40 / 56
婚姻解消のその後は ーブリジットー
しおりを挟む
子爵家に移り住み、腕の抜糸も済むとブリジットもようやく病人扱いではなくなった。
ずっと元気だったのに甲斐甲斐しく世話をされていて申し訳ない気持ちでいっぱいだったブリジットはようやく心が軽くなる。
それと同時にこれからの事も話し合わなければならない事に気が重くなるのも事実だった。
離婚はいつ頃になるのか。
その後自分はどうするつもりなのか。
夫人にお茶に誘われ行けば、やはり今後の話になった。
「元気になったのだし一度学園に見学に行って見る?」
ガネット夫人にそう言われてブリジットは驚いた。
「ですが王都の学園は貴族しか受け入れないのでは。」
今結婚し子爵家を出たアベルは平民である。
そこに嫁いでるブリジットももちろん平民だ。
もちろん離婚すればブリジットは伯爵令嬢になるのだが。
そこでブリジットはハッとした。
(離婚を促されているのだわ。)
「ああ違うわよ。そうね。こちらを先に話すべきだったわね。」
ブリジットの様子をみて察した夫人は慌てたように言うと、改まった。
「あなたとアベルの婚姻解消を申し出るつもりなのよ。」
婚姻解消?
耳慣れない言葉にブリジットは思わず首を傾げた。
ずっと離れで暮らしていた事をブリジットが申し出て認められれば婚姻解消できるらしい。
「アベルも離れで暮らしていた事実を認めれば、解消できるわ。そうすればあなたはこの国で婚姻があった事実もなくなるわ。離婚だと次のお相手が見つかった時にややこしいことになるかもしれないから、ね。」
伯爵令嬢に戻れば学園にも通える。
学園に通えばお相手が見つかることもあるだろう。
(次のお相手……)
正直考えてもいなかった。
アベルが勉強していたような植物の勉強を自分も勉強したいと思っていた。
王都の学園には植物の専門の研究室や先生がいて、アベルはそこに入り浸っていたのだと知っていた。
だから離婚後は学園に通ってみたいと思っていた。
「いいようにしましょうと言ったわよね。あなたが決めていいのよ。もちろん、国に帰ってもいいわ。学園に通ってもいい。王都を離れてどこか違うところで住みたいのならそれもサポートするわ。まず今すぐできることとして学園の見学がいいのではないかしら。」
逡巡するブリジットを優しく見つめていたガネット夫人が言った。
しかしブリジットにはもっと気になることがあった。
「私と婚姻解消してしまえばアベル様の王宮勤めはどうなりますか。」
あなたは本当に……
ガネット夫人は小さく呟く。
「大丈夫よ、気にすることはないわ。手は打ってあるの。アベルが王宮を辞めさせられることはないわ。」
アリスの一件でドリンコート侯爵家から慰謝料が支払われることになっているらしい。
もちろんブリジットにも。
驚いたブリジットに「慰謝料という名の口止め料よ。受け取っておきなさい。」と受け取らないほうが面倒臭いと夫人は言外に滲ませた。
そうしてスラビーズ子爵家はお金の代わりにアベルが婚姻解消しても王宮で勤められる様配慮してもらえるようにしたらしい。
「ドリンコートは序列一位の侯爵家よ。」
その位の力はあるらしい。
ブリジットはなんともいえない気持ちだった。
自分でもどういう気持ちなのかわからない。
ただ着々と物事は進んでいた。
自分も進まなければ、そう思った。
ブリジットは学園の見学を申し出た。
そうして可能性をひとつずつ覗いていくのもいいと思った。
婚姻解消した時、決めた道に行けるように。
そうしてその頃には子爵家も出て、もうアベルと道が交わる事もないだろう。
きっと胸の痛みも忘れている。
そう思っていた。
そう思っていたはずなのに。
ブリジットは混乱していた。
目の前にいるこの人は……
確かにもう二度と会うことがないと思った人だ。
とある日の昼下がり。
子爵家の庭のガゼボでブリジットはアベルと向かい合いお茶を飲んでいた。
ずっと元気だったのに甲斐甲斐しく世話をされていて申し訳ない気持ちでいっぱいだったブリジットはようやく心が軽くなる。
それと同時にこれからの事も話し合わなければならない事に気が重くなるのも事実だった。
離婚はいつ頃になるのか。
その後自分はどうするつもりなのか。
夫人にお茶に誘われ行けば、やはり今後の話になった。
「元気になったのだし一度学園に見学に行って見る?」
ガネット夫人にそう言われてブリジットは驚いた。
「ですが王都の学園は貴族しか受け入れないのでは。」
今結婚し子爵家を出たアベルは平民である。
そこに嫁いでるブリジットももちろん平民だ。
もちろん離婚すればブリジットは伯爵令嬢になるのだが。
そこでブリジットはハッとした。
(離婚を促されているのだわ。)
「ああ違うわよ。そうね。こちらを先に話すべきだったわね。」
ブリジットの様子をみて察した夫人は慌てたように言うと、改まった。
「あなたとアベルの婚姻解消を申し出るつもりなのよ。」
婚姻解消?
耳慣れない言葉にブリジットは思わず首を傾げた。
ずっと離れで暮らしていた事をブリジットが申し出て認められれば婚姻解消できるらしい。
「アベルも離れで暮らしていた事実を認めれば、解消できるわ。そうすればあなたはこの国で婚姻があった事実もなくなるわ。離婚だと次のお相手が見つかった時にややこしいことになるかもしれないから、ね。」
伯爵令嬢に戻れば学園にも通える。
学園に通えばお相手が見つかることもあるだろう。
(次のお相手……)
正直考えてもいなかった。
アベルが勉強していたような植物の勉強を自分も勉強したいと思っていた。
王都の学園には植物の専門の研究室や先生がいて、アベルはそこに入り浸っていたのだと知っていた。
だから離婚後は学園に通ってみたいと思っていた。
「いいようにしましょうと言ったわよね。あなたが決めていいのよ。もちろん、国に帰ってもいいわ。学園に通ってもいい。王都を離れてどこか違うところで住みたいのならそれもサポートするわ。まず今すぐできることとして学園の見学がいいのではないかしら。」
逡巡するブリジットを優しく見つめていたガネット夫人が言った。
しかしブリジットにはもっと気になることがあった。
「私と婚姻解消してしまえばアベル様の王宮勤めはどうなりますか。」
あなたは本当に……
ガネット夫人は小さく呟く。
「大丈夫よ、気にすることはないわ。手は打ってあるの。アベルが王宮を辞めさせられることはないわ。」
アリスの一件でドリンコート侯爵家から慰謝料が支払われることになっているらしい。
もちろんブリジットにも。
驚いたブリジットに「慰謝料という名の口止め料よ。受け取っておきなさい。」と受け取らないほうが面倒臭いと夫人は言外に滲ませた。
そうしてスラビーズ子爵家はお金の代わりにアベルが婚姻解消しても王宮で勤められる様配慮してもらえるようにしたらしい。
「ドリンコートは序列一位の侯爵家よ。」
その位の力はあるらしい。
ブリジットはなんともいえない気持ちだった。
自分でもどういう気持ちなのかわからない。
ただ着々と物事は進んでいた。
自分も進まなければ、そう思った。
ブリジットは学園の見学を申し出た。
そうして可能性をひとつずつ覗いていくのもいいと思った。
婚姻解消した時、決めた道に行けるように。
そうしてその頃には子爵家も出て、もうアベルと道が交わる事もないだろう。
きっと胸の痛みも忘れている。
そう思っていた。
そう思っていたはずなのに。
ブリジットは混乱していた。
目の前にいるこの人は……
確かにもう二度と会うことがないと思った人だ。
とある日の昼下がり。
子爵家の庭のガゼボでブリジットはアベルと向かい合いお茶を飲んでいた。
159
あなたにおすすめの小説
【完結】妖精姫と忘れられた恋~好きな人が結婚するみたいなので解放してあげようと思います~
塩羽間つづり
恋愛
お気に入り登録やエールいつもありがとうございます!
2.23完結しました!
ファルメリア王国の姫、メルティア・P・ファルメリアは、幼いころから恋をしていた。
相手は幼馴染ジーク・フォン・ランスト。
ローズの称号を賜る名門一族の次男だった。
幼いころの約束を信じ、いつかジークと結ばれると思っていたメルティアだが、ジークが結婚すると知り、メルティアの生活は一変する。
好きになってもらえるように慣れないお化粧をしたり、着飾ったりしてみたけれど反応はいまいち。
そしてだんだんと、メルティアは恋の邪魔をしているのは自分なのではないかと思いあたる。
それに気づいてから、メルティアはジークの幸せのためにジーク離れをはじめるのだが、思っていたようにはいかなくて……?
妖精が見えるお姫様と近衛騎士のすれ違う恋のお話
切なめ恋愛ファンタジー
狂おしいほど愛しています、なのでよそへと嫁ぐことに致します
ちより
恋愛
侯爵令嬢のカレンは分別のあるレディだ。頭の中では初恋のエル様のことでいっぱいになりながらも、一切そんな素振りは見せない徹底ぶりだ。
愛するエル様、神々しくも真面目で思いやりあふれるエル様、その残り香だけで胸いっぱいですわ。
頭の中は常にエル様一筋のカレンだが、家同士が決めた結婚で、公爵家に嫁ぐことになる。愛のない形だけの結婚と思っているのは自分だけで、実は誰よりも公爵様から愛されていることに気づかない。
公爵様からの溺愛に、不器用な恋心が反応したら大変で……両思いに慣れません。
東雲の空を行け ~皇妃候補から外れた公爵令嬢の再生~
くる ひなた
恋愛
「あなたは皇妃となり、国母となるのよ」
幼い頃からそう母に言い聞かされて育ったロートリアス公爵家の令嬢ソフィリアは、自分こそが同い年の皇帝ルドヴィークの妻になるのだと信じて疑わなかった。父は長く皇帝家に仕える忠臣中の忠臣。皇帝の母の覚えもめでたく、彼女は名実ともに皇妃最有力候補だったのだ。
ところがその驕りによって、とある少女に対して暴挙に及んだことを理由に、ソフィリアは皇妃候補から外れることになる。
それから八年。母が敷いた軌道から外れて人生を見つめ直したソフィリアは、豪奢なドレスから質素な文官の制服に着替え、皇妃ではなく補佐官として皇帝ルドヴィークの側にいた。
上司と部下として、友人として、さらには密かな思いを互いに抱き始めた頃、隣国から退っ引きならない事情を抱えた公爵令嬢がやってくる。
「ルドヴィーク様、私と結婚してくださいませ」
彼女が執拗にルドヴィークに求婚し始めたことで、ソフィリアも彼との関係に変化を強いられることになっていく……
『蔦王』より八年後を舞台に、元悪役令嬢ソフィリアと、皇帝家の三男坊である皇帝ルドヴィークの恋の行方を描きます。
私の婚約者はちょろいのか、バカなのか、やさしいのか
れもんぴーる
恋愛
エミリアの婚約者ヨハンは、最近幼馴染の令嬢との逢瀬が忙しい。
婚約者との顔合わせよりも幼馴染とのデートを優先するヨハン。それなら婚約を解消してほしいのだけれど、応じてくれない。
両親に相談しても分かってもらえず、家を出てエミリアは自分の夢に向かって進み始める。
バカなのか、優しいのかわからない婚約者を見放して新たな生活を始める令嬢のお話です。
*今回感想欄を閉じます(*´▽`*)。感想への返信でぺろって言いたくて仕方が無くなるので・・・。初めて魔法も竜も転生も出てこないお話を書きました。寛大な心でお読みください!m(__)m
【完結】真面目系眼鏡女子は、軽薄騎士の求愛から逃げ出したい。
たまこ
恋愛
真面目が信条の眼鏡女子カレンは、昔からちょっかいを掛けてくる、軽薄な近衛騎士ウィリアムの事が大嫌い。いつも令嬢に囲まれているウィリアムを苦々しく思っていたのに、ウィリアムと一夜を共にしてしまい、嫌々ながら婚約を結ぶことに•••。
ウィリアムが仕える王太子や、カレンの友人である公爵令嬢を巻き込みながら、何故か求愛してくるウィリアムと、ウィリアムの真意が分からないカレン。追いかけっこラブストーリー!
悪役令嬢なので最初から愛されないことはわかっていましたが、これはさすがに想定外でした。
ふまさ
恋愛
──こうなることがわかっていれば、はじめから好きになんてならなかったのに。
彩香だったときの思いが、ふと蘇り、フェリシアはくすりと笑ってしまった。
ありがとう、前世の記憶。おかげでわたしは、クライブ殿下を好きにならずにすんだわ。
だからあるのは、呆れと、怒りだけだった。
※『乙女ゲームのヒロインの顔が、わたしから好きな人を奪い続けた幼なじみとそっくりでした』の、ifストーリーです。重なる文章があるため、前作は非公開とさせていただきました。読んでくれたみなさま、ありがとうございました。
全部私が悪いのです
久留茶
恋愛
ある出来事が原因でオーディール男爵家の長女ジュディス(20歳)の婚約者を横取りする形となってしまったオーディール男爵家の次女オフィーリア(18歳)。
姉の元婚約者である王国騎士団所属の色男エドガー・アーバン伯爵子息(22歳)は姉への気持ちが断ち切れず、彼女と別れる原因となったオフィーリアを結婚後も恨み続け、妻となったオフィーリアに対して辛く当たる日々が続いていた。
世間からも姉の婚約者を奪った『欲深いオフィーリア』と悪名を轟かせるオフィーリアに果たして幸せは訪れるのだろうか……。
*全18話完結となっています。
*大分イライラする場面が多いと思われますので苦手な方はご注意下さい。
*後半まで読んで頂ければ救いはあります(多分)。
*この作品は他誌にも掲載中です。
悪役令嬢と誤解され冷遇されていたのに、目覚めたら夫が豹変して求愛してくるのですが?
いりん
恋愛
初恋の人と結婚できたーー
これから幸せに2人で暮らしていける…そう思ったのに。
「私は夫としての務めを果たすつもりはない。」
「君を好きになることはない。必要以上に話し掛けないでくれ」
冷たく拒絶され、離婚届けを取り寄せた。
あと2週間で届くーーそうしたら、解放してあげよう。
ショックで熱をだし寝込むこと1週間。
目覚めると夫がなぜか豹変していて…!?
「君から話し掛けてくれないのか?」
「もう君が隣にいないのは考えられない」
無口不器用夫×優しい鈍感妻
すれ違いから始まる両片思いストーリー
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる