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王家は資産はあっても自由にできる私財は思いの外少ないのである。つまり使えるのはほぼ貯蓄金だけだ。
両陛下も王子達もこれまで金の亡者でもなかったし贅沢も好んでいなかったので、私財の貯蓄より国へ還元をしてきたことがまさかの仇となった。
だが、それを愚痴るような王家ではない。ため息を吐きたくなるのは赦してやってほしい。
「さらに、奴ら三家――令息たちの家――は恐らく領地を手放すことになろう。パワーバランスを考えれば王家も購入せねばなるまい。現金で、な」
資産は増えどもそれが現金になり元に戻るのはいつになるかわからない。誰ともなく何度もため息が漏れる。
「陛下が仰る『慎ましやかな生活』が解消されるまで、陛下の引退は認めませんからね」
第一王子は全てを受け入れ国王陛下に軽口を叩いた。
「ワシに働いて返せと申すのか? 人使いの荒い息子だ」
国王陛下もやれやれとパフォーマンスをする。
「陛下は剣もお強いのです。国王を退かれて騎士団へ属されることも一興ですよ」
ニヤニヤとする第一王子に国王陛下がやれやれの手付きのまま固まり嫌そうな顔を向けたが、すぐに腕を胸の前で組み胸を張る。
「ふんっ! まだまだ国王として働けるわいっ! それも親の責任ならば取らねばならぬだろうな」
「よろしくお願いします」
「チッ!」
第一王子がニヤリと笑うと国王陛下が舌打ちした。
「後継者は妻が優秀な場合でもよいとしておりますから、彼女たち――婚約破棄になった令嬢三人――は引く手数多でしょうね」
宰相は令嬢四人を思い浮かべた。
「そうだな。ロンゼ公爵令嬢は後継者として間違いないのだから、彼女もまた釣書が殺到するであろう。
令嬢たちが不幸になることがなさそうだというのが、唯一の救いだな」
国王陛下と第一王子は「ふぅ」と息を吐き出して胸を撫で下ろした。宰相も小さく頷いて微笑した。
「父上」
「ん?」
第一王子が国王陛下を『父』と呼ぶのは数年ぶりだ。顔には出さないが国王陛下は腹の下に力を入れた。
「あれにとっては廃籍はよかったと思いますよ」
「なぜだ?」
「幼き頃よりあれはいつも眉間にシワを寄せておりました。まわりの評価が耳に入ったのでしょう。我ら兄弟がどんなに気にするなと言っても、いや、気にするなと言うほど頑なになりました」
「……そうか」
「ロンゼ公爵令嬢との婚約がなり王家から離れると決まった時はしばらくの間は穏やかであったのですが、ロンゼ公爵令嬢が大変優秀であるとの噂を耳にしていくと、再び顔を強張らせるようになっておりました」
「それは気が付かなかったな」
「ええ。メイドたちに諭され、父上母上の前では懸命に取り繕っておりましたから」
「何を諭されておったのだ?」
「父上母上は陛下であるということです」
「正論であり矛盾論であり不可避論か」
「我ら兄弟にも鍛錬場でしかそのような姿を見せませんでした。まるですべてを壊したいと望んでいるかのようでした。
あれはここ――王城や王宮――ではいつでも必死で辛かったのではないかと思います」
「だが、それを理由として赦すわけにはいかぬ」
「はい。ですから廃籍でよかったと」
国王陛下は目を伏せた。第一王子と宰相はお茶を手にして、国王陛下の一筋の涙を見なかったことにした。
両陛下も王子達もこれまで金の亡者でもなかったし贅沢も好んでいなかったので、私財の貯蓄より国へ還元をしてきたことがまさかの仇となった。
だが、それを愚痴るような王家ではない。ため息を吐きたくなるのは赦してやってほしい。
「さらに、奴ら三家――令息たちの家――は恐らく領地を手放すことになろう。パワーバランスを考えれば王家も購入せねばなるまい。現金で、な」
資産は増えどもそれが現金になり元に戻るのはいつになるかわからない。誰ともなく何度もため息が漏れる。
「陛下が仰る『慎ましやかな生活』が解消されるまで、陛下の引退は認めませんからね」
第一王子は全てを受け入れ国王陛下に軽口を叩いた。
「ワシに働いて返せと申すのか? 人使いの荒い息子だ」
国王陛下もやれやれとパフォーマンスをする。
「陛下は剣もお強いのです。国王を退かれて騎士団へ属されることも一興ですよ」
ニヤニヤとする第一王子に国王陛下がやれやれの手付きのまま固まり嫌そうな顔を向けたが、すぐに腕を胸の前で組み胸を張る。
「ふんっ! まだまだ国王として働けるわいっ! それも親の責任ならば取らねばならぬだろうな」
「よろしくお願いします」
「チッ!」
第一王子がニヤリと笑うと国王陛下が舌打ちした。
「後継者は妻が優秀な場合でもよいとしておりますから、彼女たち――婚約破棄になった令嬢三人――は引く手数多でしょうね」
宰相は令嬢四人を思い浮かべた。
「そうだな。ロンゼ公爵令嬢は後継者として間違いないのだから、彼女もまた釣書が殺到するであろう。
令嬢たちが不幸になることがなさそうだというのが、唯一の救いだな」
国王陛下と第一王子は「ふぅ」と息を吐き出して胸を撫で下ろした。宰相も小さく頷いて微笑した。
「父上」
「ん?」
第一王子が国王陛下を『父』と呼ぶのは数年ぶりだ。顔には出さないが国王陛下は腹の下に力を入れた。
「あれにとっては廃籍はよかったと思いますよ」
「なぜだ?」
「幼き頃よりあれはいつも眉間にシワを寄せておりました。まわりの評価が耳に入ったのでしょう。我ら兄弟がどんなに気にするなと言っても、いや、気にするなと言うほど頑なになりました」
「……そうか」
「ロンゼ公爵令嬢との婚約がなり王家から離れると決まった時はしばらくの間は穏やかであったのですが、ロンゼ公爵令嬢が大変優秀であるとの噂を耳にしていくと、再び顔を強張らせるようになっておりました」
「それは気が付かなかったな」
「ええ。メイドたちに諭され、父上母上の前では懸命に取り繕っておりましたから」
「何を諭されておったのだ?」
「父上母上は陛下であるということです」
「正論であり矛盾論であり不可避論か」
「我ら兄弟にも鍛錬場でしかそのような姿を見せませんでした。まるですべてを壊したいと望んでいるかのようでした。
あれはここ――王城や王宮――ではいつでも必死で辛かったのではないかと思います」
「だが、それを理由として赦すわけにはいかぬ」
「はい。ですから廃籍でよかったと」
国王陛下は目を伏せた。第一王子と宰相はお茶を手にして、国王陛下の一筋の涙を見なかったことにした。
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