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1章 断罪回避
47 死刑取り消しの条件
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「何よ、提案って。絞首刑か斬首刑か選ばせてやろう、とか?」
「だから違うんだって……『処刑は延期するが、条件付きで取り消してはどうか』って言ったんだよ」
「条件付き?どんな?」
「それは保留だ」
何だ、その中途半端な提案は──と眉をひそめる私へ、
「表向きはね」
と、レオナルドは言った。
「議会のあと、公爵が僕に耳打ちしたんだ。『内密にアナベルに決めさせてやってほしい』って。」
「……なんで、私に?」
「アナベルが本物の聖女だから、だそうだ」
予想外の言葉に、ぽかんと口を開けてしまった。
レオナルドは苦笑し、話を続ける。
聖女の力を最大限に発揮すれば、伝説レベルの功績を立てられる。
そうすれば民はお祭りモードに。
リリィ偽物疑惑を忘れるだろう。
それに紛れて、成果に対する恩赦として私の死刑を取り消そう、ということらしい。
ただ、聖女の力の限界は、一貴族には想像できない。
しかし、本人なら自分の力を理解しているだろう。
だから、死刑取り消しの条件はアナベルに決めさせたい。
父はそう話したそうだ。
「何よ、それ……」
私は自然と目を伏せていた。
なぜ、という思いが心を占めていた。
アナベルが見つめても、無視した父親。
王妃教育は問題ないか、とアナベルではなく教師に尋ねた父親。
なぜ、アナベルが本物の聖女だと信じたのか。
それだけで、なぜこんなに態度が変わったのか。
(そういえば、大聖堂で『本物の聖女はマーガレット』って言いかけてたっけ。だから、娘のアナベルも聖女だろうって考えたの?でも、それだけでここまで態度が変わる……?)
あんなにアナベルに冷たかったのに。
ちっとも興味を示さなかったのに。
他人である私ですら釈然としない。
「……あ。その前に、二人で聖女ってことになってるけど。私がドーンとすごいことをしたら、リリィにも何かあげたりするの?」
「いや。貴族の中では、聖女はアナベルだっていう認識みたいだ」
「えっ!なんで?いつの間に?」
「ほら、大聖堂で、イザークが色々暴露しちゃったから……」
そういえばそうだった。
私とレオナルドは、二人して小さくため息をついた。
「でも、幅を利かせてたマチルダはいなくなったし、リリィはかなり頑張ってたから。見て見ぬふりって感じだった」
「そっか……じゃあ、あとはもう私が頑張るだけなんだね」
「そうなんだ。どうする?アナベル」
レオナルドが不安そうに尋ねてくる。
「処刑取り消しの条件。相当な難事にしないといけないって、公爵は言ってたけど」
「条件は……」
私は強い。
魔物が何千匹と襲ってきても、瞬きのうちに殲滅できる。
それなら“奴”も倒せるはずだ。
でも、その前に保険をかけておかないと。
私はレオナルドを見つめて、口を開いた。
「ねえ、レオナルド。『聖女のペンダント強奪は未遂でも死刑』っていう法律、あるでしょ?あそこに文言を追加してほしいんだけど。『聖女並みの力で国を救った場合は、判決を取り消す』って」
「つ、追加?いきなりそんなこと言われても……」
「でもさ、私がどんなにすごいことをやっても、あとから文句を言う人はいると思うんだよね。その時、法律を盾にできたら強いじゃない?」
それに、マチルダのような偽聖女がまた現れるかもしれない。
後世で本物の聖女が殺されないために、逃げ道を作ってあげたいのだ。
「すごいことって……君、何をするつもり?」
「魔王を倒すつもり」
「魔王を⁉︎」
レオナルドは目を丸くして叫んだ。
不可能じゃない。
私はゲームプレイ時に魔王を倒した。
弱点や攻撃パターンは覚えている。
それに──
「これまでの戦いで、自分の力量は把握したからね。私なら魔王を倒せるよ、絶対に」
賭けではない。現実的な計画だ。
まだ硬直したままのレオナルドに、私は続ける。
「そんな条件、私以外に満たせる人なんて、ほぼいないでしょ?」
形骸化前提の改正なら、議員たちも警戒しないはずだ。
そう言って、レオナルドをじっと見すえる。
レオナルドは何度か瞬きをして、ようやく口を開いた。
「わかった……たしかに今の君なら、入念に準備すれば大丈夫かもしれないな。ただ、法改正するためには、議員の三分の二が賛成しないといけないんだけど……」
「じゃ、『法律が変わらないならアナベルは魔王討伐に行かないらしい』って伝えといて」
私が胸を張ると、レオナルドは目を丸くした。
そして数秒後、彼は吹き出した。
「何?私、変なこと言った?」
「ううん、頼もしいよ。僕も強気に出る練習をしなくちゃな」
「そうだよ。今ならそんなに心配することないでしょ?マチルダが死んで、貴族にまとまりがないだろうし」
「まったくだ。しかも、これまで議員は何も考えずにマチルダに追従してたからね」
苦笑するレオナルドに、私も苦笑を返すしかなかった。
言い方は悪いが、今の議員たちに考える頭はないだろう。
エルディリス家を残すか潰すか、という点では結託できても、それ以外では烏合の衆状態。
というか、議員はここまでの話を理解できるんだろうか?
停止した頭は、すぐには回らないだろうし。
この国が心配だ。
逆に言えば、こっちの好きなように国を変えるチャンスでもあるんだけど。
「じゃあ……レオナルド。さっきの、追加できるかな?」
「ああ。細かい部分は変えることになるだろうけど。またヘイルフォード公爵と相談して、議員が納得するものを提出するよ」
と、一段落したところで、レオナルドは躊躇いがちに「それで」と言った。
「その公爵が……アナベルはもう脅威じゃないから、『週に一度、仮釈放してもいいんじゃないか』って言ったんだ。君が希望するなら、今日からでも」
「本当⁉︎」
純粋に嬉しい。
ずっと部屋に籠っていると息が詰まってしまう。
それに、イザークの様子を見に行きたい。
怪我の具合がわからないから心配だ。
「どこへ行ってもいいの?」
「王都内限定で、監視付きだけどね。それで……」
レオナルドが口をモゴモゴさせる。
さっきから何なのだろう。
「その……公爵が、まずは家へ帰ってこいって……」
「だから違うんだって……『処刑は延期するが、条件付きで取り消してはどうか』って言ったんだよ」
「条件付き?どんな?」
「それは保留だ」
何だ、その中途半端な提案は──と眉をひそめる私へ、
「表向きはね」
と、レオナルドは言った。
「議会のあと、公爵が僕に耳打ちしたんだ。『内密にアナベルに決めさせてやってほしい』って。」
「……なんで、私に?」
「アナベルが本物の聖女だから、だそうだ」
予想外の言葉に、ぽかんと口を開けてしまった。
レオナルドは苦笑し、話を続ける。
聖女の力を最大限に発揮すれば、伝説レベルの功績を立てられる。
そうすれば民はお祭りモードに。
リリィ偽物疑惑を忘れるだろう。
それに紛れて、成果に対する恩赦として私の死刑を取り消そう、ということらしい。
ただ、聖女の力の限界は、一貴族には想像できない。
しかし、本人なら自分の力を理解しているだろう。
だから、死刑取り消しの条件はアナベルに決めさせたい。
父はそう話したそうだ。
「何よ、それ……」
私は自然と目を伏せていた。
なぜ、という思いが心を占めていた。
アナベルが見つめても、無視した父親。
王妃教育は問題ないか、とアナベルではなく教師に尋ねた父親。
なぜ、アナベルが本物の聖女だと信じたのか。
それだけで、なぜこんなに態度が変わったのか。
(そういえば、大聖堂で『本物の聖女はマーガレット』って言いかけてたっけ。だから、娘のアナベルも聖女だろうって考えたの?でも、それだけでここまで態度が変わる……?)
あんなにアナベルに冷たかったのに。
ちっとも興味を示さなかったのに。
他人である私ですら釈然としない。
「……あ。その前に、二人で聖女ってことになってるけど。私がドーンとすごいことをしたら、リリィにも何かあげたりするの?」
「いや。貴族の中では、聖女はアナベルだっていう認識みたいだ」
「えっ!なんで?いつの間に?」
「ほら、大聖堂で、イザークが色々暴露しちゃったから……」
そういえばそうだった。
私とレオナルドは、二人して小さくため息をついた。
「でも、幅を利かせてたマチルダはいなくなったし、リリィはかなり頑張ってたから。見て見ぬふりって感じだった」
「そっか……じゃあ、あとはもう私が頑張るだけなんだね」
「そうなんだ。どうする?アナベル」
レオナルドが不安そうに尋ねてくる。
「処刑取り消しの条件。相当な難事にしないといけないって、公爵は言ってたけど」
「条件は……」
私は強い。
魔物が何千匹と襲ってきても、瞬きのうちに殲滅できる。
それなら“奴”も倒せるはずだ。
でも、その前に保険をかけておかないと。
私はレオナルドを見つめて、口を開いた。
「ねえ、レオナルド。『聖女のペンダント強奪は未遂でも死刑』っていう法律、あるでしょ?あそこに文言を追加してほしいんだけど。『聖女並みの力で国を救った場合は、判決を取り消す』って」
「つ、追加?いきなりそんなこと言われても……」
「でもさ、私がどんなにすごいことをやっても、あとから文句を言う人はいると思うんだよね。その時、法律を盾にできたら強いじゃない?」
それに、マチルダのような偽聖女がまた現れるかもしれない。
後世で本物の聖女が殺されないために、逃げ道を作ってあげたいのだ。
「すごいことって……君、何をするつもり?」
「魔王を倒すつもり」
「魔王を⁉︎」
レオナルドは目を丸くして叫んだ。
不可能じゃない。
私はゲームプレイ時に魔王を倒した。
弱点や攻撃パターンは覚えている。
それに──
「これまでの戦いで、自分の力量は把握したからね。私なら魔王を倒せるよ、絶対に」
賭けではない。現実的な計画だ。
まだ硬直したままのレオナルドに、私は続ける。
「そんな条件、私以外に満たせる人なんて、ほぼいないでしょ?」
形骸化前提の改正なら、議員たちも警戒しないはずだ。
そう言って、レオナルドをじっと見すえる。
レオナルドは何度か瞬きをして、ようやく口を開いた。
「わかった……たしかに今の君なら、入念に準備すれば大丈夫かもしれないな。ただ、法改正するためには、議員の三分の二が賛成しないといけないんだけど……」
「じゃ、『法律が変わらないならアナベルは魔王討伐に行かないらしい』って伝えといて」
私が胸を張ると、レオナルドは目を丸くした。
そして数秒後、彼は吹き出した。
「何?私、変なこと言った?」
「ううん、頼もしいよ。僕も強気に出る練習をしなくちゃな」
「そうだよ。今ならそんなに心配することないでしょ?マチルダが死んで、貴族にまとまりがないだろうし」
「まったくだ。しかも、これまで議員は何も考えずにマチルダに追従してたからね」
苦笑するレオナルドに、私も苦笑を返すしかなかった。
言い方は悪いが、今の議員たちに考える頭はないだろう。
エルディリス家を残すか潰すか、という点では結託できても、それ以外では烏合の衆状態。
というか、議員はここまでの話を理解できるんだろうか?
停止した頭は、すぐには回らないだろうし。
この国が心配だ。
逆に言えば、こっちの好きなように国を変えるチャンスでもあるんだけど。
「じゃあ……レオナルド。さっきの、追加できるかな?」
「ああ。細かい部分は変えることになるだろうけど。またヘイルフォード公爵と相談して、議員が納得するものを提出するよ」
と、一段落したところで、レオナルドは躊躇いがちに「それで」と言った。
「その公爵が……アナベルはもう脅威じゃないから、『週に一度、仮釈放してもいいんじゃないか』って言ったんだ。君が希望するなら、今日からでも」
「本当⁉︎」
純粋に嬉しい。
ずっと部屋に籠っていると息が詰まってしまう。
それに、イザークの様子を見に行きたい。
怪我の具合がわからないから心配だ。
「どこへ行ってもいいの?」
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