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しおりを挟む……と、とにかく、に、にげ━━━━
焦っている間にも内側から扉が開く、中から顔を出したセージは、にこりともせずに言う。
「おかえり、ユキ。どこ行くの?」
「……」
「用事がないなら、入りなよ。怒ってないから」
…………、………。
「う……うん」
ものを言わせぬ圧力に屈して、導かれるままに部屋の中に入る。なんだか急かされているように感じて、少し慌てながら靴を脱ぐと、セージはボクの二の腕を強くつかんで、引っ張るようにして歩き出す。
「っ……」
ボクは何も悪い事をしていないというのに、セージのまとう雰囲気に完全に委縮して何も言えずに引っ張られるままに彼の部屋へと連れていかれて、促されるままベットに座った。部屋は電気がついていない。
窓からは赤い西日が差し込んでいる。そんな光景を見て、また少し日が短くなったなと思う。
それから、恐る恐るセージの方を、見ると彼は光源を背にして立ってるせいで、それほど大きく表情を崩しているわけじゃないのに、少し陰になっていて恐ろしく見える。
「……」
「……」
セージはしばらく無言のまま腕を組んで、ボクを見下ろす。ボクは心底居心地が悪くて、なんとなく座り直したり、持っていた紙袋を、膝の上に持ち直したりして、ただじっとしていた。
重たい沈黙が部屋の中に広がって空気を悪くしていく、それでも見当違いの事を言ってしまっては困るので、セージが話し出すのを待った。
彼は自分を落ち着かせるためにか、ため息と深呼吸の間みたいな吐息を吐いて口を開く。
「……それって、誰かに買ってもらった?」
話題は、このプレゼントの事らしい、なんともうまく説明できる気がしなくて、かぶりを振って否定する。
「へぇ……ねぇ、ユキ」
冷たい声がボクを呼ぶ。怯えからか、体が小さく跳ねた。
「君は俺のペットだよね」
セージはゆっくりと近づいてくる。ボクと目を合わせて、イラつきを現すように少し目を細めた。
「君は、ここにいるって約束したよね」
それはそう。約束した。離れる気はない。どうしてそんなことを聞くのだろうと不安から喉が引きつる。
「ユキ、約束したよね?」
「し、した」
「うん」
返事を求められていたようで再度問われる。ボクは少しどもりながら答えると、セージは少しだけ口角を上げる。
「……じゃあ、俺、君にここから居なくならないでって言ってあったよね」
言われて今度はコクコクと頷く。
確認の意味は分からないが、そんな予定はない。何か怒っているように感じて、信じてほしくてセージをじっと見つめる。
「約束守らなかったら俺がどんな手段に出るかわかってる?」
……どんなって、どんな?どこにいても探し出すって事だろうか、さながら悪の組織にでもさらわれたヒロインを探しに行くヒーローのように、冒険に出ると?
それは、この状況に似合わずファンシーだが、大方間違ってはいないとおもうのだ。
答えが出たので、先程と同じように頷く。そうすると、セージは考えるように自分の口に手を当てて「わかってはいるんだね」と呟く。そうして続ける。
「君がこれからその約束をずっと守ってくれるか、君は証明できる?」
……証明?言えばいいのか?
「……守る。ボクは居なくならない」
この言葉に嘘など一つもないので、ためらわずに口にする。もしかするとセージは、長い間、束縛できなかったせいで情緒不安定なのかもしれない。安心させるのが一番だろう。
ボクの言葉を聞いて、セージは長いため息をついて、しゃがみ込む。それから何故か、震えている手でボクの紙袋を抱えている両手を強く握る。
「…………ごめん。言葉じゃやっぱり信用できないな」
そう言って、強くボクの腕をつかんだ。
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