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3章
第29話 先輩、襲来
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翌日の放課後、樋暮先輩と段原先輩が海茅のクラスに勢いよく入ってきた。
ロングヘアをなびかせる樋暮先輩に男子の目が、背が高く品のある佇まいをした段原先輩に女子の目が釘付けになる。
「誰? 二年生?」
「おわー、やっぱ年上最高」
「ちょっと、あの人めっちゃかっこよくない?」
一年生からの言葉を気にも留めず無表情で近づいてくる先輩二人に、海茅はカタカタ震えた。
樋暮先輩は、反射的に逃げようとした海茅の手首を掴み、わざとらしい笑みを浮かべる。
「海茅ちゃん。一緒にお勉強しようねー?」
「ひっ……ひぃ……」
「大丈夫だよ~。怖くないよ~。先輩が二人でみっちりお勉強教えてあげるからね~」
「ひぃっ……ひぃぃっ……。ゆ、優紀ちゃぁぁぁんっ……!」
助けを求めて伸ばされた海茅の手を、優紀はニッコリ笑って掴んだ。
「さ、音楽室に行こうか海茅ちゃん。勉強しに」
「う、裏切り者ぉぉぉぉっ!」
ギャァギャァ暴れる海茅が先輩たちに無理矢理引きずられていくところを、クラスメイトは呆然と眺めた。
海茅の抵抗する声がうっすら聞こえる廊下に目を向けながら、茜と創が匡史の傍にやってくる。
「一体何事?」
「彼方さん拉致されたけど……」
「な、なんで俺に聞くの?」
むずがゆそうにそんなことを言う匡史を、茜が肘で小突いた。
「だってこの中で一番仲良いじゃん」
「……期末テストで赤点回避しないと、コンクールに出させてもらえないんだって。で、みっちゃんにとって赤点回避はかなり難しいことらしい」
「やっぱり知ってたー」
ケタケタ笑う茜の隣で、創が囁き声にしてはハッキリと聞こえる声で尋ねる。
「やっぱりお前ら、付き合ってんの?」
「だ、だから付き合ってないって!!」
笑いを堪える創は、妙に腹が立つ顔をしていた。
創はわざとらしく口に手を当て、茜に話しかける。
「見ろよ茜、匡史がムキになってるぞ」
「ねー。怪しいねー」
匡史は何を言ってもイジられるだけだと悟り、何も応えず美術の教科書を開いた。
「ミッチー、部活頑張ってるのに、コンクールに出られないの可哀想だよねー」
匡史を横目で見ながらため息を吐く茜に、創は何度も頷いた。
「ほんとだよなー。誰か頭の良いヤツが勉強教えてやったらいいのになー」
「ね~。私で力になれたらいいんだけど、私は平均しか取れないし~」
「俺も教えられるほど頭良くないしなー」
そして二人は、教科書を逆さに持っている匡史に向かって声を揃える。
「「学年トップとはいかないまでも、学年二位くらいの人、近くにいないかな~」」
「ああ、もう! なんだよさっきからわざとらしいな!!」
やっと教科書を閉じた匡史を見て、茜と創がニヤッと笑う。
「あっ、聞こえてたんだー」
「そういや匡史は学年で何位だっけー?」
「二位だよ! 分かって言ってるだろ!? でもみっちゃんには喜田さんも二年の先輩もついてるから俺なんて必要ねえよ!」
なに言ってんだ、と創が匡史の肩に腕を回す。
「考えてみろよ。確かに先輩は頼りになりそうだが、一年前に習ったことを今もしっかり覚えてると思うか? 絶対に現役のお前の方が良い!!」
悔しいが創の言葉には一理ある、と匡史は納得してしまった。
それに、海茅が段原先輩に手を引かれていくのを見てから、なぜか胸がモヤモヤする。
「それに匡史がいたらミッチーも頑張れそうじゃん!」
茜の言葉には全く納得できなかったが、結局匡史は二人に連れられて音楽室に行くことになった。
ロングヘアをなびかせる樋暮先輩に男子の目が、背が高く品のある佇まいをした段原先輩に女子の目が釘付けになる。
「誰? 二年生?」
「おわー、やっぱ年上最高」
「ちょっと、あの人めっちゃかっこよくない?」
一年生からの言葉を気にも留めず無表情で近づいてくる先輩二人に、海茅はカタカタ震えた。
樋暮先輩は、反射的に逃げようとした海茅の手首を掴み、わざとらしい笑みを浮かべる。
「海茅ちゃん。一緒にお勉強しようねー?」
「ひっ……ひぃ……」
「大丈夫だよ~。怖くないよ~。先輩が二人でみっちりお勉強教えてあげるからね~」
「ひぃっ……ひぃぃっ……。ゆ、優紀ちゃぁぁぁんっ……!」
助けを求めて伸ばされた海茅の手を、優紀はニッコリ笑って掴んだ。
「さ、音楽室に行こうか海茅ちゃん。勉強しに」
「う、裏切り者ぉぉぉぉっ!」
ギャァギャァ暴れる海茅が先輩たちに無理矢理引きずられていくところを、クラスメイトは呆然と眺めた。
海茅の抵抗する声がうっすら聞こえる廊下に目を向けながら、茜と創が匡史の傍にやってくる。
「一体何事?」
「彼方さん拉致されたけど……」
「な、なんで俺に聞くの?」
むずがゆそうにそんなことを言う匡史を、茜が肘で小突いた。
「だってこの中で一番仲良いじゃん」
「……期末テストで赤点回避しないと、コンクールに出させてもらえないんだって。で、みっちゃんにとって赤点回避はかなり難しいことらしい」
「やっぱり知ってたー」
ケタケタ笑う茜の隣で、創が囁き声にしてはハッキリと聞こえる声で尋ねる。
「やっぱりお前ら、付き合ってんの?」
「だ、だから付き合ってないって!!」
笑いを堪える創は、妙に腹が立つ顔をしていた。
創はわざとらしく口に手を当て、茜に話しかける。
「見ろよ茜、匡史がムキになってるぞ」
「ねー。怪しいねー」
匡史は何を言ってもイジられるだけだと悟り、何も応えず美術の教科書を開いた。
「ミッチー、部活頑張ってるのに、コンクールに出られないの可哀想だよねー」
匡史を横目で見ながらため息を吐く茜に、創は何度も頷いた。
「ほんとだよなー。誰か頭の良いヤツが勉強教えてやったらいいのになー」
「ね~。私で力になれたらいいんだけど、私は平均しか取れないし~」
「俺も教えられるほど頭良くないしなー」
そして二人は、教科書を逆さに持っている匡史に向かって声を揃える。
「「学年トップとはいかないまでも、学年二位くらいの人、近くにいないかな~」」
「ああ、もう! なんだよさっきからわざとらしいな!!」
やっと教科書を閉じた匡史を見て、茜と創がニヤッと笑う。
「あっ、聞こえてたんだー」
「そういや匡史は学年で何位だっけー?」
「二位だよ! 分かって言ってるだろ!? でもみっちゃんには喜田さんも二年の先輩もついてるから俺なんて必要ねえよ!」
なに言ってんだ、と創が匡史の肩に腕を回す。
「考えてみろよ。確かに先輩は頼りになりそうだが、一年前に習ったことを今もしっかり覚えてると思うか? 絶対に現役のお前の方が良い!!」
悔しいが創の言葉には一理ある、と匡史は納得してしまった。
それに、海茅が段原先輩に手を引かれていくのを見てから、なぜか胸がモヤモヤする。
「それに匡史がいたらミッチーも頑張れそうじゃん!」
茜の言葉には全く納得できなかったが、結局匡史は二人に連れられて音楽室に行くことになった。
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