売れ残りオメガの従僕なる日々

灰鷹

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王弟騎士の思い人

王弟騎士の思い人(2)

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 今日は薬草採りから戻ったあとも、午前中の仕事を免除され、辺境伯軍の皮膚病対策に専念してよいと言われていた。
 騎士団が城に来てからというもの、彼らとの待遇の差に不満を持ち、辺境伯軍の兵は元々は自分たちでやっていた洗濯をやらなくなっていた。使用人に押し付けても、手が回らなければ、辺境伯軍の洗濯は後回しにされる。結果、洗濯物が溜まっていき、洗濯せずに同じものを着続けたり、シーツなんて半年近く洗濯していないことも珍しくなかったらしい。

 兵士たちを集め、今のままでは辺境伯軍は一生、皮膚病と付き合っていかなければいけないことを、フリッツから説明してもらった。それはすなわち、一生、娼館に行けないということだ。「皮膚病うんぬん」のくだりでは平然としていた兵士たちが、娼館の話が出た途端、急に騒然とし始めた。
 衣類もシーツもこまめに洗濯して身を清潔に保つように、という指導にうんうんと頷いていたから、それなりに必要性を理解してくれたようだ。
 
 百五十人をいっぺんに治療することは難しいので、洗濯も治療も一部屋ずつ進めていくことになった。
 兵士たちが洗濯している傍らでユリウスはヨモギを煮出して煎じ、ヨモギ液を作った。それを布に含ませ、患部を洗ってもらう。痒みを我慢できない人には、ニワトコを熱湯に浸し、その液に浸した布を湿布としてあててもらうことにした。

 昼までかかって、三部屋分の兵士の治療が終わったところで、薬草が底をつきた。薬草の見分け方についてはフリッツに教えたし、やり方を知っていれば誰だってできる治療だ。皮膚炎が改善してきたら、治っている人と治っていない人で部屋分けしてもらうよう説明し、あとは自分たちで薬草を採りに行き、治療を続けてもらうことにした。
 昼食は城の庭園で食べるように言われている。兵士たちの食事の世話が終わった後、ユリウスは食堂を出て中庭へと向かった。
 その足取りは、昨日とは打って変わって重かった。

 薬草を採っているとき、フリッツに、カレンからお茶会に招かれた話をしたところ、「大丈夫か?」とひどく心配された。カレンは気まぐれで我儘な気性らしく、彼女の機嫌を損ねて城を追い出された使用人が数えきれない程いるらしい。
 既に一度やらかしていて、追い出される寸前だったことは伏せておいた。

 だが、気が重いのは、カレンの気性のせいではない。
 彼女が物腰穏やかで慈悲深い人だったとしても、同じだったと思う。
 これから会うのは、ラインハルトの妻となるかもしれない人。その事実だけが、ユリウスの足を重くしていた。
 昨日と同じように城の奥へと進み、建物の角を曲がり、中庭へと足を踏み入れる。
 今日は花壇には足を向けずに死角になっている東屋ガゼボのほうへ、すぐに進路を変えたが、それ以上、一歩も足を踏み出せなくなった。

 テーブルを囲むように置かれた椅子に座っていたのは、三人だった。
 ウェルナー辺境伯夫人と娘のカレン。それに、昨日はいなかった騎士団副団長の姿が、そこにあった。

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