち上がり詫びた。
私には答えられないと判断したのだろう。
お父様の手が私の肩にそっと置かれ、グッと力を入れられる。
そのまま椅子に座らされた。
まるで急に部屋の温度が上がったように体が熱くなる。
何よ、先生のくせに生徒に恥をかかせるなんて!!
なにか言い返したいと思うけれども唇からは荒い息が漏れるだけだった。
ぎゅうと握りしめたスカートは何重もの深い皺ができる。
ワナワナと震えていると、中央の机にバサッと紙の束が置かれた。
ハッと我に返れば、上がったはずの体温が一気に下がる。
これって…………!!
一晩経った今は、どうしようもない腹立ちが湧いてくる。
キャリーが侯爵夫人に相応しくないのは誰が見ても明らかで、どうしてそれを言った私が罰されなければならないの。
納得のいかないまま謝罪させられる羽目になり、訪れたエイレン侯爵邸。
部屋に入れば次期侯爵夫妻だけでなくキャリーまでいた。
なんで居るのよ!
キャリーに謝罪なんて冗談じゃないわ。
いらいらとそんな事を思っていると前を歩くお兄様が立ち止まったので、うっかりぶつかりそうになる。
「リーネ?」
何?
リーネ?
立ち止まったお兄様の顔を覗き込めば呆然とキャリーを見つめていた。
どうやらリーネとはキャリーのことらしい。
そして、まさかまさかの、お兄様はキャリーの素顔を知らなかったのですって!!
お兄様は釣書どころか姿絵すら見てなかったらしい。
キュッと唇を引き結ぶ。
でないと笑ってしまいそうだもの!!
やっぱりお兄様も田舎貴族なんて交流の価値がないと最初から切り捨てていたのよ。
私がエイレン侯爵邸に来たのは謝る為ではないわ。
次期侯爵もトウプチ先生もどこまでご存じなのかしらね?
侯爵邸に住まわせてやっている鈍臭い田舎娘が学園で恥を撒き散らしている事を知れば、いくら人の良さそうな次期侯爵でも怒り出すだろう。
そうなれば……エイレン侯爵側からキャリーが愚かだと言われればお父様だって私に処罰なんて言い出さないでしょう。
キャリーはエイレン次期侯爵夫妻に挟まれるように座っていた。
逃げ出さないようにかしら。
キャリー、あなた信用されていないのよ。
私は絶対に謝罪なんてしない。
あんな田舎者に頭なんか下げるもんですか!
エイレン次期侯爵やトウプチ先生はキャリーの事は棚に上げて、交流する気のない態度を理由にこちらを有責にしたい様だった。
「塩対応で学園では有名でしたよね?アラン様。」
私はトウプチ先生の言葉に待ってましたとばかりに立ち上がり、嬉々と反論した。
「そんなの当然だわ!トウプチ先生もご存知でしょう?キャリーったらブロンドウィッグに派手なメイクで毎朝お兄様に会いに行っていたのよ。私達も毎朝メイクを手伝わされて迷惑していたんですから!」
リーネが顔を上げ、驚いたように私を見た。
まあ、間抜けな顔。
本気で私達と仲良くしてたつもりなのかしら。
身の程はわきまえてると思っていたけど、結構図々しいのね。
「地理の授業では不可解な回答をしてタンガス先生を怒らせていたわよね、キャリー。授業に出なくていいというのにわざわざ出てきて授業を中断させるなんて嫌な人。そんな人が侯爵夫人に相応しい訳ないわ!」
これらの奇行はすべて本当の事だもの。
悪役令嬢のように振る舞わせていた事はさっきお兄様が否定した。
そして偽の手紙は捨てるように言ってある。
それこそ証拠なんてないのよ!!
嘲笑うように鼻を鳴らして見せると、キャリーは愕然として私を見つめていた。
ああその顔、メグとエイミーにも見せてあげたかったわ。
「不可解な回答?あなたが理解出来なかっただけでしょう?」
ズバっと思いもよらない言葉をトウプチ先生が言った。
「ではあなたなら何て答えるの?タンガス先生から聞いたわ。確か質問は『南部の地形の特徴とそれによる影響を答えよ』だったわね。確かに中等部の学生には難しい問題だけれども、正否ではなく柔軟な着眼点が知りたくてする質問だそうよ。さあ、聞かせてちょうだい。あなたならなんて答えるのかしら?」
え……?
「ちなみにリーネは地形の特徴、そしてその地形が南部に及ぼす気候の影響から、南部に適した作物まで答えたそうよ。質問をすればするほど出てくるリーネの知識にタンガス先生は夢中になって、授業を中断させそうになった事を反省していらしたわ。」
「娘が勉強不足で失礼な物言いをした様だ。申し訳ない。」
トウプチ先生が言い終わるや、お父様が立ち上がり詫びた。
私には答えられないと判断したのだろう。
お父様の手が私の肩にそっと置かれ、グッと力を入れられる。
そのまま椅子に座らされた。
まるで急に部屋の温度が上がったように体が熱くなる。
何よ、先生のくせに生徒に恥をかかせるなんて!!
なにか言い返したいと思うけれども唇からは荒い息が漏れるだけだった。
ぎゅうと握りしめたスカートは何重もの深い皺ができる。
ワナワナと震えていると、中央の机にバサッと紙の束が置かれた。
ハッと我に返れば、上がったはずの体温が一気に下がる。
これって…………!!
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