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しおりを挟む「君は、俺に何も教えてくれない。名前も、してることも」
「名前?間中 乎雪。絵は、趣味じゃなくて仕事。ごめんな。仕事って言って馬鹿にされるのが怖かったんだ」
何か、まだまだ、セージは沢山しゃべりそうに見えたのだが、ボクは、やっと彼がボクの事を聞いてくれたのだと嬉しくなって、ペラペラと話してしまう。
それに、それに先ほどの言葉、これをチャンスにしなければ、いつ渡すんだっ!
「こ、言葉じゃ信用できないって言ったな!」
「い、いったよ……?」
セージは急にボクが意欲的にしゃべりだしたことにどうやら混乱しているようで、すこし間抜けな顔をしながら答える。その回答を聞いてボクは鬼の首を取ったように、自慢げな顔をして言った。
「じゃ、これな。セージにあげる。受け取ってくれるか?」
「…………え」
「腕時計だ。お前に似合いそうなの買ってきた」
呆然として、力の抜けたセージの手を取って、紙袋を握らせる。彼はうろたえて、ボクと紙袋を交互に見ている。こんなに混乱してるセージも珍しい。なんだか途端に愛おしくなって、すぐそばにいるセージの首に手を回して、軽くキスをする。
「っ」
「なぁ、セージ、ボクな。お前の恋人になりたい。ペットじゃなくて、セージの恋人」
「……ユ、ユキまって、状況が飲み込めない」
「待たない。セージが好きだ。今までずっと言いたかった」
慌てふためく彼をのぞき込んでそう言うと、セージは目を大きく見開いて、ごくっと息をのむ。それから、ぐっと目をつむって今度はセージが、ガシッとボクの肩を掴んでキッとに睨む。
「まって、俺は流されないよ?バーに行っただろ、それも別の男と仲良さげに」
言われてそんなこともあったなと思うが、言い方からすると全部の事情は知らないらしいということもわかる。そして、何か勘違いをしている様子なのも考えてみると、すぐに、ピンときた。
「……お前、ミノルと会っただろ」
「みのる?知らないな」
「わからないのか?嫌な事ばっかり言う派手な髪の派手な奴だ。ボクの仕事仲間だ、あいつ、そういう事よくするんだ。バーに行ったことは説明できるし……今度同じバーに行こう。多分説明してくれる」
「ユキの仕事仲間?…………ああ、なるほど、だんだん話が読めてきたかな……彼は、今回みたいなことよくするの?」
ボクの説明に、セージは段々と状況が理解できてきたようで、先程までの焦ったような、怒ったような雰囲気はなくなっていた。
「たまにな。ボクが彼女居た時も同じ事されたし」
あいつはそういうやつだ。最近はまったく静かで、仕事の話も出来ていたし、戻ってこいと言われることも無かったので油断していたが、セージの方にアクションを起こしていたらしい。
……ミノルは行動が極端すぎるんだ。そして人の話を聞かない。まったく面倒な人物なのだがボクの恩人という事には変わりがないからそれが一番困る。
「……それは……また、なんというか。……困ったね」
「だろ?セージに迷惑かけるとは思ってなかった。悪い。嫌な思いしただろ」
「……いいや。そうでもないよ」
先ほどの様子を見てそうでもない事なんてないと思うのだが、彼はそう言ってくれるらしい。
相変わらず優しいなと思ってチュッとキスをする。そうすると、びくっとセージは反応して、それから恥ずかしいのか、それとも何か不満なのかわからないような顔をして、おもむろにセットしてある髪をぐしゃぐしゃとほぐしながらため息をつき、ボクの隣に座った。
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