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3章
第28話 絶体絶命
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◇◇◇
侭白中学校では、期末テスト一週間前から部活禁止になる。吹奏楽部も例に漏れず、明日から休みだ。
合奏後のミーティングで、顧問が言った。
「部活明け、テストの成績を報告するように」
えええ~と部員から不満の声が上がったが、顧問がギョロ目をぎらつかせると一瞬で静かになる。
「俺だってこんなことはしたくない。だが、中間テストで赤点を取った部員が何人かいたんでな」
顧問の視線を感じたので、海茅は冷や汗を垂らしながらサッと顔を背けた。
「学生は勉強が本業だ。部活を言い訳にするな。勉強はちゃんとしなさい。赤点を取った部員はコンクールに出さないからな」
顧問が音楽室から去った途端、海茅を含む数人の部員が膝から崩れ落ちる。
「終わった……」
まるで葬式だ。赤点部員の中にはソロを担当している人もいた。ソロがない部員たちにも大切な役割がある。彼らが一人でも欠けてしまっては、演奏が成り立たない。
トランペットパートから悲痛な叫び声が聞こえた。
「あんた絶対赤点回避しなさいよ!? あたしからソロ奪っといて出場権失うなんてマジ許さないからね!? ねえ、聞いてる!? ねぇぇっ!」
しかし肩を揺さぶられている生徒から返事はない。どうやら魂が抜けてしまったようだ。
赤点部員がいるパートは、各々励ましたり呪いの言葉を浴びせたりとさまざまだった。
そしてパーカッションパートはというと――
樋暮先輩と段原先輩が、必死の形相で海茅に駆け寄った。
「海茅ちゃん! 中間の点数どのくらいだったの!?」
「期末は赤点回避できそう!?」
海茅は虚ろな目で先輩を見上げる。
「全教科赤点です……。回避は無理です……」
「全!教!科!」
「無理なんて言わないでぇぇぇっ……!」
脱力して天を仰ぐ樋暮先輩と、半泣きで海茅に縋り付く段原先輩。
そんな二人の肩に優紀は手を載せ、仏のような表情を浮かべた。
「海茅ちゃんの成績は、全教科一桁で、学年で最下位です……」
人は絶望したときこんな顔をするんだなあと、海茅は他人事のように思った。
侭白中学校では、期末テスト一週間前から部活禁止になる。吹奏楽部も例に漏れず、明日から休みだ。
合奏後のミーティングで、顧問が言った。
「部活明け、テストの成績を報告するように」
えええ~と部員から不満の声が上がったが、顧問がギョロ目をぎらつかせると一瞬で静かになる。
「俺だってこんなことはしたくない。だが、中間テストで赤点を取った部員が何人かいたんでな」
顧問の視線を感じたので、海茅は冷や汗を垂らしながらサッと顔を背けた。
「学生は勉強が本業だ。部活を言い訳にするな。勉強はちゃんとしなさい。赤点を取った部員はコンクールに出さないからな」
顧問が音楽室から去った途端、海茅を含む数人の部員が膝から崩れ落ちる。
「終わった……」
まるで葬式だ。赤点部員の中にはソロを担当している人もいた。ソロがない部員たちにも大切な役割がある。彼らが一人でも欠けてしまっては、演奏が成り立たない。
トランペットパートから悲痛な叫び声が聞こえた。
「あんた絶対赤点回避しなさいよ!? あたしからソロ奪っといて出場権失うなんてマジ許さないからね!? ねえ、聞いてる!? ねぇぇっ!」
しかし肩を揺さぶられている生徒から返事はない。どうやら魂が抜けてしまったようだ。
赤点部員がいるパートは、各々励ましたり呪いの言葉を浴びせたりとさまざまだった。
そしてパーカッションパートはというと――
樋暮先輩と段原先輩が、必死の形相で海茅に駆け寄った。
「海茅ちゃん! 中間の点数どのくらいだったの!?」
「期末は赤点回避できそう!?」
海茅は虚ろな目で先輩を見上げる。
「全教科赤点です……。回避は無理です……」
「全!教!科!」
「無理なんて言わないでぇぇぇっ……!」
脱力して天を仰ぐ樋暮先輩と、半泣きで海茅に縋り付く段原先輩。
そんな二人の肩に優紀は手を載せ、仏のような表情を浮かべた。
「海茅ちゃんの成績は、全教科一桁で、学年で最下位です……」
人は絶望したときこんな顔をするんだなあと、海茅は他人事のように思った。
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