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3章:竜の国 ユミルトゥス
ご挨拶 5話
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「公爵夫妻は、とても幸せな結婚生活を過ごしているのですね」
「ええ。だって私を愛してくれる方ですもの。愛されるとね、愛したくなっちゃうのよ」
きゃっ、と恥ずかしそうに両手で顔を覆う公爵夫人に、なんだか私まで恥ずかしくなってしまったわ。
「そういうわけで、我が国の高位貴族たちの愛は重い、とよく言われていたが……一途という言葉はいいね。私はこれからも、妻一筋だから」
きっぱりと言い切った公爵に、思わず拍手をしそうになった。
そっと公爵夫人の方を抱いて、自分のほうに引き寄せているのも自然だわ。
すごい。本当にすごい。
「……あの、変なことを聞いてもよろしいでしょうか?」
「なんだい?」
「それは、魅了の魔法を使われても、ですか?」
フローラのことを思い浮かべながら言葉を紡ぐと、公爵は「ふむ」と小さくつぶやいた。
「魅了の魔法を受けたことがないので、これはただの可能性の話になる」
公爵はちらりとフィリベルトさまに視線を向けてから、私に視線を移してにこやかに微笑む。
「魅了の魔法を受けても、妻に会えば妻に気持ちが戻ると思うよ」
その瞳は、慈愛に満ちていた。
公爵夫妻がどんなふうに愛を重ねてきたのか……私には想像ができないけれど、きっと、たくさんのことを乗り越えてきたのだろう。
「まぁ、だからこそ……運命だと、思うんだ」
照れくさそうにはにかむ姿は、公爵夫人に恋をしている男性の顔をしていた。
そのことに公爵夫人も気づいたのだろう。
ぽっと頬を赤らめて、「あなたったら」とまんざらでもないように甘えた声を出している。
フィリベルトさまはこほんっ、と咳払いをしてじとりと両親を睨みつけた。
息子の前でこんなにラブラブなところを見せても、気にしていないのでしょうね。公爵夫妻は。
「リディア嬢、すみません、こんな両親で……」
「あ、いえ。夫婦仲が良いのは一番だと思います。ふふ、私のお父さまとも気が合いそうですし」
病死したお母さまのことを、ずっと愛しているお父さま。
きっと、フィリベルトさまのご両親と意気投合できる……気がするわ。
「そうか、結婚前に一度、リディア嬢のご家族に挨拶をしたいな」
……その言葉で、私の話を聞いても、受け入れてくれたことを悟る。
「リディアちゃん、これからよろしくね」
「は、はい! こちらこそよろしくお願いいたします」
こうして私は、フィリベルトさまの婚約者として認められた。
「今日はうちに泊まってちょうだいね。娘ができると思って、張り切って部屋を用意したのよ」
にこやかな公爵夫人に、「部屋、ですか?」と目を丸くしてしまう。
まさか、私のために部屋を用意してくれているとは想像していなかったので、びっくりしたの。
「オレの部屋でも良かったのに」
「なにを言っているんだ、お前は。部屋を一緒にするのは結婚してからだろう」
フィリベルトさまが後頭部に手を置いて、残念そうに息を吐いた。
「ええ。だって私を愛してくれる方ですもの。愛されるとね、愛したくなっちゃうのよ」
きゃっ、と恥ずかしそうに両手で顔を覆う公爵夫人に、なんだか私まで恥ずかしくなってしまったわ。
「そういうわけで、我が国の高位貴族たちの愛は重い、とよく言われていたが……一途という言葉はいいね。私はこれからも、妻一筋だから」
きっぱりと言い切った公爵に、思わず拍手をしそうになった。
そっと公爵夫人の方を抱いて、自分のほうに引き寄せているのも自然だわ。
すごい。本当にすごい。
「……あの、変なことを聞いてもよろしいでしょうか?」
「なんだい?」
「それは、魅了の魔法を使われても、ですか?」
フローラのことを思い浮かべながら言葉を紡ぐと、公爵は「ふむ」と小さくつぶやいた。
「魅了の魔法を受けたことがないので、これはただの可能性の話になる」
公爵はちらりとフィリベルトさまに視線を向けてから、私に視線を移してにこやかに微笑む。
「魅了の魔法を受けても、妻に会えば妻に気持ちが戻ると思うよ」
その瞳は、慈愛に満ちていた。
公爵夫妻がどんなふうに愛を重ねてきたのか……私には想像ができないけれど、きっと、たくさんのことを乗り越えてきたのだろう。
「まぁ、だからこそ……運命だと、思うんだ」
照れくさそうにはにかむ姿は、公爵夫人に恋をしている男性の顔をしていた。
そのことに公爵夫人も気づいたのだろう。
ぽっと頬を赤らめて、「あなたったら」とまんざらでもないように甘えた声を出している。
フィリベルトさまはこほんっ、と咳払いをしてじとりと両親を睨みつけた。
息子の前でこんなにラブラブなところを見せても、気にしていないのでしょうね。公爵夫妻は。
「リディア嬢、すみません、こんな両親で……」
「あ、いえ。夫婦仲が良いのは一番だと思います。ふふ、私のお父さまとも気が合いそうですし」
病死したお母さまのことを、ずっと愛しているお父さま。
きっと、フィリベルトさまのご両親と意気投合できる……気がするわ。
「そうか、結婚前に一度、リディア嬢のご家族に挨拶をしたいな」
……その言葉で、私の話を聞いても、受け入れてくれたことを悟る。
「リディアちゃん、これからよろしくね」
「は、はい! こちらこそよろしくお願いいたします」
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にこやかな公爵夫人に、「部屋、ですか?」と目を丸くしてしまう。
まさか、私のために部屋を用意してくれているとは想像していなかったので、びっくりしたの。
「オレの部屋でも良かったのに」
「なにを言っているんだ、お前は。部屋を一緒にするのは結婚してからだろう」
フィリベルトさまが後頭部に手を置いて、残念そうに息を吐いた。
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