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3章:竜の国 ユミルトゥス
ご挨拶 4話
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「……リディア嬢?」
「あ、いえ……その、とても仲が良いのですね」
おっといけない、考え込んじゃった。
フィリベルトさまの声に、慌てて彼に視線を移して、緩やかに微笑む。
「ええ、まぁ。私たちの前でもこの調子ですからね……」
肩をすくめるフィリベルトさまに、くすくすと笑ってしまった。やっぱり、彼にとってこの光景は、『普通』のことなのね。
「ところで、『運命』とは?」
公爵夫人の言葉が気になって尋ねると、彼女はぱちくりと目を瞬かせて、「うふふ」と頬に手を添え、可愛らしい笑い声を上げた。
「ユミルトゥスの民はね、竜の血を受け継いでいると伝えられているの」
「竜の血?」
「ええ。ユミルトゥスを創世したのは、竜だと伝えられているのよ」
竜が、国を作った? 壮大な話に目を丸くして公爵夫人を見つめると、彼女はちらりと公爵を見上げる。
公爵は彼女から言葉を引き継いだかのように、口を開く。
「――竜の涙を、知っているかい?」
「は、はい。万能薬と呼ばれていますよね」
「そうだ。その竜の涙は、王家や公爵家に受け継がれている」
どういうこと? 本で読んだときには、竜の涙を使って疫病に苦しんでいる人を治したとあった。いや、これはおとぎ話なの?
ちょっと頭が混乱してきたわ。
「竜の涙は、存在しているのですね」
「ああ。おそらくリディア嬢が知っているのは、『守護竜が流した涙』だろう」
こくりとうなずく。
もしかして、他にも伝承があるの?
なんだか胸がドキドキと高鳴ってきたわ。
この話を聞いてもいいのかしらという疑問と、他の伝承はどんなものかという好奇心が混ざり合って、複雑な気持ち。
「竜の涙はね、結婚したあとに、王族の血筋が流す涙のことなんだ」
「……王族の血筋が、流す涙?」
言葉にしてみても、意味がわからない。
「そうだ。結婚後、配偶者と一緒に過ごす時間が幸せ過ぎて、涙が出るんだ。ただ、涙を流さない人もいる。そのときは、いずれ離婚や死別することが多いね」
……えっと、結婚したあとにフィリベルトさまが涙を流さなかったら、それは『運命』ではなかったということ?
というか、幸せ過ぎて涙を流すってどういうこと?
いや、うれし泣きという言葉もあるくらいだし、そこは気にしなくてもいいのかしら?
「ははは、いきりなりそんなことを言われても困るだろうけどね。実際私も泣いてしまったよ。妻が私の手に届くところにいてくれるのが、嬉しくてね」
「あのときはびっくりしましたわ。いきなりぽろぽろ涙を流すのですから」
頬から口元に手を移動して、目元を細める公爵夫人。
……公爵が涙を流すところが、全然想像できないわ。
「父上、たまに泣いていますよね、今でも」
「あら、知っていたの?」
「そりゃあね」
い、今でも……!? でもそれをどうやって万能薬に……?
だめだわ、頭の中が混乱していて、想像できない!
でも、こんなにダンディな公爵が涙を流すくらい幸せなんて、素敵なことだと思う。
「あ、いえ……その、とても仲が良いのですね」
おっといけない、考え込んじゃった。
フィリベルトさまの声に、慌てて彼に視線を移して、緩やかに微笑む。
「ええ、まぁ。私たちの前でもこの調子ですからね……」
肩をすくめるフィリベルトさまに、くすくすと笑ってしまった。やっぱり、彼にとってこの光景は、『普通』のことなのね。
「ところで、『運命』とは?」
公爵夫人の言葉が気になって尋ねると、彼女はぱちくりと目を瞬かせて、「うふふ」と頬に手を添え、可愛らしい笑い声を上げた。
「ユミルトゥスの民はね、竜の血を受け継いでいると伝えられているの」
「竜の血?」
「ええ。ユミルトゥスを創世したのは、竜だと伝えられているのよ」
竜が、国を作った? 壮大な話に目を丸くして公爵夫人を見つめると、彼女はちらりと公爵を見上げる。
公爵は彼女から言葉を引き継いだかのように、口を開く。
「――竜の涙を、知っているかい?」
「は、はい。万能薬と呼ばれていますよね」
「そうだ。その竜の涙は、王家や公爵家に受け継がれている」
どういうこと? 本で読んだときには、竜の涙を使って疫病に苦しんでいる人を治したとあった。いや、これはおとぎ話なの?
ちょっと頭が混乱してきたわ。
「竜の涙は、存在しているのですね」
「ああ。おそらくリディア嬢が知っているのは、『守護竜が流した涙』だろう」
こくりとうなずく。
もしかして、他にも伝承があるの?
なんだか胸がドキドキと高鳴ってきたわ。
この話を聞いてもいいのかしらという疑問と、他の伝承はどんなものかという好奇心が混ざり合って、複雑な気持ち。
「竜の涙はね、結婚したあとに、王族の血筋が流す涙のことなんだ」
「……王族の血筋が、流す涙?」
言葉にしてみても、意味がわからない。
「そうだ。結婚後、配偶者と一緒に過ごす時間が幸せ過ぎて、涙が出るんだ。ただ、涙を流さない人もいる。そのときは、いずれ離婚や死別することが多いね」
……えっと、結婚したあとにフィリベルトさまが涙を流さなかったら、それは『運命』ではなかったということ?
というか、幸せ過ぎて涙を流すってどういうこと?
いや、うれし泣きという言葉もあるくらいだし、そこは気にしなくてもいいのかしら?
「ははは、いきりなりそんなことを言われても困るだろうけどね。実際私も泣いてしまったよ。妻が私の手に届くところにいてくれるのが、嬉しくてね」
「あのときはびっくりしましたわ。いきなりぽろぽろ涙を流すのですから」
頬から口元に手を移動して、目元を細める公爵夫人。
……公爵が涙を流すところが、全然想像できないわ。
「父上、たまに泣いていますよね、今でも」
「あら、知っていたの?」
「そりゃあね」
い、今でも……!? でもそれをどうやって万能薬に……?
だめだわ、頭の中が混乱していて、想像できない!
でも、こんなにダンディな公爵が涙を流すくらい幸せなんて、素敵なことだと思う。
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