異世界転移が決まってる僕、あと十年で生き抜く力を全部そろえる

谷川 雅

文字の大きさ
240 / 247

第5部 第5話 守護獣との対峙――二つの魂の証明

しおりを挟む
🌋 水晶の巨獣、咆哮
 四河が集まる峡谷の底。
 巨大な水晶のアーチ――水門の前に立ちはだかるのは、
 **水晶の鎧をまとった守護獣(ガーディアン)**だった。
 その体は七メートルを超え、四足でありながら人のような体幹を持ち、
 全身の水晶が青く脈動し、生命の鼓動のように光を放つ。
「……これが、水門の守護者」
 紬が息を呑む。
「さすが初代王だ……とんでもない仕掛けを残してくれたな」
 陽介は静かに剣を構えた。
 守護獣が一歩踏み出すたび、地面が震える。
 水晶が軋む音を立て、喉奥から低い咆哮が響き渡った。
 ――試すように。
 ――問いかけるように。
________________________________________
⚔️ 第一撃――触れた瞬間に砕ける剣
 前衛の騎士が一斉に突撃した。
 鋼の槍が水晶の脚へ向けられる。
「突撃ーーーっ!!」
 しかし――
 バキィン!!
 槍は全て粉々に砕け散った。
 守護獣の水晶装甲は、鋼を石ころのように叩き折る。
「ダ、ダメだ! 武器が通らない!」
 後衛が悲鳴を上げる間もなく、守護獣の尾が横薙ぎに振られた。
「下がれ!!」
 陽介が叫び、飛び込んで盾を構える。
 巨大な尾が陽介の盾を叩きつけ、地面を滑りながら後退させられた。
 陽介は歯を食いしばる。
「……桁が違う。
 本気で“通さないつもり”だな、こいつ」
________________________________________
🌊 紬の判断――属性の読み解き
 紬は杖を構え、目を凝らした。
「水晶装甲は……“魔力の流れ”そのもの……!
 だから魔法で破壊しようとしても、逆流してこちらに跳ね返る……」
 守護獣は “攻撃を拒絶する装甲” を持つ存在。
 ただの魔物ではない。
 “門を開かせる気がない者”を排除するための存在だ。
「陽介。
 これ、多分だけど……“倒す相手”じゃない」
「倒さない……? どういうことだ?」
「証明する相手よ。
 心の強さ、願いの強さ……“二つの魂が一致しているかどうか”。
 戦いながら、その真意を測ってる」
 陽介は深く頷いた。
「じゃあ……“俺たちの覚悟”を見せる戦いってことか」
________________________________________
🔥 第二撃――十領主の精鋭たちの参戦
 その時、後方から声が響いた。
「陽介様! 我らも参ります!」
 駆けつけたのは十領主の精鋭たちだった。
 トマスの部隊が重盾を構え、衝撃を受け止める壁を作る。
 カティア配下の商隊護衛が機動力で側面を取る。
 オルフェンの鍛冶兵は強化ハンマーで水晶の節を叩く。
 エリナの研究班は守護獣の魔力の流れを分析し、弱点を探る。
 フェリクスとノアの補給隊が矢と薬を配り、
 マリアの治療班が後衛で負傷兵を支える。
 ユリウスが全体指揮に立ち、
 ライナルトが水晶の紋を読み取りながら叫んだ。
「守護獣は“完全拒絶”ではない!
 攻撃の瞬間、胸の水晶が白く濁る……!
 あれが“心の揺らぎ”だ!」
「揺らぎ……?
 じゃあ、そこが唯一の突破口だ!」
 陽介が剣を構え直した。
________________________________________
⚡ 激突――二つの魂の決意
 陽介と紬が、同時に前へ踏み出す。
「行くぞ紬! 俺たちの答えを叩き込む!」
「ええ――二人で、未来を切り拓こう!」
 守護獣が咆哮し、胸の水晶が光る。
 陽介は低く構え、渾身の踏み込みで胸部へ斬りつける。
 紬はその横で魔力を圧縮し、純白の光を重ねる。
 剣と魔力。
 二つの力が同じ線を描くように重なった。
 バァァンッ!!!
 守護獣の胸の水晶が初めて砕け、青い光が霧散した。
 守護獣は一歩後退し、低く頭を垂れた。
________________________________________
🌈 認められた証し
 ライナルトが叫ぶ。
「――門が反応しています!!」
 巨大な水晶アーチの紋章が光り始めた。
 青い光が川のように流れ、アーチ全体が震える。
 守護獣は陽介と紬を見つめ、
 まるで“通行を許す”かのように、静かに身を引いた。
 陽介は剣を下げ、深く礼をした。
「ありがとう……俺たちの覚悟を、確かめてくれたんだな」
 紬も涙を浮かべながら言う。
「私たち……あなたが守ってきた未来を、絶対に壊さないわ」
 守護獣は静かに頷き、
 光の粒となって水門の向こうへ消えていった。
________________________________________
🌅 水門、開く――そして、選択のときへ
 水門の中心に、青白い“光の揺らぎ”が生まれた。
 まるで水面のように揺れ、
 しかしその奥には――見覚えのある“空の青”が見えた。
 陽介の心臓が早鐘のように鳴る。
「……これは――」
「……現世……?」
 紬の声も震えていた。
 二つの世界の境界線が、
 いま静かに“扉として”姿を現した。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

星降る夜に落ちた子

千東風子
児童書・童話
 あたしは、いらなかった?  ねえ、お父さん、お母さん。  ずっと心で泣いている女の子がいました。  名前は世羅。  いつもいつも弟ばかり。  何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。  ハイキングなんて、来たくなかった!  世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。  世羅は滑るように落ち、気を失いました。  そして、目が覚めたらそこは。  住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。  気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。  二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。  全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。  苦手な方は回れ右をお願いいたします。  よろしくお願いいたします。  私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。  石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!  こちらは他サイトにも掲載しています。

村から追い出された変わり者の僕は、なぜかみんなの人気者になりました~異種族わちゃわちゃ冒険ものがたり~

楓乃めーぷる
児童書・童話
グラム村で変わり者扱いされていた少年フィロは村長の家で小間使いとして、生まれてから10年間馬小屋で暮らしてきた。フィロには生き物たちの言葉が分かるという不思議な力があった。そのせいで同年代の子どもたちにも仲良くしてもらえず、友達は森で助けた赤い鳥のポイと馬小屋の馬と村で飼われている鶏くらいだ。 いつもと変わらない日々を送っていたフィロだったが、ある日村に黒くて大きなドラゴンがやってくる。ドラゴンは怒り村人たちでは歯が立たない。石を投げつけて何とか追い返そうとするが、必死に何かを訴えている. 気になったフィロが村長に申し出てドラゴンの話を聞くと、ドラゴンの巣を荒らした者が村にいることが分かる。ドラゴンは知らぬふりをする村人たちの態度に怒り、炎を噴いて暴れまわる。フィロの必死の説得に漸く耳を傾けて大人しくなるドラゴンだったが、フィロとドラゴンを見た村人たちは、フィロこそドラゴンを招き入れた張本人であり実は魔物の生まれ変わりだったのだと決めつけてフィロを村を追い出してしまう。 途方に暮れるフィロを見たドラゴンは、フィロに謝ってくるのだがその姿がみるみる美しい黒髪の女性へと変化して……。 「ドラゴンがお姉さんになった?」 「フィロ、これから私と一緒に旅をしよう」 変わり者の少年フィロと異種族の仲間たちが繰り広げる、自分探しと人助けの冒険ものがたり。 ・毎日7時投稿予定です。間に合わない場合は別の時間や次の日になる場合もあります。

レイルーク公爵令息は誰の手を取るのか

宮崎世絆
児童書・童話
うたた寝していただけなのに異世界転生してしまった。 公爵家の長男レイルーク・アームストロングとして。 あまりにも美しい容姿に高い魔力。テンプレな好条件に「僕って何かの主人公なのかな?」と困惑するレイルーク。 溺愛してくる両親や義姉に見守られ、心身ともに成長していくレイルーク。 アームストロング公爵の他に三つの公爵家があり、それぞれ才色兼備なご令嬢三人も素直で温厚篤実なレイルークに心奪われ、三人共々婚約を申し出る始末。 十五歳になり、高い魔力を持つ者のみが通える魔術学園に入学する事になったレイルーク。 しかし、その学園はかなり特殊な学園だった。 全員見た目を変えて通わなければならず、性格まで変わって入学する生徒もいるというのだ。 「みんな全然見た目が違うし、性格まで変えてるからもう誰が誰だか分からないな。……でも、学園生活にそんなの関係ないよね? せっかく転生してここまで頑張って来たんだし。正体がバレないように気をつけつつ、学園生活を思いっきり楽しむぞ!!」 果たしてレイルークは正体がバレる事なく無事卒業出来るのだろうか?  そしてレイルークは誰かと恋に落ちることが、果たしてあるのか? レイルークは誰の手(恋)をとるのか。 これはレイルークの半生を描いた成長物語。兼、恋愛物語である(多分) ⚠︎ この物語は『レティシア公爵令嬢は誰の手を取るのか』の主人公の性別を逆転した作品です。 物語進行は同じなのに、主人公が違うとどれ程内容が変わるのか? を検証したくて執筆しました。 『アラサーと高校生』の年齢差や性別による『性格のギャップ』を楽しんで頂けたらと思っております。 ただし、この作品は中高生向けに執筆しており、高学年向け児童書扱いです。なのでレティシアと違いまともな主人公です。 一部の登場人物も性別が逆転していますので、全く同じに物語が進行するか正直分かりません。 もしかしたら学園編からは全く違う内容になる……のか、ならない?(そもそも学園編まで書ける?!)のか……。 かなり見切り発車ですが、宜しくお願いします。

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

【もふもふ手芸部】あみぐるみ作ってみる、だけのはずが勇者ってなんなの!?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 網浜ナオは勉強もスポーツも中の下で無難にこなす平凡な少年だ。今年はいよいよ最高学年になったのだが過去5年間で100点を取ったことも運動会で1等を取ったこともない。もちろん習字や美術で賞をもらったこともなかった。  しかしそんなナオでも一つだけ特技を持っていた。それは編み物、それもあみぐるみを作らせたらおそらく学校で一番、もちろん家庭科の先生よりもうまく作れることだった。友達がいないわけではないが、人に合わせるのが苦手なナオにとっては一人でできる趣味としてもいい気晴らしになっていた。  そんなナオがあみぐるみのメイキング動画を動画サイトへ投稿したり動画配信を始めたりしているうちに奇妙な場所へ迷い込んだ夢を見る。それは現実とは思えないが夢と言うには不思議な感覚で、沢山のぬいぐるみが暮らす『もふもふの国』という場所だった。  そのもふもふの国で、元同級生の丸川亜矢と出会いもふもふの国が滅亡の危機にあると聞かされる。実はその国の王女だと言う亜美の願いにより、もふもふの国を救うべく、ナオは立ち上がった。

生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!

mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの? ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。 力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる! ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。 読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。 誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。 流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。 現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇 此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。

下出部町内漫遊記

月芝
児童書・童話
小学校の卒業式の前日に交通事故にあった鈴山海夕。 ケガはなかったものの、念のために検査入院をすることになるも、まさかのマシントラブルにて延長が確定してしまう。 「せめて卒業式には行かせて」と懇願するも、ダメだった。 そのせいで卒業式とお別れの会に参加できなかった。 あんなに練習したのに……。 意気消沈にて三日遅れで、学校に卒業証書を貰いに行ったら、そこでトンデモナイ事態に見舞われてしまう。 迷宮と化した校内に閉じ込められちゃった! あらわれた座敷童みたいな女の子から、いきなり勝負を挑まれ困惑する海夕。 じつは地元にある咲耶神社の神座を巡り、祭神と七葉と名乗る七体の妖たちとの争いが勃発。 それに海夕は巻き込まれてしまったのだ。 ただのとばっちりかとおもいきや、さにあらず。 ばっちり因果関係があったもので、海夕は七番勝負に臨むことになっちゃったもので、さぁたいへん! 七変化する町を駆け回っては、摩訶不思議な大冒険を繰り広げる。 奇妙奇天烈なご町内漫遊記、ここに開幕です。

処理中です...