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1章 断罪回避
41 潜入
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「私たちは怪しい者ではありません。こちらにおわすのは、国王陛下であらせられます」
顔は上げられない。
正体がばれたらマチルダに報告されて、城に戻されてしまう。
心臓がドキドキとうるさいけど、それを悟られてはならない。
私は頭を下げたまま、上目遣いで兵士の様子をうかがった。
「国王陛下?」
見張りの兵士が眉をひそめ、レオナルドを見る。
そしてすぐさま姿勢を正し、お辞儀をした。
「申し訳ございません!まさか陛下がいらっしゃるとは……無礼をお許しください。しかし、陛下がなぜここへ?」
問われたレオナルドは、「え」と言ったきり、顔を引きつらせて硬直してしまった。
動揺が丸出しだ。
議員の前でもこうなのだろうか。
帰ったら、まずはポーカーフェイスの練習をさせよう。
私はひそかに決意した。
そして、さりげなくレオナルドの前へ移動しながら、彼の代わりに答えた。
「リリィ様がお倒れになったと伺いました。陛下は大変ご心配なさっています。しかしマチルダ様は、見舞いは不要だと。ですので、せめて屋敷周りの見回りをしよう、と陛下がおっしゃったのです」
「それは……恐れ入ります。ですが、陛下がお手を煩わせる必要はございません。お気をつけてお帰りください」
「では、なぜこんなに警備が厳重なんだ。以前はこの半分程度だっただろう」
ギデオンが尋ねると、兵士は黙り込んだ。
何か隠しているというより、困っているように見える。
「現状を知らされていないようですね」
イザークの囁きに、私は小さく頷いた。
それもそうか、と思いながら。
マチルダが警備を強化したのは、暴徒を恐れたからだろう。
議員が勝手に「マチルダとリリィは偽聖女だ」と言いふらす可能性があるから。
それをエルディリス家の兵士が知れば、彼らは逃げ出すかもしれない。
暴徒を恐れる者や、市民との戦闘をためらう者が。
だからマチルダは、兵士に何の説明もしていないのだろう。
卑怯者め。
私がイライラしている間に、エリオットは兵士に笑顔を向けていた。
「とにかく、陛下のご懸念が無くなるまで、見回りをさせてもらいます。あなた方の邪魔はしませんよ」
「それでは失礼いたします」
私も軽く頭を下げて、その場を離れた。
しばらく歩くと、レオナルドが心配そうに囁いてきた。
「僕たちがここにいること、見張り全体に伝わるんじゃないか?」
レオナルドが心配そうに囁く。
「だろうね。でも、いいんじゃない?」
マチルダにも伝わるかもしれないけど、そこそこ時間はかかるはず。
対策を取られる前に、侵入してしまえばいいのだ。
「いいって……本当に?見張りに警戒されない?」
ビクビクしているルークに、私は微笑んでみせた。
「むしろ不安がると思うよ。事情を知らない兵士が多そうでしょ?なんで国王が出てきたんだろうって戸惑うんじゃないかな。それでマチルダに不信感を持ってくれたら、いざという時、こっちの味方になるかも」
「アナベル、どういうことだ?いざという時って?」
「もちろん、リリィを助け出す時だよ」
「アナベル様、お待ちください」
後ろを歩いていたイザークが、私の肩を叩く。
「先程から、妙に急いでおられますが……もしや、リリィ様は何者かに囚われているのですか?」
その言葉で、ギデオンたちが私に注目する。
マチルダがリリィをどう扱っているか、そろそろ話してもいいだろうか。
でも、どこまで話そう。
リリィがマチルダに滅多打ちにされているかも、とは言えないし。
ギデオンは剣を抜いて突撃、ルークは気絶するかもしれない。
「……マチルダって支配的じゃない?リリィを閉じ込めてるかもしれないから、かわいそうで。早く助けてあげたいの」
匂わせ程度に話すと、レオナルドが目を細めた。
「アナベル……君、頼りになるだけじゃなくて、優しくなったんだね」
「陛下、ようやく気づかれたのですか」
余計な一言を放ったのは、やっぱりイザークだ。
即座に空気が剣呑になる。
家族を失くした時、他人のことを考えられなくなったのかもしれないけど。
頼むからやめてほしい。
それともストレスが溜まっているんだろうか。
そういえば、大聖堂へ向かう時や、戦闘中も様子が変だった。
何にしても、早く屋敷へ入ってしまおう。
私は歩くスピードを上げつつ、目が痛くなるほど屋敷の壁を見つめた。
「……ん?」
屋敷の裏手を通っている時だった。
蔦だらけの壁に、色の違う部分があった。
「ねえ、あれって……」
私はそこを指差した。
蔦に隠れて見えにくいけど、気のせいじゃない。
「扉?」
「木製のようですね」
男性陣にも見えたようだ。
エリオットは、メガネをつけ外ししてもわからなかったようだけど。
長い間使われていないのか、近くに見張りもいない。
あそこから入ろう、とすぐに決まった。
そのためには柵を越えなくてはいけないのだが……
誰が私を補助するかで、イザーク以外の四人が揉め始めた。
「ギデオンはガサツですから、除外で」
「エリオットは力が足りないだろ」
「待ってくれ。未婚の女性に触るわけだから、元婚約者の僕が……」
「イザーク、よろしく!」
時間が無駄に潰れていくので、私はズバッと指名した。
「アナベルさん……なんでイザークなの?」
「だってイザークが一番力が強いし……って、なんでルークが涙目?」
何なんだろう。
剣呑な空気は消えたけど、今度は重くなってしまった。
ちなみに蔦や木の扉は、イザークがうまく斬ってくれたので、ほとんど音を立てずに取り払えた。
私が小声で「すごい」「ありがとう」と言いまくると、さらに空気が重くなった。
何なの、もう。
顔は上げられない。
正体がばれたらマチルダに報告されて、城に戻されてしまう。
心臓がドキドキとうるさいけど、それを悟られてはならない。
私は頭を下げたまま、上目遣いで兵士の様子をうかがった。
「国王陛下?」
見張りの兵士が眉をひそめ、レオナルドを見る。
そしてすぐさま姿勢を正し、お辞儀をした。
「申し訳ございません!まさか陛下がいらっしゃるとは……無礼をお許しください。しかし、陛下がなぜここへ?」
問われたレオナルドは、「え」と言ったきり、顔を引きつらせて硬直してしまった。
動揺が丸出しだ。
議員の前でもこうなのだろうか。
帰ったら、まずはポーカーフェイスの練習をさせよう。
私はひそかに決意した。
そして、さりげなくレオナルドの前へ移動しながら、彼の代わりに答えた。
「リリィ様がお倒れになったと伺いました。陛下は大変ご心配なさっています。しかしマチルダ様は、見舞いは不要だと。ですので、せめて屋敷周りの見回りをしよう、と陛下がおっしゃったのです」
「それは……恐れ入ります。ですが、陛下がお手を煩わせる必要はございません。お気をつけてお帰りください」
「では、なぜこんなに警備が厳重なんだ。以前はこの半分程度だっただろう」
ギデオンが尋ねると、兵士は黙り込んだ。
何か隠しているというより、困っているように見える。
「現状を知らされていないようですね」
イザークの囁きに、私は小さく頷いた。
それもそうか、と思いながら。
マチルダが警備を強化したのは、暴徒を恐れたからだろう。
議員が勝手に「マチルダとリリィは偽聖女だ」と言いふらす可能性があるから。
それをエルディリス家の兵士が知れば、彼らは逃げ出すかもしれない。
暴徒を恐れる者や、市民との戦闘をためらう者が。
だからマチルダは、兵士に何の説明もしていないのだろう。
卑怯者め。
私がイライラしている間に、エリオットは兵士に笑顔を向けていた。
「とにかく、陛下のご懸念が無くなるまで、見回りをさせてもらいます。あなた方の邪魔はしませんよ」
「それでは失礼いたします」
私も軽く頭を下げて、その場を離れた。
しばらく歩くと、レオナルドが心配そうに囁いてきた。
「僕たちがここにいること、見張り全体に伝わるんじゃないか?」
レオナルドが心配そうに囁く。
「だろうね。でも、いいんじゃない?」
マチルダにも伝わるかもしれないけど、そこそこ時間はかかるはず。
対策を取られる前に、侵入してしまえばいいのだ。
「いいって……本当に?見張りに警戒されない?」
ビクビクしているルークに、私は微笑んでみせた。
「むしろ不安がると思うよ。事情を知らない兵士が多そうでしょ?なんで国王が出てきたんだろうって戸惑うんじゃないかな。それでマチルダに不信感を持ってくれたら、いざという時、こっちの味方になるかも」
「アナベル、どういうことだ?いざという時って?」
「もちろん、リリィを助け出す時だよ」
「アナベル様、お待ちください」
後ろを歩いていたイザークが、私の肩を叩く。
「先程から、妙に急いでおられますが……もしや、リリィ様は何者かに囚われているのですか?」
その言葉で、ギデオンたちが私に注目する。
マチルダがリリィをどう扱っているか、そろそろ話してもいいだろうか。
でも、どこまで話そう。
リリィがマチルダに滅多打ちにされているかも、とは言えないし。
ギデオンは剣を抜いて突撃、ルークは気絶するかもしれない。
「……マチルダって支配的じゃない?リリィを閉じ込めてるかもしれないから、かわいそうで。早く助けてあげたいの」
匂わせ程度に話すと、レオナルドが目を細めた。
「アナベル……君、頼りになるだけじゃなくて、優しくなったんだね」
「陛下、ようやく気づかれたのですか」
余計な一言を放ったのは、やっぱりイザークだ。
即座に空気が剣呑になる。
家族を失くした時、他人のことを考えられなくなったのかもしれないけど。
頼むからやめてほしい。
それともストレスが溜まっているんだろうか。
そういえば、大聖堂へ向かう時や、戦闘中も様子が変だった。
何にしても、早く屋敷へ入ってしまおう。
私は歩くスピードを上げつつ、目が痛くなるほど屋敷の壁を見つめた。
「……ん?」
屋敷の裏手を通っている時だった。
蔦だらけの壁に、色の違う部分があった。
「ねえ、あれって……」
私はそこを指差した。
蔦に隠れて見えにくいけど、気のせいじゃない。
「扉?」
「木製のようですね」
男性陣にも見えたようだ。
エリオットは、メガネをつけ外ししてもわからなかったようだけど。
長い間使われていないのか、近くに見張りもいない。
あそこから入ろう、とすぐに決まった。
そのためには柵を越えなくてはいけないのだが……
誰が私を補助するかで、イザーク以外の四人が揉め始めた。
「ギデオンはガサツですから、除外で」
「エリオットは力が足りないだろ」
「待ってくれ。未婚の女性に触るわけだから、元婚約者の僕が……」
「イザーク、よろしく!」
時間が無駄に潰れていくので、私はズバッと指名した。
「アナベルさん……なんでイザークなの?」
「だってイザークが一番力が強いし……って、なんでルークが涙目?」
何なんだろう。
剣呑な空気は消えたけど、今度は重くなってしまった。
ちなみに蔦や木の扉は、イザークがうまく斬ってくれたので、ほとんど音を立てずに取り払えた。
私が小声で「すごい」「ありがとう」と言いまくると、さらに空気が重くなった。
何なの、もう。
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