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訪問者 ーガネット夫人ーブリジットー
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アベルが我が家にやってきてブリジットに会いたいと言った時には何を今更と呆れ返った。
聞けば2人きりで出かけたいと言い出すではないか。
もちろん即断った。
今更会うのはビジイにとってもプラスにならない。
あの子は前に進もうとしている。
「婚姻解消するんだろう。じゃあ兄さんはもうビジイとも何の関係もないじゃないか。」
その場にいたデイビットも大反対だった。
「私は了承した覚えはない。」
「はあ?!」
デイビットが思わず奇声を上げた。
私も奇声こそ上げなかったが同じ気持ちだった。
一体何を言い出したの?
しかし主人のエイブラムの鶴の一声で決まった。
「ビジイがイエスと言えばいいんじゃないか?まだ夫婦なんだし。その代わり明確なイエス以外は認めないからね~」
そこで監視付きで2人はお茶をすることになった。
監視役は私とデイビット。
ビジイが少しでも嫌な素振りを見せればすぐさま割って入り、今後会うことすら許さないつもりだった。
「会わなくてもいいのよ。何も話すことなんてないしね。」
色々言ったが真面目なビジイは、もう屋敷に来ていることを知ると断ることをしなかった。
しかし覚悟を決めたような、気合の入った顔でガゼボに向かったビジイを見て少し安堵した。
フラフラと芯の無い子じゃないのだ。
余計なことを言わず彼女を尊重しよう。
そう思い見守った。
しかしアベルは本題になかなか辿りつかないようだった。
ビジイも訝しみながらもお茶を飲んでいる。
とてもデートに誘うような雰囲気ではない。
と思っていると一気に緊張が解け、アベルが上機嫌にこちらにやってきた。
「ブリジットは了承してくれた。来週のお休みに迎えに来るから。」
それだけ言うともう玄関に向かっていた。
後から来たビジイに「了承しちゃったのね。」と声をかけるとキョトンとしていた。
もしやこれは。
デートに誘われたと思っていない?
しかしもう話はまとまったのだ。
今更私が口を挟むべきか否か。
そのまま玄関までアベルを見送りに行く。
ビジイもアベルを見送る。
その様子を見て口を挟むか決めましょう。
そう思い2人を少し後ろから見守る事にした。
「じゃあ、来週また迎えにくるから用意しておいてくれ。」
私は瞠目した。
アベルは蕩けそうな目をしてブリジットを見つめていた。
相反してビジイは何が何やらわからぬ様子で返事をしていた。
明らかに混乱している。
アベルはその様子を見てクスリと小さく笑うとビジイの唇に指でそっと触れた。
アベル?
え?
アベル?
ちゅ
アベル?!
「じゃあ、また来週。」
私とデイビットが絶句しているのをいい事に、私たちを無視して帰っていった。
「あれ……絶対無意識だよね……自覚無し……怖……」
口付けしたこと気付いてないよ絶対……何あれ……
デイビットが恐怖した顔で誰に言う訳でもなく呟き続けるのを聞こえハッとした。
ビジイの後ろ姿を見ると、耳も首も手も見える所は真っ赤だ。
そして羞恥にプルプルと震えていた。
泣き出しそうな雰囲気に慌ててブリジットの肩を抱いた。
「本当アベルはデリカシーがないわね。気にすることないわ、部屋に戻りましょう。」
すっかり俯き固まって動けなくなっていたビジイの歩を無理やり進め、部屋に戻らせた。
そうしてその日ビジイは部屋から出てこなかった。
恥ずかしい
恥ずかしい
恥ずかしい
ブリジットはベッドでシーツをすっぽりかぶり縮こまっていた。
アベルは去り際とても自然にブリジットの唇を奪っていった。
ご丁寧にリップ音までたてて。
後ろにいるガネット夫人とデイビットに気付かれていない事を一瞬期待したが、2人の凍りついた空気は後ろを向かずともわかるくらいだった。
そんな空気など気にせぬ様子でアベルは満足そうに帰って行った。
この状態で放置されブリジットにどうしろと言うのか。
今すぐここから走り去りたいが、それをするにも振り返らなければならない。
振り返れば凍りついているガネット夫人とデイビットがいる。
恥ずかしくてとてもじゃないが振り返れそうになかった。
ブリジットは泣きたくなった。
ガネット夫人が肩をだき、助け出してくれなければ、涙が溢れていたに違いない。
そうして部屋に戻ってもシーツの中でひたすら恥ずかしさと戦っていた。
その戦いはその日だけにとどまらず、次の日にも持ち越した。
心配したガネット夫人が部屋に昼食を誘いに来てくれるまで。
そして昼食の誘いがあるまで身だしなみを整えてなかったことに気付き慌てて侍女に整えてもらった。
(自分で整えることがなくなっていたから気が緩んでいたんだわ。)
いつも通りの時間に身だしなみを整えていなかったことに少しショックを受けつつ、ブリジットはそう思った。
自分の醜態を思い出してはシーツにくるまって身悶えする。
それを繰り返し、身だしなみを整えることを忘れていたのだが、ブリジットはあえてそこから目を逸らした。
昨日の出来事は無かった事にしないと、ガネット夫人と顔を合わせられそうになかった。
聞けば2人きりで出かけたいと言い出すではないか。
もちろん即断った。
今更会うのはビジイにとってもプラスにならない。
あの子は前に進もうとしている。
「婚姻解消するんだろう。じゃあ兄さんはもうビジイとも何の関係もないじゃないか。」
その場にいたデイビットも大反対だった。
「私は了承した覚えはない。」
「はあ?!」
デイビットが思わず奇声を上げた。
私も奇声こそ上げなかったが同じ気持ちだった。
一体何を言い出したの?
しかし主人のエイブラムの鶴の一声で決まった。
「ビジイがイエスと言えばいいんじゃないか?まだ夫婦なんだし。その代わり明確なイエス以外は認めないからね~」
そこで監視付きで2人はお茶をすることになった。
監視役は私とデイビット。
ビジイが少しでも嫌な素振りを見せればすぐさま割って入り、今後会うことすら許さないつもりだった。
「会わなくてもいいのよ。何も話すことなんてないしね。」
色々言ったが真面目なビジイは、もう屋敷に来ていることを知ると断ることをしなかった。
しかし覚悟を決めたような、気合の入った顔でガゼボに向かったビジイを見て少し安堵した。
フラフラと芯の無い子じゃないのだ。
余計なことを言わず彼女を尊重しよう。
そう思い見守った。
しかしアベルは本題になかなか辿りつかないようだった。
ビジイも訝しみながらもお茶を飲んでいる。
とてもデートに誘うような雰囲気ではない。
と思っていると一気に緊張が解け、アベルが上機嫌にこちらにやってきた。
「ブリジットは了承してくれた。来週のお休みに迎えに来るから。」
それだけ言うともう玄関に向かっていた。
後から来たビジイに「了承しちゃったのね。」と声をかけるとキョトンとしていた。
もしやこれは。
デートに誘われたと思っていない?
しかしもう話はまとまったのだ。
今更私が口を挟むべきか否か。
そのまま玄関までアベルを見送りに行く。
ビジイもアベルを見送る。
その様子を見て口を挟むか決めましょう。
そう思い2人を少し後ろから見守る事にした。
「じゃあ、来週また迎えにくるから用意しておいてくれ。」
私は瞠目した。
アベルは蕩けそうな目をしてブリジットを見つめていた。
相反してビジイは何が何やらわからぬ様子で返事をしていた。
明らかに混乱している。
アベルはその様子を見てクスリと小さく笑うとビジイの唇に指でそっと触れた。
アベル?
え?
アベル?
ちゅ
アベル?!
「じゃあ、また来週。」
私とデイビットが絶句しているのをいい事に、私たちを無視して帰っていった。
「あれ……絶対無意識だよね……自覚無し……怖……」
口付けしたこと気付いてないよ絶対……何あれ……
デイビットが恐怖した顔で誰に言う訳でもなく呟き続けるのを聞こえハッとした。
ビジイの後ろ姿を見ると、耳も首も手も見える所は真っ赤だ。
そして羞恥にプルプルと震えていた。
泣き出しそうな雰囲気に慌ててブリジットの肩を抱いた。
「本当アベルはデリカシーがないわね。気にすることないわ、部屋に戻りましょう。」
すっかり俯き固まって動けなくなっていたビジイの歩を無理やり進め、部屋に戻らせた。
そうしてその日ビジイは部屋から出てこなかった。
恥ずかしい
恥ずかしい
恥ずかしい
ブリジットはベッドでシーツをすっぽりかぶり縮こまっていた。
アベルは去り際とても自然にブリジットの唇を奪っていった。
ご丁寧にリップ音までたてて。
後ろにいるガネット夫人とデイビットに気付かれていない事を一瞬期待したが、2人の凍りついた空気は後ろを向かずともわかるくらいだった。
そんな空気など気にせぬ様子でアベルは満足そうに帰って行った。
この状態で放置されブリジットにどうしろと言うのか。
今すぐここから走り去りたいが、それをするにも振り返らなければならない。
振り返れば凍りついているガネット夫人とデイビットがいる。
恥ずかしくてとてもじゃないが振り返れそうになかった。
ブリジットは泣きたくなった。
ガネット夫人が肩をだき、助け出してくれなければ、涙が溢れていたに違いない。
そうして部屋に戻ってもシーツの中でひたすら恥ずかしさと戦っていた。
その戦いはその日だけにとどまらず、次の日にも持ち越した。
心配したガネット夫人が部屋に昼食を誘いに来てくれるまで。
そして昼食の誘いがあるまで身だしなみを整えてなかったことに気付き慌てて侍女に整えてもらった。
(自分で整えることがなくなっていたから気が緩んでいたんだわ。)
いつも通りの時間に身だしなみを整えていなかったことに少しショックを受けつつ、ブリジットはそう思った。
自分の醜態を思い出してはシーツにくるまって身悶えする。
それを繰り返し、身だしなみを整えることを忘れていたのだが、ブリジットはあえてそこから目を逸らした。
昨日の出来事は無かった事にしないと、ガネット夫人と顔を合わせられそうになかった。
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