断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝

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1章 断罪回避

21 マッハで飛来中

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 理解が追いつかず硬直していると、エリオットが「たしかに」と呟いた。

「お二人の婚約が解消されたのは、アナベル様の死刑が決定したからですし」

「陛下に婚約破棄の意思はなかったのかもな」

 ギデオンが、うんうんと頷く。

「アナベル様は、勉学は真面目に取り組んでいましたからね。陛下も内心では頼りになさっていたんでしょう」

「俺ですら、どうせアナベル様が王妃になると思っていたんだ。それが処刑されると決まって、陛下はショックでいらしただろう」

「なのに彼女が生き延びた上、平民と恋仲になったら……」

「腑に落ちないのも当然だな……」

 二人とも、好き勝手に話を進めている。
 想像で三角関係にしないでほしい。
 何となくオブラートに包んでいるから、まだ許せるものの。

 呆れて反論もできずにいると、ルークがきょとんと言った。

「あれ?レオナルドってアナベルさんのことが好きなの?」

 オブラートが、ビリビリに破り散らかされる。
 次の瞬間、レオナルドがものすごい勢いで私の腕をつかんだ。

「ひえっ!何⁉︎」

「アナベル、違うんだ!昔は君に同情してたし、今も処刑を撤回できなくて申し訳ないと思うけど!優しくなった君に惚れたとか、そういうのはないから!」

 力んでいるせいか、顔が真っ赤だ。
 そんなに頑張らなくてもわかるのに。

「ちょ、ちょっと、レオナルド。そろそろ手を離してくれる?リリィにペンダントを返したいんだけど」

「う……そういえば、まだだっけ……」

 レオナルドは気まずそうに目をそらして、すごすごと後ろへ下がった。
 それじゃあ、と私がペンダントの鎖に手をかけると。

「聖女様、お待ちください!」

 宝石からナギが飛び出した。
 
「何?どうしたの?」

「今から仲間が参ります。少々お待ちいただけませんか?」

「仲間?」

 残りの精霊だろうか。
 まだ会っていないのは、火の精霊と水の精霊だ。

「でも、来るって……ここに?火の精霊はラーヴァ火山にいるし、水の精霊はグリマ湖の底でしょ?」

 どちらもかなり遠かったはずだ。
 王都から現地まで、馬車で3日はかかったと思う。

 そして、この森は王都から徒歩半日。
 火の精霊も水の精霊も、すぐに来られるはずがない。
 しかし、ナギは長い体でくるりと輪を描き、楽しそうに言った。

「先日、聖女様のお力で嵐が起きたでしょう?」

「私っていうより、ナギの力だけど……」

「ご謙遜を。その時、聖女様の気配を仲間が感知したはず」

「ボクも、もしかしてって思った」

 コハクがポヨンと現れて、ふわふわと宙に浮かぶ。
 ナギはコハクに「ですよね」と言い、また私を見る。

「さらに、先程は巨狼を倒しました。仲間は確信したでしょう。私たちの聖女様が現れたと。歓喜のあまり、こちらへ飛んできています」

「飛んでくる⁉︎」

 驚く私に続いて、エリオットが心配そうに口を開く。

「休み休みでしたら、王都まで五日ほどでしょうか?」

「まさか!」

 ナギが、ふわふわの尻尾を左右に揺する。

「聖女様を見つけたのですよ?すべての力をもって、音のごとき速さで駆けつけるはず。もうすぐ到着するでしょう」

 その言葉を証明するように、戦闘機みたいな音が頭上で響き始めた。

「音のごときって……マッハで来てんの⁉︎」

 私はすばやく空を仰いだ。
 北と西、それぞれの方角に、赤と青の光が見えた。
 
 それはもう、すさまじい速さでこっちへ向かっている。

「……ねえ、ナギ。あれが落ちてきたら、この辺りが吹っ飛ぶんじゃない?」

「そうかもしれません。今の彼らは、力を暴走させていますからね」

 ナギは、黒い目を嬉しそうに細めた。
 精霊が暴走──家屋二十棟が崩壊した、という話が私の頭をよぎる。

「ナギ、喜んでる場合じゃないよ!何とかならない?壁を作るとか」

「そうですね、聖女様をお守りしなくては。コハク、出番ですよ」

「わかった。聖女さま、まもる、まもる!」

 小さな手足がパタパタッと動き、毛玉の体が発光する。
 私とイザークの周りに、岩のドームが作られていく。

「すごい、ありがとう……って、リリィたちが入れないんだけど⁉︎」

「別によろしいではありませんか」

「こらっ、何言ってんの!ほかのみんなも助けてくれないなら、外に出ちゃうから!」

 私が岩の壁をよじ登ろうとすると、

「お、お待ちください!すぐに皆を運びます!」

 と、ナギはくるりと回り、尻尾を一振りした。

 レオナルドたち五人の体がフワッと浮いて、ドームの中に入ってくる。
 ドームの天井がぴったり閉じて、真っ暗闇になる。

 外の音は聞こえない。
 かなり頑丈だとわかる。

 これで安心だ。
 安心だけど、狭い。
 冷たい板にギリギリと肩が押されて、骨が歪みそうだ。

「ぐえぇ、めちゃくちゃ痛い……これ、誰の何?」

 冷たい板をコンコンと叩くと、すぐに大声が返ってきた。
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