わたしがお屋敷を去った結果

柚木ゆず

文字の大きさ
29 / 31

番外編その2エメリック&エリサ編 転機 俯瞰視点(5)

しおりを挟む
「「……………………。は?」」

 瞬く間に表情が一変。喜色満面の笑みが浮かんでいた顔は、一瞬にして引きつりました。

「じゆうに、なれない……? どういう……」
「言葉のままですよ。……エメリックさん、エリサさん、申し訳ございません。僕は貴方がたに嘘を吐いていました」
「う、うそ……? うそって、なにがうそなんですの……!?」
「お願いを聞いてくださったら解放する。それが、該当する部分ですよ」

 あの日の約束は、真っ赤な嘘。ザルスには最初から、2人を解放するつもりは微塵もありませんでした。

「僕はね、兄以上に貴族が大嫌いなんですよ。生まれた時点で薔薇色の人生が約束されている、そんなふざけた人間が」
「「………………」」
「なのでね、お前達に対しては裏切り行為はなんとも思わない。利用するだけしてやろう、って思っていたんですよ」

 ぱちん。そう告げたザルスが指を鳴らすと、新たに男性2人が現れエメリックとエリサを拘束しました。

「お前達の向かう先は、外ではなく檻だ。兄がいなくっても飼育は続くのさ」
「ふざけるな!! 離せ!! はなせぇええええええ!!」
「離しなさいよ!! この卑怯者!!」
「ははは、良い音良い光景だ。極上のクラシックやミュージカルにも勝る」

 ザルスは怒り悔しがる様をたっぷりと楽しみ、充分に満喫すると、指示を出して2人を檻の中に入れました。

「エメリック、エリサ、今日からは僕が新たな飼い主だ。……たっぷり可愛がってやるから、覚悟しておけよ?」
「く、くそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「ぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 そうして2人は、瞬く間に天国から地獄へと再び落ちてしまい――

「いやだぁああああああああああああああ!! もういやだぁああああああああああああああああああ!!」
「出られるとおもったのにぃいい!! あんな毎日はいやぁあああああああああああああああああああ!!」

 ――檻の中で泣き叫びますが、そんな彼らはまだ知りません。
 あんな毎日、には戻らない――戻れない、ことを。

『僕はね、兄以上に貴族が大嫌いなんですよ。生まれた時点で薔薇色の人生が約束されている、そんなふざけた人間が』

 ザルスは幼い頃からルーヴァン以上に嫉妬心を抱いており、自分でそう言っていたように兄以上に憎んでいました。ですので2人の扱いは、以前よりも悪くなってしまうのです。

「いいな? 今日から60点以上の芸をしないと、食事抜きだ」

「今日は合格にしてやろう。ほら、食事だ」
「「これが食事!? た、足りません……!!」」

「新しい服だ。これに着替えろ」
「こ、これ!?」
「ぼろ布じゃないのよ!?」

 厳しい条件がついたり、食事がひもじくなったり、服がボロくなったり。
 エメリックとエリサは更に酷い環境の中で、生きていかないといけなくなってしまったのでした――。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冷徹公爵の誤解された花嫁

柴田はつみ
恋愛
片思いしていた冷徹公爵から求婚された令嬢。幸せの絶頂にあった彼女を打ち砕いたのは、舞踏会で耳にした「地味女…」という言葉だった。望まれぬ花嫁としての結婚に、彼女は一年だけ妻を務めた後、離縁する決意を固める。 冷たくも美しい公爵。誤解とすれ違いを繰り返す日々の中、令嬢は揺れる心を抑え込もうとするが――。 一年後、彼女が選ぶのは別れか、それとも永遠の契約か。

『紅茶の香りが消えた午後に』

柴田はつみ
恋愛
穏やかで控えめな公爵令嬢リディアの唯一の楽しみは、幼なじみの公爵アーヴィンと過ごす午後の茶会だった。 けれど、近隣に越してきた伯爵令嬢ミレーユが明るく距離を詰めてくるたび、二人の時間は少しずつ失われていく。 誤解と沈黙、そして抑えた想いの裏で、すれ違う恋の行方は——。

婚約者に突き飛ばされて前世を思い出しました

天宮有
恋愛
伯爵令嬢のミレナは、双子の妹キサラより劣っていると思われていた。 婚約者のルドノスも同じ考えのようで、ミレナよりキサラと婚約したくなったらしい。 排除しようとルドノスが突き飛ばした時に、ミレナは前世の記憶を思い出し危機を回避した。 今までミレナが支えていたから、妹の方が優秀と思われている。 前世の記憶を思い出したミレナは、キサラのために何かすることはなかった。

嫌いなところが多すぎるなら婚約を破棄しましょう

天宮有
恋愛
伯爵令嬢の私ミリスは、婚約者ジノザに蔑まれていた。 侯爵令息のジノザは学園で「嫌いなところが多すぎる」と私を見下してくる。 そして「婚約を破棄したい」と言ったから、私は賛同することにした。 どうやらジノザは公爵令嬢と婚約して、貶めた私を愛人にするつもりでいたらしい。 そのために学園での評判を下げてきたようだけど、私はマルク王子と婚約が決まる。 楽しい日々を過ごしていると、ジノザは「婚約破棄を後悔している」と言い出した。

《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。

ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」 その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。

私のことは愛さなくても結構です

毛蟹
恋愛
サブリナは、聖騎士ジークムントからの婚約の打診の手紙をもらって有頂天になった。 一緒になって喜ぶ父親の姿を見た瞬間に前世の記憶が蘇った。 彼女は、自分が本の世界の中に生まれ変わったことに気がついた。 サブリナは、ジークムントと愛のない結婚をした後に、彼の愛する聖女アルネを嫉妬心の末に殺害しようとする。 いわゆる悪女だった。 サブリナは、ジークムントに首を切り落とされて、彼女の家族は全員死刑となった。 全ての記憶を思い出した後、サブリナは熱を出して寝込んでしまった。 そして、サブリナの妹クラリスが代打としてジークムントの婚約者になってしまう。 主役は、いわゆる悪役の妹です

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

私を追い出した結果、飼っていた聖獣は誰にも懐かないようです

天宮有
恋愛
 子供の頃、男爵令嬢の私アミリア・ファグトは助けた小犬が聖獣と判明して、飼うことが決まる。  数年後――成長した聖獣は家を守ってくれて、私に一番懐いていた。  そんな私を妬んだ姉ラミダは「聖獣は私が拾って一番懐いている」と吹聴していたようで、姉は侯爵令息ケドスの婚約者になる。  どうやらラミダは聖獣が一番懐いていた私が邪魔なようで、追い出そうと目論んでいたようだ。  家族とゲドスはラミダの嘘を信じて、私を蔑み追い出そうとしていた。

処理中です...